闇の中の声
めちゃ短いです。
呼ばれた気がして、倖は目を覚ました。
しかし、視界には何もは映らない。
真っ暗だ。
いつの間にか、月明かりの無い夜になってしまったかのような暗さだ。
――…………だ
どこからか声がする。
周囲を見回すが、暗すぎて声の主がどこに居るか分からない。
声はどんどん近づき、どんどん数を増した。
何を言っているのだろうと、無意識に耳を澄ます。
――いやだ……いやだ……
――……もう、楽に……
――苦しいよぉ……
――苦しい……なんでわしらが……
――許して……
――いてぇ……くそぉ……
――とうちゃ……なして……
――いやじゃいやじゃ……許してくんろ……
――ひもじぃ……
――助けて……誰か……
――許……さねぇ……
――かあちゃん……かあちゃん……
耳を塞ぐ。
だが、声は、直接頭に語りかけられているように響いてくる。
悲しみ、憎しみ、苦しみ、怨嗟。
絶望と化した声は男、女、子供といった老若男女関係ない。
胸が押し潰されそうな苦しさを感じ、少しでも声から逃れんと目を固く閉じ、耳を塞ぎながら身体を縮める。
だがそれは無意味でしかなく、絶望の声は倖を囲み、徐々に狭まってきていた。
――いてぇ……頼む……楽に……
――なして
――ひもじぃよぉ……
――なして
――……憎……い……
――なして
――ゆるして……たすけて……
――なして
顔に、まるで息を吹き掛けられたかのような生暖かい風。
その生暖かさと、えもいわれぬ生臭さに耐え切れず目を開けた。鼻と鼻がくっ付きそうな距離に、それはあった。
見えたのは、どろどろに腐った人の顔。
腐った唇が動き、ぼろぼろに壊れた歯の隙間から腐った肉の匂いとごぼごぼと水が混ざったような音。
それは声とは言いがたいものであったが、それが何と言っているのか、はっきり理解できた。
――なしてわしらを静かに眠らせてくれなんだ?
お読みいただき、ありがとうございました(*^^*)




