第八章:黄金の電撃、珍味なる抵抗
第七章の残酷な再会から、物語はさらなる絶望と、アーサーの内に眠る未知の力へと向かいます。リナを失った怒りがもたらした超能力。しかし、それは惑星の支配者である王の前では、単なる「スパイス」に過ぎなかった……。圧倒的な力の差と、人間を「食材」としてしか見ない異星人の不気味さを描く第八章をお届けします。
「リナ……リナぁぁぁッ!!」
アーサーの絶叫が、王家の晩餐会を切り裂いた。 黄金色に焼き上げられた幼馴染の亡骸を抱きしめ、アーサーの心は完全に崩壊した。 悲しみ、悔恨、そして——底なしの憎悪。
その瞬間、彼の体内で、数千年の家畜生活で去勢されていたはずの「野生」が爆発した。
「……ギ、ギギィィッ!?」
護衛の異星人たちが足を止めた。 アーサーの全身から、青白い火花がパチパチと音を立てて弾け始めたのだ。 それは、彼の中に眠っていた超能力の覚醒だった。先祖エドワードが遺した「希望」のシリンダーが、彼の怒りと共鳴し、細胞内のミトコンドリアを一気に活性化させ、生体電流を極限まで増幅させたのだ。
「お前たち……全員、灰にしてやる!!」
アーサーが両手を広げると、咆哮と共に、黄金色に輝く巨大な電撃が放たれた。 ドォォォン!! 雷鳴のような轟音が響き、電撃は食卓を直撃した。銀皿が弾け飛び、豪華な料理が宙を舞う。護衛たちは悲鳴を上げて吹き飛ばされ、会場はパニックに陥った。
「お父様、危ないわ!」
王女リリスが悲鳴を上げる。 だが、玉座に座る王——この惑星で最強の戦士でもある元帥は、微動だにしなかった。
「……ほう」
王は、自分に向かって放たれたアーサーの最高出力の電撃を、ただ静かに見つめていた。 電撃が王の体を直撃した瞬間、王の皮膚表面に、未知のエネルギーフィールドが展開された。黄金の雷は、そのフィールドに阻まれ、王の髪一筋さえも焦がすことはできなかった。
「な……んだと……」
アーサーは愕然とした。 渾身の一撃が、通用しない。
王は、ゆっくりと立ち上がった。 その巨大な体躯から放たれるプレッシャーだけで、アーサーは息をすることさえ困難になる。
「家畜が、少々知恵をつけ、力を得たか。だが、所詮は『食材』の分際」
王は、アーサーの首を片手で掴み上げた。 アーサーは必死に電撃を放ち続けるが、王はそれを歯牙にもかけない。
「……なるほど。この刺激、このピリピリとした感覚。これは……珍味、最上の『周防アイス』ではないか」
王は、アーサーの電撃をまるで極上のデザートでも味わうように、満足げに喉を鳴らした。 彼らにとって、人間の抵抗意志さえも、味覚を刺激する「スパイス」に過ぎなかったのだ。
「ギギィ、この個体は特別だ。繁殖用ではなく、私の『専属食材』として保存せよ。ただし、これ以上の暴動は困る。別の食料貯蔵庫へ拘束しろ」
王の命令で、アーサーは再び、冷たい檻の中へと投げ込まれた。 今度は、より強固な、超能力をも封じる特殊な檻だった。
王は、散乱した食卓を一瞥した。
「……汚れたな。片付けろ。リナの遺体も含め、全てだ」
王の言葉に、給仕たちが一斉に動き出す。 アーサーの目の前で、リナの亡骸は、他の食べ残しと共に、無造作に「ゴミ」として処理されていった。
「いやだ……リナ……! リナァァァッ!!」
アーサーの叫びは、虚しく檻の中に響く。
「新しい料理を揃えさせろ。誕生祭は、まだ終わっていない」
王は、何事もなかったかのように、新しい食卓についた。 そこには、再び、美味しそうな匂いを放つ、別の「人間」の料理が並べられようとしていた。
冷たい檻の中で、アーサーはただ、絶望の淵に沈んでいった。 しかし、彼の心の中で、小さな、しかし決して消えることのない火種が、まだ燃え続けていた。
「……絶対に、許さない。お前たち全員、俺が食い尽くしてやる」
それは、家畜が、真の捕食者へと変わるための、最初の一歩だった。
第八章をお読みいただきありがとうございます。 アーサーの超能力覚醒と、それを嘲笑うかのような王の圧倒的な力、そしてリナの遺体が「ゴミ」として処理されるという、さらなる絶望を描きました。 アーサーの心の中で、復讐の炎はより一層強く燃え上がっています。
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