38話 とめはね
現在時刻は十時三十二分、洸介は目覚めた。栖春とは連絡がつかないままもう六時間以上経っている。既読すらついていない。
本当に考えたくないのだが、残念ながら栖春は捕まってしまったのだ。この事実に目を背けたい、ずっとそう思っている。大事な友達を放っておくわけにはいかないのだ。
スマホから連絡音が鳴った。ポケットから取り出しメッセージアプリを開く。祥平からだった。栖春かと思って少し期待をしていたが、違うことに悲しみを覚えた。
『あの暗証番号の色の話したいんだけど』『時間ある?』
個人チャットには久しぶりだな…
『ある』『しょーちゃんち行くわ』
『待ってる』『USBとSDカードも持ってきて』
…何か返事が気持ち悪い……………
いつもと違うテンションで送られてきた返事は、とても簡潔でわかりやすいものではあった。が、祥平らしさが欠けていて、洸介には少し気持ち悪く感じた。
というわけで、早速洸介は出かける支度をした。持っていく物は二つしかないが。
階段を下りて玄関に行く。その時声をかけられた。
「ねえ、どこいくの?」
「…少し遊んでくる」
「夜」
洸介は動揺してビクッと体が震えた。声をかけたのは洸介の母だ。母の表情をよく見ると、怒っているように見えた。
「どこにいってたの」
洸介は数秒黙った。口を開くたくなさそうな表情を浮かべる。
「別にどこに行こうが構わないけど、絶対に生きて帰ることよ?」
「……………俺は友達のためだったら命は捨てる。それだけ言っておく」
ガチャ
「は?ちょ
バタン
母には悪いことをしたと自覚はしたが、そんなことより栖春の方が何億倍も大事だ。会話を無理矢理終わらせて、すぐに祥平の家に向かった。
ピンポーン
ガチャ
「…入って」
「うん」
声がいつもより低い、テンションも低い、表情も暗い、といろいろツッコミたいところがあるが、とりあえず今の状況的に話すタイミングはない。今からそれより大事な話をするだろう。
祥平の部屋に入り、適当にベッドに座る。祥平はテレビで何かの準備をしている。
「…話っていっても、暗証番号の色の謎はもう済んだんじゃないのか?」
「いや、まだ終わってない。続きがある」
そう言っていると祥平はスマホの画面をテレビのスクリーンと共有させた。写し出されたのは例の暗証番号の画像だ
「何かに気づいたのか?」
「うん。これ見てほしい」
そう言って祥平は画面を指さす。
「緑が反対なことか?」
「違う、黒と青のところ。よく見て」
洸介は祥平の言われた通りよく見るため画面に近づく。
別におかしなところはない気が……………
何がおかしいかわからないくらいだ。遂に幻覚でも見てしまったのかと疑ってしまう。
「文字のとめはね。これ人が書いたものだってことはわかる?」
「うん、どうせ犯人だろ?」
「だからわかりにくかったんだ」
急にどうしたんだ?
やっぱり雰囲気がおかしい祥平のことが気味が悪くてたまらない。怖さを感じる。
「黒の下の点の向き見て」
洸介は言われるがままに見てみた。その時洸介も何が言いたいかを理解した。
黒の感じの四つの点は普通一番左の点だけ左下に向かって太くなり、その他は右下に向かって太くなる。だが、この文字は違かった。左三つが左下に向かって太くなっていて、一番右の点は右下に向かって太くなっている。
これを見つけ出すということは、祥平が本気を出したのだ。




