28話 六日目、開始
八月三十日
九月一日まであと二日
「なんか久しぶりだな」
「一日でも感覚は忘れちゃうね」
夜の校門前、六人は再び姿を見せに来た。祥平の怪我も無事に治ったと言っているので、作業の再会を始める様子だ。みんな気合が入っている。
いつも通り学校に侵入して、散らばった。色と文字を探すかくれんぼが始まった。
六日目、開始。
「それで、送ったやつは本当なのか?」
「ああ…」
洸介は念のため、グループのメッセージにあの文章のデータを送っておいた。もちろんみんなはパニックになった。落ち着いたのはさっきである。
「まあ、見つければいいんでしょ?まだ四階と三階、二階は終わってないはずだ」
「今日はそこをやる感じなのか?」
「うん」
団長も戻って、しっかり動けるということで四階から洸介と祥平はスタートした。五階は前回一応全部回ることはできたのでスルーする。トールに見つかったのだが、何回か撒いて何回か見つかってを繰り返していた。そのやり過ぎで足をくじく人が現れてしまっている。
今日はなるべく安全に、静かにいくらしい。いつもからそうしとけよ何してんねん。
「あんま音立てるなよ。また来るから」
「分かってるって」
四階は化学室や物理室があるところだ。特に化学室はビーカーなどのガラス製品がたくさんあるので気を付けたいところである。
「とはいっても、三個目。見つけたな」
「意外に大胆に書いてあるね」
物理室の黒板に大きく書いてある。緑の『n』だ。
「これで、残すところあと一つだな」
「このまま行ったら防げるよ!」
「……………お前さぁ、そんなこと言ったら
ガチャグショ
「来ちゃったじゃん…」
祥平が派手な台詞を口に出してしまい、見事にフラグがたった。ここにきて捕まるわけにはいかないので、足音を立てないように何処か隠れる場所を探し回る。
何処にもいい場所がない。最悪片方のドアから出て撒けばいいのでダメージは少ないのだが。さあどうなる。こういうときは大体
ガラガラ
「逃げるぞ」
入ってくるのが約束なのだ。もはやそっちに期待してたくらいだ。
ドアを勢いよく開けて入って来たのは黄色い体、ノイズであった。洸介と祥平は確認をするや否やすぐ反対側のドアに向かって走り、教室の外を出た。
「ニンゲン ノ ハッケン。ホカク ヲ シッコウ スル」
それを察知したノイズも追いかけてきた。
「階段を上がってまた撒こう」
「そうだな」
そう言いながら、二人は階段を駆け上がる。四階から五階に上がり、たくさんの教室でノイズを撒く、定番のやり方だ。
何処かいい場所はないかと探していると、階段のすぐ前に家庭科の調理室があった。そこが適していると思った洸介は提案する。
「ここに入ろう」
「わかった!」
ドアを開けて中に入った。コンロとシンクがくっついている机がたくさんあって、隠れながら逃げることができるいい場所だ。
入って早々に一番奥の机に隠れた。高校二年生の男子でも余裕で隠れることのできる机、とても万能だ。料理も出来て洗いものも出来て隠れることもできる。
足音と機械音が近づいてきた。二人は口に手を当てて声が漏れないようにした。
「……………アアア フライパン。アノカタ ニ ヨロコバレル ハズ」
ノイズが入って来た。が様子がおかしい。まるで追いかけていたのを忘れていたかのように食器を見始めた。その様子をチラっと覗いた祥平は口を開けてずっと見ていた。
「何してんだよ」
「ああごめん。そんなことより逃げるチャンスだよ!」
二人は隙を見て何とか教室から抜け出すことに成功した。もちろんノイズは気づいていないので、完璧に撒くことができたのだ。
「あとは連絡もしないとね」
祥平は携帯をポケットから取り出す。画面を見ている、じっと見つめている。
「おい、今度は何だ?」
そう洸介が問いかけると、祥平は無言で画面を見せてきた。グループのメッセージの画面だ。下の方を見ると、今日の今さっきに円得が発言している。
『たすけて』




