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ひょっとすると俺って特別

結論から言おう。魔法科高専の学生寮は、最高だった。

ナタリに連れられて入った部屋は、前世のビジネスホテルを少し広くしたような快適さだった。

トイレ、ベッド、キッチンにクローゼットまで。

お風呂は無かったが少し歩くと温泉がある。

まだ行ってないので後で行くことにする。

さらに、水道も通っていた。電気はさすがに無かったがランタンがあった。

一応1年寮らしい。

周りの部屋にも学生が普通にいるが、時間帯が合わないおかげでまだ会っていない。


それからその日はヴァルダーさんの言いつけ通りに夜は泥のように眠りこけた。

そして、翌朝。


「起きろアル! 特訓の時間だぞ!」


朝の六時。容赦なく部屋の扉を蹴り開けて入ってきたのは、昨日までのげっそり顔から微妙に復活したナタリさんだった。手には、あの重たいリュックがしっかりと握られている。

「……うっす。おはようございます、師匠」

(クソ、めっちゃ眠たい)


「おう、元気があってよろしい。今日はお前のなまった身体を叩き起こしつつ、このリュックに入った『属性測るマン』……じゃなくて、フィリアさんが言ってた『オルブ・ティア』を使ってお前のポテンシャルを測る」


そう言い窓を開け「ついて来い」と言って出て行った。

まったく、

(この人の出口は窓しかないのか。)


そして高専の裏手にある、だだっ広い演習場へと連れ出された俺は、さっそく地面にリュックを下ろした。

朝の引き締まった空気の中、ナタリはリュックから拳大の不思議な石を一つ取り出し、俺の目の前に差し出す。

「よし、アル。魔法使いにはそれぞれ得意な『属性』ってやつがある。この石に魔力を込めてみて、何色に光るかで、お前が何の魔法に向いてるかが一発で分かる仕組みだ。……ま、普通はうっすら光る程度なんだけどな」

昨日のヴァルダーさんの言葉が脳裏をよぎる。

『お前の元素回路がどんなものか、まだ俺たちも全貌を把握してねぇ』

この世界の魔法の回路....頼むから特別な何かでなくて良い。俺は普通でいい、普通がいいんだ。

怪しまれるのは勘弁してくれ。

それに....

もし俺が、前世の記憶を持ったままこの身体の「意識を乗っ取った」のだとしたら、俺の回路は一体どうなっているんだろうか。


「まずは石に魔力を込めてみろ」

そう言い見た目はただの石にしか見えないものを渡してきた。

「ふぁぁ!」

・・・・

俺、魔力の込め方知らないんですけど。

「あの、魔力ってどうやって込めるんですか?」

 

「.....ふぅーってやってはぁー!!....だ」

(いや、分かるか!)

「えっと....わかんないっす」


「もっと分かりやすく言うとだな、『ふぅー』でイメージして『はぁー!!』で放出する感じだ」


ダメだ。この人教え方下手かもしれない。

「ちょっと、よく分かんないっす」

逆にこれで分かったら天才だな。

「これに関しては完全にイメージだからなぁ」


「逆に師匠が魔法使えるようになったきっかけってなんだったんですか?」


こうやって過去を辿れば俺にも分かるかもしれない。

「俺かぁ.....俺はな...」

こうして、ナタリが自分の魔法を使い始めた物語を語り始めた。


ナタリは幼少期、戦争が盛んな国で生まれ、親を見たことがなく、生きているのか死んでいるのかさえも知らなかったらしい。

そして14歳頃敵国に人質として監禁されていた時に魔法が使える感覚を知った、と言った。

その時がちょうどこの国の人が助けに来た時だったらしい。とまぁ、大体こんな話だった。

「なるほど」

本人はそんなでも無さそうだが少し気まずい。

「そんで、分かったか?」

うむ、何も分からずだ。

「その、初めて知った瞬間って?もっと詳しく知りたいです。」

本人が気まずくなさそうならこちら側もそれに合わせることにする。

「えっとだなぁ。あん時は...ちょうど火の魔法が飛んできて俺のいた建物が崩れた時だったな、めっちゃ熱かったなぁ」

(ん?あ、そうか!)

「師匠!空を飛んだ時みたいに風の魔法に触らしてくれませんか?」


ナタリは俺の元素回路があることに気づいていた。

そして、触れていれば元素回路が開きやすくなるって仮説を立てた。

そして、微量の風を体で受けながら目を閉じてイメージをした。

溜めて溜めて解放....じゃなくて、イメージからの放出。


「おぉ、水色か」

俺が目を開けると綺麗な淡い水色に光っていた。

「す、すげぇ。これってどうなんですか?師匠!」


「水色は水系統の魔法だな。まぁ当たりの属性だ。でかした」

そう言いリュックから別の石を取り出した。

「お次はこいつだ」


「これは?」


「名前は俺も知らん。忘れちまった。」

俺の師匠は忘れっぽい。

「簡単に言うと能力を測るヤツだ。この石で星素回路の有無を判別する」

星素回路。なんだろう。

「一応説明すると、まぁ固有能力みたいなもんだ。」


「固有能力?」


「あぁ、まず第一に星素回路がある人そうじゃない人がいる。持ってるやつを『アウター』、まぁ『星付き』って言うやつもいる。持ってないやつをコモナーという。

星素回路がある人間は元素魔法にプラスで固有能力って事になるからかなり強い。」

何やら難しくなってきた。

「な...なるほど」

「さらに、固有能力は自由度が高い。身体の一部から発動するやつもいれば、精神に干渉してくるやつまでいる。その分1人1固有能力だからそれさえ気付ければなんとかなることが多い。だから無闇に使わない、味方に対してもだ。これが基本だ。」

魔法はかなり奥が深いらしい。まだまだ使えるのは先になりそうだ。

「研究によると、元素魔法は身体に深く関わっている反面、星素回路は精神に深く関わっているかららしい。ちなみに俺も星付きだ」


「俺の固有能力....」


「まぁそんな心配すんな。持ってないやつでも俺より強いやつはいる。多分」


「分かりました。やります」


「よし、じゃあこの石を持て。持つだけでいい」

そう言い今度は真っ黒い石を渡してきた。

見た感じ黒曜石みたいな雰囲気だ。

「重っ!」

そんな俺の感想を無視して黒い石が光出した。

光と言うか、一本の白い糸のようだった。

まるで石の中から出てきたように、生き物のように不規則な動きで空気中へと浮かんできている。

だが、綺麗だった。

「うわぁ....」


「....お前も持っているって事だ。やるじゃんアルティ君」

俺も.....星付きなのか。

「ありがとうございます!」


「よし、離していいぞ」

そう言われ、手を離そうとした時だった。

「待て!だめだ!手を離すな!」

え?何々?どっちなんだ。

急いで手のひらを再度くっつけた。

危なかった。それにしてもどう言うことなん....だ。

その瞬間、もう一本。白い光の糸が出てきた。

「どういうことだ...あり得ない.....おかしい」

1人でブツブツ考察?をしているのか分からないが何か独り言を言っている。

魂が二つ?いや、生物学上構造的にあり得ない。それなら精神関与が.....。

と、こんな感じだ。それ以上は聞こえなかった。

それにしても、何がおかしいのか。2本目が出てくる事がそんなにおかしいのか。状況が読めない。


「どうしたんですか?師匠」


その日の訓練は急遽、測定だけで終わった。

そして、ナタリに部屋へ戻されて外出禁止と言い渡された。

自分なりに考えてみる。

(まさか、あの光の糸が星素回路だったのか?)

だから2本目が出てくるのはおかしい。

多分そうだ。

ナタリは最初、星素回路は1人一つしか持っていない、と言っていた。

...だから?

そこまで焦ることなのだろうか。

まさか、2本あると早死にするとか?

まさかね、そんなことあるわけない。

だが今日は朝の時点で訓練が終わってしまったから部屋から出れていない。

なぜかこの世界の字が読めるので部屋にあった本を読み漁っていた。

それからというともの、もう夕方の6時だ。

遅かれ早かれ、説明は明日になるだろう。

少し早めだが、ナタリが持ってきてくれたフルーツでも食べて寝る事にする。

「なんだこの味!うめぇな....この実もおいしい。こっちも!」


もしかして俺が特別過ぎたのかもしれない。

とにかく明日ナタリに説明してもらうことにする。

あっ温泉行けてなかった。まぁいいや。

そうして、初の訓練を終えた。


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