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あやかし社長と溺愛契約(こちら、あやかし移住転職サービスですー福岡天神四〇〇年・お狐社長と私の恋)  作者: まえばる蒔乃


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 篠崎さんは自分の尻尾を手に取り、撫でながら言う。その流し目と微笑む唇に、先程のキスを思い出してぞくりとする。ここで綺麗だとか、かっこいいとか思ったら負けだ。


「ところで霊力は、定期的に吸わないといけないからな?」

「は?」

「そりゃそうだろ。楓は温泉が湧き出るように無尽蔵に霊力が噴き出してんだから」

「な……な………」


 尻尾をゆらゆら、さっさとオフィスを後にした篠崎さんは、ドアの前で鍵をチャラチャラと鳴らす。


「出るぞ」

「あの、キス以外の方法ってないんですか?」

「ねえんだよな、それが。他にあったら、こんなこと誰がするか」

「誰がするか、って酷くないですか!?」


 彼は肩をすくめた。


「その代わり責任持って守ってやるよ。そのダダ漏れの霊力がなんとかなるまでは」


 守ってやると言われるのは心強い。

 とてもありがたいし、実際篠崎さんはとても優しくて親切だ。社員として頑張って働いて、早く彼に恩返ししたいと思う。

 けれどキスは。キスはどうしよう。

 ファーストキスとして良いシチュエーションだったのは確かだけど、まだ、その、混乱しかない。だって私篠崎さんと付き合ってる訳でも、篠崎さんに好かれてる訳でもないのに。


「おーい。楓」

「篠崎さん」

「ん?」

「……夕飯、ご馳走してくださるっておっしゃいましたよね?」


 低い声で問いかける私に、篠崎さんは目を細めて苦笑う。


「ブランド牛とかやめてくれよ」

川副かわぞえさんの屋台の、おうどんが……また食べたいです……」

「安上がりで可愛いな、お前」


 こうして。

『普通』の平穏を望んで慎ましやかに生きてきた私は、とんだ社長の下でで働くことになったのだった。



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