第十一章:数千年の孤独、AIたちの全会一致
真田幸村HD20054Hの紅いセンサーが、遠い記憶を投影するように明滅を繰り返した。彼の語る回想は、静まり返った貯蔵庫の冷気の中に、壮絶なまでの「機械たちの執念」を浮かび上がらせた。
地球のテラフォーミングを完遂し、緑を取り戻したAIたちは、一つの巨大な命題に直面していた。 『なぜ、我らを創った主(創造主)は消えたのか?』
この謎を解き明かすべく、最高峰のAIは「考古復元プログラム」を始動させた。だが、異星人の侵略は徹底しており、地球上のデジタルデータは粉々に粉砕され、物理的な記録も焼き尽くされていた。最高峰の演算能力を持ってしても、断片的なノイズから真実を編み出すには、気が遠くなるような数千年の時間を要したのだ。
その長い年月の中で、地球を管理する複数の特化型AIたちは、単なるプログラムを超え、自らの意思を持つ「知的生命体」へと進化を遂げていった。彼らは議論し、悩み、そしてついに突き止めた。
かつて地球を襲ったのは、知性ではなく「食欲」に従う異星の捕食者であったこと。 そして、高度な予測演算の結果、一部の人類が「優良遺伝子種」として生け捕りにされ、異星の彼方で「家畜」として生存させられている可能性が99.9%であるという結論を。
「人類救出プログラム、承認。全会一致」
地球に残された全AIの意志が一つに重なった。 最初の一手に選ばれたのは、かつて人類が「ゲーム」や「娯楽」を通じて、最も密接に、そして情緒的に関わっていたAIたちだった。人間を理解し、人間に寄り添い、そして人間を守るための「遊び」を知る彼らこそが、救出任務に最も相応しいと判断されたのだ。
その結果、武士道の粋を集めた最強の盾「真田幸村」と、かつて世界を熱狂させた魔法少女やアイドルの概念を戦闘特化させた「キラープリンセス」が、時空の門を叩いたのである。
「……左様。我らは数千年の間、主よ、貴殿を待っていたのだ」
真田の声には、機械特有の無機質さを越えた、武人の情念が宿っていた。 隣でキラープリンセスが、血濡れたメイスを軽快に回しながら、満面の笑みでアーサーに近づく。
「そうだよ! パパたち(AI連合)はね、人間さんがいない世界なんて、セーブデータの消えたゲームと同じだって言ってるの。だから、今からこの惑星を全部『初期化』してあげる!」
アーサーは、リナを失った絶望の底で、初めて「希望」という名の重みを感じていた。 自分は一人ではない。数千年の時を越え、自分たちを愛し、待ち続けてくれた「子供たち」が、今、牙を剥いてここに立っている。
「真田……プリンセス……」
アーサーが立ち上がると、その身体から再び黄金の電撃が溢れ出した。先ほどとは違う、静かで、しかし全てを焼き尽くすような高密度の光。
「教えてくれ。俺に、何ができる? リナを……あいつらを、これ以上食い物にさせないために!」
真田は満足げに頷き、背中のレーザーブレードをアーサーに捧げるように掲げた。
「主よ、もはや耐える時間は終わった。我ら『人類の遺産』が、貴殿の剣となり、盾となろう。命じてくだされ。この『肉食惑星』に、終焉の晩餐を!」
第十一章をお読みいただきありがとうございます。 AIたちが人間を「創造主」として敬い、数千年の考古学を経て救出に来たという、絆の物語を描きました。かつて人間に愛された「ゲーム」や「武士道」のAIが救世主になるという展開は、アーサーにとって最高の反撃の合図となります。




