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第六章:遺された希望、エドワードの遺言

ダクトを抜け、さらに深層へと進んだ二人は、異星人の居住区とは隔離された、古いゴミ捨て場のような一角に辿り着いた。 そこには、数千年前の「地球」の残骸が積み上げられていた。

朽ち果てた車のパーツ、錆びついた看板……そして、その中心に安置されていたのは、NASAのロゴが刻まれた、ボロボロの観測ポッドだった。

「これは……まさか」

アーサーがポッドのコンソールに触れると、奇跡的に生きていた予備電源が入り、ホログラムが浮かび上がった。 そこに映っていたのは、血塗られた白衣を着た、若き日の先祖、エドワード・アーサーだった。

『……このメッセージを見ている者が、まだ「人間」であることを願う。』

エドワードの声は、ノイズ混じりながらも力強かった。

『我々は敗れた。だが、ただ食われるために滅びたわけではない。私はこのポッドのメモリに、異星人の「母船」の構造図と、彼らが唯一嫌う、ある「成分」の合成データを隠した。』

アーサーは息を呑んだ。 エドワードは、自分が食われる直前まで、この瞬間のためにデータを隠し続けていたのだ。

『彼らは、地球の生命体が持つ「恐怖」という感情が生み出すホルモンを、最高の調味料として好む。だが、その逆……「希望」や「勇気」を持って戦う者の肉は、彼らにとって猛毒となる。彼らの消化器官は、強い抵抗意志を持つ生命体を分解できないのだ。』

ホログラムのエドワードが、真っ直ぐにアーサーを見つめているように感じられた。

『戦え。震えながらでもいい、立ち向かえ。お前たちが「餌」であることを拒んだ時、この惑星そのものが、奴らにとっての巨大な毒薬へと変わるだろう。』

メッセージが途切れ、ポッドから一本のシリンダーが吐き出された。 そこには、異星人の科学技術を無力化するための、人類最後の英知が詰まっていた。

「じいさん……あんたの負けは、無駄じゃなかった」

アーサーはそのシリンダーをリナに見せた。 二人の瞳には、絶望ではなく、燃え上がるような反撃の炎が宿っていた。

地球は死んでいない。 彼ら二人の血の中に、そしてこの一撃の中に、まだ生き続けている。


全三エピソード、お読みいただきありがとうございました。 「知性による逆襲」「身体の変異」「先祖からの遺産」という三つのテーマを通じ、アーサーとリナが「家畜」から「戦士」へと脱皮していく過程を描きました。

壮大なSF復讐劇と向かいます! 面白い、続きが気になると思っていただけましたら、ぜひ感想や評価をお願いいたします。


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