第25話 秘技無双
オレの左手には龍の形をした痣がある。それは決してただの痣ではなく異世界を司る黒龍の化身と魂の契約を結んだ時に刻まれたものだ。
あれはオレが厨……中二の時に交通事故に遭い生死の境を彷徨った(気になっている)時に異世界の龍神がオレの生命を惜しんで救ってくれた証で、あの時に異世界への転生を垣間見た(ような気がしている)オレは何時向うの世界へ再召喚されても困らないようにと、こちらの世界の知識を学び続ける宿命を負っている。
さて、今回はこれまでに行ってきた知識チートによる科学技術の発展では無く異世界に存在するスキルという概念についておさらいをしておきたいと考える。
――スキルとは何か?
例えば魔法。これも言い換えれば”魔法力を行使可能なスキル”となるが、一概に魔法と言っても火や水などの属性魔法、精霊との契約によってその力を借りる精霊魔法、自身とは別の存在を呼び出して使役する召喚魔法、これらの他にも時間魔法や空間魔法といった様々な魔法があり、これら全てをまとめて”魔法スキル”と呼ぶ。
これらの魔法スキルを使用するには一般的には魔力を消費するとされるが、いくつかの文献によっては魔法以外のスキル行使にはスタミナを消費する事が判っており、魔力を消費せずに発現する力の事をただ単に”スキル”と呼んで”魔法”と区別している場合がある。
だがこの”スキル”もモノによっては”魔法”以上の不可思議な現象を起こす事が様々な過去の記録から判っており、魔力を消費しないからと言って”スキル”が魔法の下位互換であるといった考え方は間違っていると言えよう。――中には魔法より強力な技もあるからな。
だがこの”スキル”について何らかの指標を元に分類するは魔法と違いかなり難しいと言わざるをえない。
最初は攻撃や移動などその効果によって分けられると考えていたのだが中には二つ以上の効果がある複合スキルや、どの分類にも属さない特殊なスキルもあり統一体系的にキレイに分ける事が出来ないのだ。
だから今回は学術的なムズカシイ話は抜きにして、オレが異世界へ行った時に必ず習得しておきたい有用なスキルについて考証を重ねてみようと思う。
先ずはアイテムボックスが必要だろう。
以前にも検証を行った事のあるスキルなのだが、使い方次第では並みの攻撃スキルなんて目じゃないくらいの効果を発揮するし何より便利の一言に尽きる。
――考えてみてくれ、これがあればリアルで未来世界のネコ型ロボがファンタジーの世界で再現出来るんだぜ? もう最強と呼ぶしか無いだろう。
このアイテムボックスの中は空間の大きさなんてケチな概念は存在せず、しかもその中へ収納された物体の重さは”ゼロ”になってしまうとさえ言われている。このスキルがあれば異世界中のどこにでも大量の破壊兵器を持ち込む事も可能になるし、敵が投擲系の遠距離攻撃を仕掛けて来た時には飛んで来た矢とか槍を吸い込んで無力化する事も可能になるだろう。
更にスゴイのはこのアイテムボックス内の空間では時間の流れが止まっているケースがほとんどだから、生鮮食料品なんかの保存にも大活躍だ。もしこのスキルが一般で広く普及なんかしてみろ、収納家具はおろか冷蔵庫さえ不要となってしまうんだぞ。
そうなったら日●とか●菱とかパナ●ニックとかの家電メーカーが軒並み倒産して国中に失業者があふれ出す事になる。それはやがて国民の不満が限界となって時の政権与党が解散してしまうほどの影響力を持つ事になるだろう。これはそれだけ恐ろしい事態を招く可能性のある危険なスキルだと言う事で、もし運良くこのスキルを習得出来たとしても他人には話さない方がいいかも知れない。
21世紀生まれの上品なオレだから、このアイテムボックスの次に必要なスキルを上げるとしたらやっぱ移動系スキルじゃないかな。扉を開けるだけでドコへでも行けるドアみたいなアイテムでも良いんだけど、アイテムボックスからいちいち取り出して設置するのは正直なところ面倒いし、敵と戦っている最中には使い辛いと思う。
だけど瞬間移動みたいな感じでパパっと移動するだけならソレ系の魔法でもいいんだよな。だからここはもっと漢ゴコロをくすぐるような何かパーっとハデな能力でもあれば……。
――無かったので、ここは魔法で良しとしようか。
そうそう、裕福な家庭で両親に大切に育てられた上品なオレだから血生臭いイベントは極力パスしたい。だからもし敵と戦う事になったとしても正面からガチでの殴り合いなんてオレのイメージに反するから、次に習得したいスキルとなると隠密系がいいと思う。
夜の帳が下りて誰もが寝静まった暗闇の中、誰にもその存在を悟られる事無く次々と敵を屠って行く黒装束の勇者なんて斬新だと思わないか? そして敵を倒したついでに周りにある金目の物をアイテムボックスへと詰め込んで瞬間移動でパパっと持ち帰れば軍資金対策にもなると言う一粒で二度も三度もおいしい作戦だ。
だが勇者たる者、この程度で満足などしていては異世界の平和は守れない。
いくら紳士なこのオレだとしても、敵やお宝の場所が判らなければ戦略的勝利は遠のいてしまうだろう。出来れば俯瞰図のようなマップの上に敵味方やアイテムの場所がバッチリ判るような探知系スキルが欲しい。
もしそのスキルがあればスキルから齎された情報を元により安全で効率的な盗み……じゃなくて冒険や戦闘が有利になるし、探知する対象に特定の条件を付けて表示させる事が出来れば更なる応用が利きそうだ。
そうそう忘れるところだった。
オレが何も知らない異世界へ行った時に向こうの世界で使われている言語スキルなんかはデフォで貰っておきたい。それに向こうの世界にはグーグル先生は居ないだろうから鑑定スキルも最高レベルのものを付与して貰えないだろうか? もっと欲を言えばその鑑定スキルには疑似人格があってオレとは別の思考が可能だったら同時に複数の行動が起こせると思う。
――という訳で、オレの考えた最強スキルの組み合わせはこんな感じとなった。
いつ召喚されるかについては判らないが、今晩からこれらのスキルを書いた紙を枕の下に敷いて眠る事にしようか。
『おい勇者たち、何故このような所をコソコソと歩いておるのだ?』
「ぉお?!ま、魔王か、驚かせるなよ。決して戦っても勝てそうにないから、せめてこの城の財宝とか根こそぎ奪ってイヤガラセしようだなんて決して考えてないからな!」
『勇者よ、とうとうそこまで堕ちてしまったのだな……』
……オレの苦悩は続く。
(;´・ω・)「この勇者って戦闘スキルを何も持ってないみたいですね?」
( ゜Д゜)「もう勇者というよりドロボーさんだがや……」
これまでの戦績
1勝17敗(不戦敗13・完封負け3)
1引き分け・無効試合5




