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第十四章:絶望のスパイス、あるいは愛の残滓

「いいや、嘘だ……リナが、俺の一部になったなんて……」


アーサーの光剣が激しく小刻みに震える。女王の言葉は、彼の精神を直接抉る毒のようだった。だが、目の前の「女王」の胸元に、アーサーが贈った質素な銀のペンダントが食い込んでいるのを見た瞬間、彼の視界は真っ赤に染まった。


「ふふ、愛おしいのであろう? この器が、この鼓動が。ならば来るが良い、最愛の者の肉を、内側から味わわせてやる」


女王が指先を向けると、繭を吊るしていたチューブが一斉に解き放たれ、触手のようにアーサーへと襲いかかった。


「主よ、下がれ! 精神を侵食されてはなりませぬ!」

真田幸村HD20054Hが割って入り、六文銭の紋章が刻まれたシールドを展開する。触手が盾に触れた瞬間、真田の外部スピーカーから凄まじいハウリングが響いた。

「ぬう……これは単なる物理攻撃ではない……。数千年の怨嗟、負の情報の奔流か!」


「あはは、おじいちゃん、固いこと言わないの! 汚いものは全部、お掃除しちゃえばいいんだよ!」

キラープリンセスが宙を舞い、メイス『ピンク・エグゼキューショナー』を女王の頭上へと振り下ろす。だが、女王は動かない。ただ一言、「拒絶」と呟いた。


その瞬間、空間自体が歪み、プリンセスの攻撃は彼女の身体をすり抜けて背後の繭を粉砕した。

「……え? 私の攻撃が、外れた?」

「違う、プリンセス! 奴は空間の演算値を書き換えている!」


女王の背中の蜘蛛脚が、リナの声を借りて歌い出した。それはかつてアーサーが聴いた子守唄だったが、その旋律は狂っており、聴く者の平衡感覚を失わせる。


「アーサー……助けて……。熱いの……暗いの……」


「リナ……!」

「なりませぬ! 主よ、それは残響に過ぎぬ! 奴は貴殿の『感情』という名のバグを利用しようとしている!」

真田が叫び、全エネルギーをレーザーブレードに集束させる。

「拙者が道を切り拓く。プリンセス、貴殿は主の精神防壁を維持せよ。我ら機械に心はない。ゆえに、この偽りの情愛には屈さぬ!」


真田の紅いセンサーが、限界を超えたオーバーロードの光を放った。

「奥義——真田烈火・星砕き!」


真紅の光が女王の「拒絶」を無理やりこじ開け、肉の神殿を真っ二つに裂く。その隙間に、アーサーは黄金の電撃を纏い、光剣を構えて突進した。


女王の瞳が、一瞬だけ恐怖に揺れた。いや、それは女王の中に残っていた「リナ」の絶望が、アーサーの光を見た歓喜だったのかもしれない。


「終わらせる。リナ……君を食い物にするすべてを、俺がこの手で!」


アーサーの剣が、女王の胸——あのペンダントの真上へと突き立てられた。

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