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第七章:王女の誕生祭、銀皿の上の亡骸

絶望は、アーサーの想像を遥かに超えていました。再会を信じて駆け抜けた先に待っていたのは、言葉を交わすことすら叶わない、無残に「調理」された幼馴染の姿。SFホラーとしての残酷さと、そこから生まれる狂気的な復讐心を描く第七章を再構成します。


やはり、付け焼刃の荒療治、リナの意識は遠のき反撃むなしくリナはまた捉えられる.再びリナを取り戻すため探すうち、あの忌まわしくもそう元和王家のパーティ会場。

希望のシリンダーを握りしめ、警備の目を掻い潜って辿り着いたその場所は、地獄よりもなお凄惨な「美」に満ちていた。

広大な大広間。宇宙の星々を閉じ込めたようなホログラムが天井で踊り、黄金の装飾が施された柱がそびえ立つ。中央に鎮座する数キロメートルに及ぶ大食卓には、この惑星の支配者である「王家」の一族が集っていた。

「さあ、本日のメインディッシュだ。地球産、最高級優良遺伝子個体——『成熟した果実』のローストである!」

給仕長が声を張り上げると、数人がかりで巨大な銀色のドーム状のクロッシュが運ばれてきた。 アーサーは柱の影で息を潜め、リナがそこに「囚われている」のだと信じて疑わなかった。助け出し、一緒に逃げる。その一心でここまで来た。

だが、蓋が開けられた瞬間、アーサーの視界から色彩が消えた。

「……あ……」

銀皿の上に横たわっていたのは、純白のドレスではなく、黄金色に焼き上げられた「肉」だった。

それは、間違いなくリナだった。 彼女の面影を残したまま、肌は熱で緻密にコーティングされ、周囲には色鮮やかな異星の果実と、鼻を突く芳醇な香辛料が美しく盛り付けられている。彼女が大切にしていたペンダントだけが、熱で歪み、その胸元に虚しく食い込んでいた。

「素晴らしいわ。この焼き色、そしてこの香り……まさに芸術ね」

王女リリスが、うっとりとした表情で銀色のナイフを手に取る。彼女にとって、それは一人の少女の命ではなく、一年に一度の誕生日に相応しい「最高の贅沢品」に過ぎなかった。

アーサーの膝がガクガクと震え、胃の底から熱い塊がせり上がってくる。 彼らがリナにしたのは、「収穫」ですらなかった。それは、ただの「加工」だ。 ナノマシンで肉質を整え、生きたまま熱を通し、最も「美味」な状態で皿に載せる。そこには、慈悲も、対話の余地も、塵一つほども存在しなかった。

「リナ……リナぁぁぁッ!!」

理性が焼き切れる音がした。アーサーは影から飛び出し、狂ったように叫びながら食卓へと駆け寄った。 王家の護衛たちが驚きに複眼を揺らす。だが、それ以上に驚愕したのは、皿の上の「料理」に触れようとする不潔な家畜の不敬さに対してだった。

「汚らわしい! つまみ出せ!」

王の怒声が響く。だが、アーサーは止まらない。 彼は銀皿に縋り付き、熱を失い、香ばしい匂いを放つ「リナだったもの」を抱きしめた。

「あああ……っ、ごめん、リナ、間に合わなかった……! 許してくれ、こんな……こんな……!」

アーサーの涙が、リナの焼き上げられた頬に落ち、ジリリと音を立てて蒸発する。 その瞬間、彼の中で何かが完全に壊れ、代わりに「人間」としての枠を超えた漆黒の殺意が充填された。

彼はゆっくりと立ち上がった。 片手には、先祖から託されたシリンダー。もう片方の手には、リナの遺体の側に添えられていた、重厚な彫刻入りの食事用ナイフ。

「お前たちには……ひとかけらも食わせない」

アーサーの瞳が、憎悪で赤く染まる。 彼がシリンダーの安全装置を解除した瞬間、会場に響き渡ったのは、王女の悲鳴ではなく、人類が数千年分溜め込んできた「捕食される側」の咆哮だった。


第七章をお読みいただきありがとうございます。 リナを「料理」として登場させるという、極めて残酷な展開を描かせていただきました。アーサーの絶望が、もはや救済ではなく「全滅」へと向かうターニングポイントです。

面白い、続きが気になると思っていただけましたら、ぜひ感想や評価をお願いいたします!


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