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裏切り者との遠征

進学してから二週間が経った。最初は懐かしさや新鮮さがあったけど、だんだんと日常が戻ってきた。


大概のことは自動的に通常運転になっている。ただ、放課後にさっさと逃げられなくなったのは痛い。ガキどもの面倒を見るのは、結構大変なんだよね。


でも、職権を利用して自分を掃除当番表から外して、仕事を減らすことくらいはできる。最終的にチェックするのは俺だけど。それに毎日、ガキどものよくわからない無意味な質問に答えなきゃいけないし…


まあ、認めるよ、めっちゃウザい。それに今はまだ、優一って奴の仕込み段階で、成果も俺がやれることも特になくて、毎日放課後はこのガキどもの相手で、ちっちゃい子たちを抱きしめる時間すらなくなってる。だから、幼馴染の観察サンプルには、ちょっと来るのを控えてもらわないと。


「お兄ちゃん、忙しそうだね。」


隣で、最後のガキを相手し終えた優一が、けろっとした顔で言ってきた。


「誰のせいだと思ってんだよ。俺を冷やかすくらいなら、手伝えよ。」


俺はクラス日誌を開きながら答えた。


「でも、何をしたらいいかわかんないし〜。」


彼女は手をひらひらさせて、相変わらず適当な言い訳をする。


「大人みたいに処理しろよ。」


日誌を書きながら俺は言う。


「今は字も書けないし、まだ大人でもないし、しょうがないでしょ。」


彼女は椅子に寄りかかって、軽い調子で屁理屈を並べたてる。


こいつ、前からこんな感じの、手のつけられない性格だったっけ? そう考えると、あのこいつを撃った奴には感謝すべきなのか? 俺にはできないことだしな。でも、こんな代物を送り込んできたあの家族、銃を撃った奴も呪ってやる。


「さも俺だけが大人みたいに言うなよ… クラス運営を俺ひとりで支えてるわけじゃないんだから。次の授業後は、お前がガキどもの雑用を処理しろよ。」


俺は遠慮なく言った。


「お兄ちゃん、そんな酷いこと言うの? 私にそんなの無理だよ。」


彼女はまた机に突っ伏して、拗ね始めた。


「じゃあ、書類仕事やる?」


俺はペンを置いて、片手を頬に当てて彼女を見た。


「嫌だ、字を読むのだってやっとだし。」


彼に顔を両手に埋めて、会話から逃げようとする。


でも、俺だって実は似たようなもんだ。口語はまだマシだけど、書くのは本当に苦手で、よく漢字を簡体字で書いちゃうしな… 正直、こんな書類仕事は書きだけど、字の練習にはなる。


「じゃあ、授業中は寝てるのを何とかしろよ! ちゃんと勉強しろよな、授業始まったら即寝だぞ!」


俺は愚痴った。こいつ、学校が始まってたった二週間で、ほぼ毎日、罰として教室の外に立たされてる。


「だってしょうがないじゃん、退屈すぎるんだもん。」


彼女は顔すら上げようとしない。


「お前、どうやって大学受かったんだよ。」


俺は日誌を書き続けながら言った。


「そんなの簡単だよ。ちょっと臨時で覚えるだけで十分。」


彼女は背筋を伸ばして、得意げに言った。


俺は疑いの目を向けた。こいつの言うこと、半分は冗談っぽいんだよな。


「先に言っておくけど、ここじゃ字の読めない文盲が簡単に仕事を見つけられるわけじゃないんだぞ。」


俺は仕方なく言った。


「へーへーへー、誰を見くびってるの、お兄ちゃん? 私は一応、自力でトップ20の大学に合格したんだからね。」


彼女はすごく誇らしげな様子で言った。


「まさか、お前の家が学校に校舎一棟寄付したとか?」


俺は冷やかした。こいつに関しては、大学に行ける方法としてそれくらいしか思いつかない。


まさか、女子ラグビーってわけでもないし…


「それ、どういう意味? ここではそんな風に大学の学位が取れるの?」


彼女は困惑して尋ねた。


「いや、冗談だよ。」


俺は半分書いたクラス日誌を閉じた。


「お兄ちゃんの偏見、相当ひどいね。」


彼女は呆れた顔で俺を見た。


「お前ほどじゃない。」


俺も椅子にもたれかかった。


「そっちこそ。」


彼女が言い返す。


「知らね、お前の方だ。」


考えるのが面倒で、そのままガキの口喧嘩モード突入。


でも、言っても無駄だった。授業が始まってすぐ、彼女はウトウトし始めて首を縦に振り、15分も経たないうちに頭が机に落ちていた。


寝つきも寝心地も良さそうで、そしたら夜中に寝ないんだよな…


すぐに数学の先生にバレたけど、先生ももう慣れたもので、仕方なく彼女に立つように言っただけだった。


なのに、立ったままでも寝るんだよな…


もう本当に手に負えないと思って、先生も諦めて構わないことにしたらしい。


でも、昼飯の時はすごく積極的で、いつも俺にこの仕事を多めに割り当てろって言うんだ。でも、考えてみれば、こいつがそんなに良い奴なわけがない。


案の定、配膳の時、こいつはわざわざ肉だけを選んで俺の皿に入れる。俺にくれるのか? そんなわけない、後でまた取りに来るんだ。


彼女が自分の分の給食を持って戻ってきて、俺の机に置くと、手を伸ばして俺の皿を奪い取った。そして、いらない牛乳だけを置いていった。


もう、演技するのも面倒になったのか?


「この野郎。」


牛乳パックにストローを刺して、小声で言った。


「今、耳はいいんだよ、お兄ちゃん。」


彼女は自分の席に座ったまま、こっちを全然見ない。


「馬鹿野郎。」


わざと彼女が絶対にわからない言語で罵り返した。


「お兄ちゃん、言葉はわかんないけど、感じるからね。」


自分の飯を食べながら、相変わらず俺を見ようともしない。


まあ、もう慣れた。でも、放課後に一番の幼馴染観察サンプル1号が、昼飯の牛乳を持ってきてくれたのは驚いた。二人とも俺にって残しておいてくれたのはすごく感謝してるけど、もう飲めないよ! それでも断りきれなくて…


結局、全部飲み干してしまった。教室で死にそうになりながら、しばらく休んでやっと生き返った。でも、次の授業は進学して初めての外での授業。ついに体操服に着替える時が来た!


着替え終わるまで頑張って、それから保健室に避難しよう。


でも、先に着替え始めたのは男子だった。まあ、いいけど。どの動物の柄がプリントされてるか見るのには支障ないしな。ちょっと不道徳かもしれないけど、今はそんなの関係ない、だろ?


「お兄ちゃん、何考えてるかわかってるよ。着替え、出しておいたから。」


不埒な妄想をしていると、突然優一が隣に来た。


「あ? お前は着替えに行かなくていいのか?」


妄想から現実に戻り、彼女を見た。


「死ねよ、変態!」


そう言って、体操服を俺の顔に叩きつけた。


あれ? なんで俺の体操服が彼女の手に?


「自分が見たくないからって、他人の邪魔すんなよ!」


俺は仕方なく言った。


「そんな無駄なこと言うな! トイレに行って着替えろ、ロリコンのクソ変態!」


彼女は俺の襟首を掴んで、トイレの方へ引きずっていった。


「裏切り者! ちょっと見たって良くないか!」


嫌々ながら、彼女に引っ張られていく。


道徳心と仮想の下院がしばらく戦った結果、外部からの力で阻止されてしまった。良く考えれば、少なくとも彼女の言うロリコンにはならずに済んだ。


「遅いよ。」


外で待っていた彼女が言った。


「もう行かない。お前だけで行け。俺は保健室にいる…」


失望して壁にもたれかかって言った。


「何考えてるの? 休むにしても、まずは行ってから休むものだよ。」


彼女に指摘された。


「じゃあ、お前が休むって言ってきてくれよ!」


俺は呆れて言った。


「嫌〜…」


他人事のように言うと、彼女はさっさと向きを変えて歩き出した。


結局、俺も一緒に体育館まで行かなきゃならなくなった。


昔いたところでは、体が大きくて病気しない体育の先生は、めったに見かけないレアな生物だった。でも、ここでは平日の朝と午後に、入り口で見かける固定のNPCだ。


朝寝坊すると、職員室に連れて行かれて、怖く説教される。


でも、俺たちはどんな奴か? 小さい頃からそんな風に怖がらせられて育ったんだ。そんな取るに足らないことや注意なんて、もう免疫がある。中には家で寝るより授業中に寝る方が快適って奴までいる。どう注意しても痛くも痒くもない。


どうしようもないし、退学させるわけにもいかないし、もう完全に放置状態だ。


遠くからでも、体育館に着く前に、先生のさわやかな笑い声が聞こえてきた。


「先生、調子が悪いので保健室に行ってもいいですか?」


明らかに他の人より肌の色が濃い体育の先生のところへ行き、わざと苦しそうに言った。


「どこが悪いんだ?」


彼はしゃがんで尋ねた。


「昼食を食べ過ぎて、ちょっとお腹が痛いです。」


正直に言った。


「先生、君が学級委員長だって覚えてるよ? こんなことでサボっちゃだめだぞ! 皆のお手本にならないと。食べ過ぎたなら、ちょっと運動したらどうだ! どうしても無理なら、そこで休んでてもいいぞ。」


彼は俺の肩に手を置いて、励ますように言った。


「もう無理です、ちょっとあちらで休ませてください。」


さらに苦しそうに装って言った。


「うーん… じゃあ、無理強いはしない。でも、少し良くなったら、また授業に出てもいいんだよ。」


彼は立ち上がって言った。


「はい!」


口では答えながら、隅っこの壁際に走っていき、服の下から準備してあったライトノベルを取り出した。


久しぶりの休息時間を存分に楽しもう。


ちょうど読みふけっていると、バレーボールが一つ、足元に転がってきた。手を伸ばしてボールを押し返した。


すると、すぐにまたボールが転がってきた。


嫌々ながら顔を上げると、やはり優一の奴が、子分たちを連れて、ボス戦を始めるのを待っている。


ライトノベルに栞を挟んで脇に置き、足元のバレーボールを手に取って前に進んだ。いいだろう、俺の妹よ、お前に満点シュートってやつを見せてやる。


ボールの重さを確かめる。問題なさそうだ。


目標をロック、軌道計算完了、コア出力調整110%、発射!


思い切り蹴り込んだ…


シュッ! と空振り… 相対位置の差を入れ忘れた。自動平衡もオフにしてた。それに、ガキの体は推力重量比が高すぎて、踏ん張りすぎた。次の瞬間には天井が見えていた。


背中が痛い! こんな風に転んだら結構致命傷だ!


「また何バカなことやってんの?」


俺の良き妹は、俺が転んだのを見て、真っ先に走ってきて冷やかした。


「ほっといてくれ!」


地面に倒れて痙攣しながら答えた。


これで、さっきまでちょっと楽になってた胃が、また吐き気を催してきた。格好つけるんじゃなかった。


「早く起こせよ!」


手を差し出して続ける。


「お兄ちゃん、結構不器用だね。」


彼女は俺を引っ張りながら言った。


「ちょっとした問題だ。調子が悪かっただけだ。」


まだ強がる。


「じゃあ、もう一回やってみる?」


彼女はまた笑いものにしようと待ち構えている。


「嫌だ、調子が悪いって言ってるだろ。それに、もう吐き気がするし。」


背中を軽く叩きながら隅っこに戻った。


もうちょっとライトノベルを読もうと思ったけど、いつの間にか眠ってしまっていた。体育の先生に起こされなければ、高学年が次の授業に来るまで寝ていたかもしれない。


まったく、俺のクソ妹は本当に大した奴だ。俺を置いて自分だけさっさと行きやがった!


案の定、教室に戻ると、こいつはもう着替えを済ませて、帰る準備をしていた。


なんで低学年は少し早く下校できるんだろう。


「この野郎! 一声かけるくらいできたんじゃないのか?」


怒って、机の上にライトノベルを叩きつけて問い詰めた。


「あっ! うっかり忘れてた。」


彼女は驚いた様子で答えた。どうやら本当に忘れていたらしい。


「これから何かあった時も、俺のこと思い出さない方がいいぞ!」


ランドセルから、着替えの体操服と普段着を取り出しながら言った。


「お兄ちゃん、本当にケチだな。起こすの忘れたくらいでさ。」


彼女は呆れたように言った。


「つまり、お前は全然気にしてなかったってことだ。」


体操服の上着を脱ぎながら言う。トイレまで行って着替えるのが面倒になった。


「羞恥心ってものはないの!」


それを見た彼女は呆れて言った。


「何が怖いんだ? 見せるようなものなんて何もないし。」


俺は全く気にせずに言った。


でも、他のガキどもが妙な声を上げていた。


「何見てんだ! 片付けて帰る準備しろよ!」


普段着に着替えながら、学級委員長の権限で命令した。


だいたい片付いた頃、俺の小さな可愛い子二人組が時間通りに現れた。


この数日忙しくて、ちっちゃい可愛い子1号をちゃんと抱きしめてやれなかった。明日は週末だし、こんなつまらない仕事で距離ができちゃいけない。


由香里は俺が気づく前に飛びついてきて、抱きついてきた。


「よしよし、片付け終わったら一緒に帰ろう。」


頭を撫でながら言った。


優一の奴がどうやってやったのかは知らないけど、今は放課後になると、不運なちっちゃい可愛い子2号が彼女のランドセルを背負っている… 観察サンプルに影響が出なければいいけど。


片付けを終えてランドセルを背負い、クラス日誌を持って奈々子に返しに行ったら終わりだ。


それから、後ろの三人の足手まといを連れて職員室へ向かった。


クラス日誌を受け取った奈々子は、一人一つずつフルーツキャンディをくれて、帰り道気をつけてねと念押しして送り出してくれた。


他のガキどもは大概、集団登校で帰らなきゃいけないけど、俺たちは先に出てもいいことになっている。門のところで体育の先生に一言声をかければそれでいい。それから反対側の駄菓子屋に行ってお菓子を買って、戻ってきたらまた先生に声をかける。


最初は先生もそれっぽく怖い顔して脅かしてきたけど、慣れてくると、俺たちが駄菓子屋に行かないと逆に「今日は行かないのか?」って聞いてくるくらいだ。


公園で少し休んで本を読んでいたら、空模様が怪しくなってきた。仕方なく、先にちっちゃい可愛い子たちを送って帰り、それから俺たちも急いで家に帰った。


でも、急いで家に着いた頃には、また天気が少し良くなっていた…


リビングのソファのそばに行き、ランドセルを脱いでその辺に放り投げ、ソファにうつ伏せになると、すごく気持ちよかった。


伊咲の奴は毎日暇ってわけじゃない。自分の連載の仕事もあるし。美穂と京介は9時まではまず帰れない。帰れても公共交通機関を乗り間違えるし、10時前に帰ってこられればいい方だ。


伊咲がいれば、外食か出前だ。たまにちっちゃい可愛い子たちの家で食べることもある。そうじゃなきゃ、親が弁当を持ち帰るまで待つしかない。家には少なくともお菓子はたくさんあるからいいけど。


でも、これじゃいつまでも解決策にならない。俺が今できるのは、湯を沸かしてカップ麺を作るくらいだし。毎日カップ麺ってわけにもいかないし…


ソファにうつ伏せになってため息をつき、今夜はどうしようかと考えていると、優一が何かに気づいたらしい。


「お兄ちゃん、この固定電話、こんな状態で普通なの?」


彼女は怪訝そうに尋ねた。


その時、ようやく家の電話のランプが点滅しているのに気づいた。留守番電話じゃないか…


それしか思い浮かばない。


食卓の横の椅子を引きずってきて、電話が置いてある台の上に登った。留守番メッセージを再生しようとした時、まず電話の横に置かれた二枚のSuicaと鍵が目に入った。メッセージを聞かなくても、どうすればいいかわかったような気がした。


でも、念のため聞いてみよう。


再生ボタンを押した。


「折り返し電話してね!」


美穂の短い一言が流れた…


その後、すぐにその番号に電話をかけ直し、スピーカーにした。


「瑠依?」


しばらくして、電話が繋がり、美穂の声が聞こえた。


「今夜は帰らないの?」


単刀直入に尋ねた。


「えっと… 瑠依、わかっちゃったのね。」


彼女は気まずそうに答えた。


「お父さんは?」


続けて尋ねた。


「お父さんも残業なの。電話の横にICカードを二枚置いてあるから、瑠依は弟を連れて伊咲おばさんのところに行ってね。鍵もあるから、もし彼女がまだ起きてなかったり、入れなかったりしたら、そのまま開けていいから。」


美穂は手早く簡単に状況を説明した。向こうも結構忙しそうだ。


「わかった。」


俺は答えた。


「あ、それと着替えも持って行ってね。ママは明日の夜、仕事が終わったら直接迎えに行くから。」


彼女は付け加えた。


「うん。」


短く答えた。


「じゃあ、そういうことで。ママ、まだ仕事があるから。」


向こうの美穂が急ぎ足で言った。


「バイバイ!」


先に別れの言葉を言った。


「気をつけて行くのよ。知らない人について行っちゃだめよ! それと、傘忘れずにね。外、雨が降りそうだから。じゃあ、バイバイ。」


彼女は念を押した。


それから電話を切った。


でも、正直言って、こんな歳の子供に公共交通機関で一人で移動させるのは、どうなんだろう…


「片付け、片付け!」


Suicaと鍵を手に取り、椅子から降りた。優一はもうランドセルの中身を空にしている。


行動が速い。


「急ぐことないだろ。もう少し寝かせて。」


物をソファ前のテーブルに置き、またうつ伏せになった。


「早く出れば、駅の辺りでぶらつけるしね!」


彼女は期待に満ちて言った。


「何考えてんだ。美穂の言ったこと聞こえなかったのか? それに俺たちがこんな容姿で街をウロウロしてたら、巡回警官に見つかって、確実に補導され、保護者にお迎えが来るぞ。」


ゆっくりと話した。


「捕まらなければいいんでしょ。巡回の目をくらますのは得意なんだから!」


彼女はどこから来たのか自信満々だ。


「お前、いったい前は何やってたんだ…」


しばらくして、ようやく我に返り、顔を上げて問い詰めた。


「校警の目の前でタバコ売ったり! たまにはね〜」


彼女は軽い口調で言う。


「もういい、お前の話はもう聞きたくない! とにかく、俺は少し寝たい。遅くに行く。」


慌てて彼女の話を遮り、またうつ伏せになって、もう少し眠ろうとした。


「嫌だよ! 外で遊びに行こうよ! 意地悪お兄ちゃん!」


駄々をこねながら、俺の服を掴んでソファから引きずり下ろそうとする。


そんな頼み方があるか!


「うるさいな、少し寝かせてくれないか!」


文句を言った。


「今出かけないと、ずっと煩くするからね。そうしたらお互い嫌な思いするよ!」


彼女は急に真面目な顔で屁理屈を言い始めた。


「お前、本当にうるさいんだよ、わかってるか。」


呆れて返した。


「わかってるよ。それがお兄ちゃんにすごく効くってことも知ってるしね。」


彼女はそう言って、ソファに這い上がってきた。


「何する気だ?」


怪訝に尋ねた。


「遊びに行こうよ!」


そう言うと、いきなり俺に飛びついて、ぎゅっと抱きつき、ずっと「遊び行こう〜」と叫び続けた。


「行く! 行けばいいんだろ!」


もう頭が痛くなって、渋々承諾した。


結局、着替えを用意するのは俺の役目。やっと荷物をまとめ、忘れ物がないか確認し、靴を履いた。


そして、ドアを開けると、外はもう雨が降っていた。


「お兄ちゃんがグズグズしてるからだよ。ほら、雨が降ってきた。」


準備中、少しも手伝わなかった奴が、逆に隣で文句を言っている。


「俺のせいにするなよ。むしろ、グズグズしてて良かったじゃないか。そうじゃなきゃ傘なんて持ってくる気なかったぞ。まったく、あいつに直接迎えに来てもらえば良かったのに。」


俺も文句を言いながら、まずは傘を探さなければ。


確か美穂が前に子供用の傘を二本買っていたはず。靴を脱いで二階の物置小屋まで探しに行った。幸い、他の物に埋もれてはいなかった。


オレンジ色と青色の傘。美穂は当時、私がピンクのキティちゃんを選ぶのを期待していた… でも、欲しがっていたのは彼女の方だと思う。その後、優一も欲しがったけど、最終的にそれは買わないで折り合いをつけた。彼女も、このまま息子を第二の娘に育てるのはマズいと気づいたのかもしれない。


「はいよ。」


オレンジの傘を彼女に放った。


もう一度靴を履き、再び遥かなる旅路へ! もちろん、鍵をかけるのも忘れずに。


伊咲の家への道は、もうすっかり覚えている。ただ、最寄り駅まで行くのに約10分かかる。雨の日は足が遅くなるし、靴が濡れてしまう。


不思議なことに、当時買ったのがレインコートと長靴じゃなくて良かった。そうじゃなきゃ、優一の奴は絶対に水たまりを見つけては飛び込むだろう。でも、うちの状況じゃ、雨の日に外に出ることなんてまずない。傘も夏にちょっと使うくらいだ。


「ゆっくり歩け!」


先に走って行った優一に叫んだ。


「お兄ちゃんが遅いんだよ!」


彼女は振り返って言った。


「靴濡らすなよ。風邪ひいても着替えがないぞ。」


早足で追いつく。


「お兄ちゃん、なんでお母さんみたいなの? 若いくせに、おばあちゃんみたいに口うるさいね。」


彼女は冷やかした。


「そしたら、お前が塹壕足になっても俺の知ったこっちゃないからな。」


彼女の隣まで来て、わざと無表情で言った。


「それ、何?」


歩く速度を緩めて尋ねた。


「まあ… 要するに切断することになるってことだ。」


面倒なので専門用語の説明は省き、わざと大げさに言った。本当か嘘か、彼女にはわからないだろうし。


「ちょっと雨に濡れたくらいで、そんな大げさな。」


彼女は疑いの目で言った。


でも、信じようが信じまいが、俺の知ったことじゃない。お前が騒いでも、俺は無視してやる。


しばらくすると、彼女も飽きてようやく静かになった。


実は、雨の日が完全に嫌いなわけじゃない。傘に落ちる水滴はリズムのない音を奏で、空気はいつもよりしっとりとして清々しい。それに、もしスーパー台風が来たら、それはまるで自然からの贈り物。何の負い目もなく家でゴロゴロできる。


外が嵐で荒れ狂おうと、テーブルに肘をついてホットココアを飲んでいる俺には、まるで関係ないことだ。でも、嵐の中を出勤や通学しなきゃいけないなら、自然に挨拶になんか行かないよ。だって、大気圏内の気象現象は無辜なんだから。


いつもよりはかなり時間がかかったけど、ともかく遠征の第一段階目標は無事達成した。


この時間はまだ夕方のラッシュアワー前で、乗客はごく僅かだ。駅員は、改札機より背の低い小学生二人組を不思議そうに見ていた。最初は手助けが必要か尋ねようとしたらしいが、二人がジャンプしてカードをタッチしたのを見て、驚いた表情を浮かべるだけだった。


ホームに降りると、やはり人はまばらだった。俺たちは適当に近くの椅子に座って電車を待つことにした。着いた直後に一本出て行ったところで、時刻表を見ると次は最低でも15分後だった。


ランドセルからライトノベルを取り出して暇つぶしをする。優一は退屈で仕方ないらしく、俺は彼女の相手をするのが面倒で、結局こいつはランドセルを抱えたまま、そのまま寝てしまった。


最初から家で寝てれば良かったのに…


電車が来る前に彼女を起こしたが、乗ってからも駅に着くまで20分以上かかるので、優一はまた寝てしまい、俺は雨雲に覆われた街をただ眺めてぼんやりしていた。


本に夢中になって乗り過ごさないように。


窓ガラスに落ちた雨粒は、風に押されて逆方向に滑り落ちていく。車内にはアナウンスと線路の振動音だけが響き、単調で退屈だ。


でも、窓の外に巨大トカゲや超巨大ロボットがいるよりはマシか。それはちょっと怖すぎる。


運搬機が降車ポイントに入る前に彼女を起こし、装備を背負って、半分寝ぼけている彼女の手を引いてドアの前で待った。


でも、駅を出る頃には雨は止んでいた。帰りにまた降り出しませんように…


「まだどこか行くの?」


彼女に尋ねた。


「後でいい。もう少し寝たい。」


あくびをしながら言う。


早く出たいって言ったのもお前だし、寝たいって言うのもお前だし…


駅から伊咲の家まではたった5分の距離だ。でも、人通りの多い通りで、雨上がりのせいか、人はいつもより少なかった。


アパートの下のコンビニで少しお菓子と飲み物を買った。よく買い物に来るから店員とも顔なじみで、届かないものがあればちょっとジャンプすれば、店員が喜んで手伝ってくれる。


これがイケメンの特権か! 憎たらしいリア充、便利すぎる!


出てからエレベーターに乗り、伊咲の家のフロアへ。インターホンを鳴らすつもりはなく、ランドセルから美穂が用意してくれた鍵を取り出した。予想通り、あっさり開いた。鍵すらかかっていなかった…


靴を脱いでリビングへ向かうと、誰もいない。じゃあ、寝室で寝てるな。


ランドセルをソファに放り投げると、優一の奴はランドセルを背負ったまま、ソファにうつ伏せになった。


寝室へ回ると、ベッドの主はまだぐっすり眠っている。この様子だと、起こしても無駄そうだ。わざわざ起こす必要もない。リビングに戻ると、優一はランドセルをソファの下に置き、クッションを抱えてまた昼寝を始めていた。でも、今度は俺が眠れなくなった!


まだ4時にもなってない。ゲーム機を起動してゲームでもするか。


何をしようかしばらく探したけど、大型オープンワールド3Aマルチプレイ二次元ゲーム『夙愿』はプラットフォームごとにデータが共有されていないし、これは国際サーバーだ。まあいいか、新しくアカウントを作り直すか。


タウォタン大陸よ、お前たちの親父が帰ってきたぞ。何がアップデートされたか見てみよう。


やっとの思いで大地図をアンロックし、さあ探索を始めようとしたその時、隣から人影がひょっこりと現れ、キッチンへとふらふら歩いていった。


危うく飛び上がりそうになった。ちゃんと音量はオフにしていたのに。伊咲の奴、どうやってこっそり近づいたんだ? でも、まだ完全に目覚めていないようだ。


彼女がコップ一杯の水を一気に飲むのを眺めていた。それからこちらを見て、目が合った。そして、しばらくの沈黙。多分、起動中なんだろう。


「どうやって入ったの?」


冷静に尋ねた。


「鍵で。」


冷静に答えた。


「あのバカ… だから何度も電話してきたのか。続けてていいよ。寝るから。後で、ご飯連れて行くから。違う、今日まだ何も食べてないや。まあいいか。」


あくびをしながら注意事項を言い、独り言をつぶやくと、また寝室へ戻って寝てしまった。


意外にも怒らなかった。


彼女がリビングを去るのを見て、やっと安心した。テレビ画面を見られなくて良かった。簡体字を表示していたんだ。もし見られたら説明が面倒だ。気をつけて、元に戻しておこう。

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