第23話 護謨無双
オレの左手には龍の形をした痣がある。それは決してただの痣ではなく異世界を司る黒龍の化身と魂の契約を結んだ時に刻まれたものだ。
あれはオレが厨……中二の時に交通事故に遭い生死の境を彷徨った(気になっている)時に異世界の龍神がオレの生命を惜しんで救ってくれた証で、あの時に異世界への転生を垣間見た(ような気がしている)オレは何時向うの世界へ再召喚されても困らないようにと、こちらの世界の知識を学び続ける宿命を負っている。
さて、前回検証したガラスの製造は異世界の文明レベルであっても素材と時間さえあればいずれはこちらの世界と同程度の品質の物を作れる事が判った。これからオレが行く異世界でもガラスの存在はあるだろうが、21世紀の知識と技術を持ってすれば後発のオレが作る工場でもシェアに食い込む事は十分に可能だろう。
――ガラスはこれくらいにしておいて、次のテーマはゴムにしよう。
ゴムの発見は15世紀の大航海時代にまで遡るが、かの有名な探検家であるコロンブス氏が東南アジアへ来訪した時に発見したとされているが、それって歴史に記録されていないだけで東南アジアの人たちはそれこそ紀元前から知っていたって事なんじゃないかな。
そうそう忘れるところだったけど、ゴムには大きく分けて天然ゴムと合成ゴムの二種類がある。天然ゴムはゴムの木の樹液を採取して作るのに対して、合成ゴムは石油の蒸留成分を原料として作られる。
天然ゴムの原材料であるゴムの木の樹液は現地で”ラテックス”と呼ばれている事から、ラテックスゴムと言えば天然ゴムの事を指す。
合成ゴムの興りは第二次世界大戦の時に天然ゴムの輸入が滞り困りに困ったアメリカさんがお得意の石油化学技術によって開発したものだ。原油を精製する時に灯油とガソリンの中間材であるナフサと呼ばれる物質を蒸留したものにエチレンやプロピレンなどの化学物質を高温で加えてやるとモノマーの重合反応が起こってポリマー素材へと結合する化学反応が起こるらしい。
オレが異世界へ行ったとしても、まだ向こうの世界の産業レベルはゴミ以下のはずだから、石油化学の発展が必要な合成ゴムは難易度が高いと言える。だから先ずは天然ゴムの製造を手掛けながらその後の技術開発を待つとしよう。
だから異世界にもゴムの木があると信じて、その製造方法を調べてみる。
それは天候が良くて気温がまだ上がっていない朝方に作業を始めるのが良いとあり、ゴムの木の樹皮を削ると牛乳みたいな白い樹液が沁み出して来るのだがこの液体の事をラテックスと呼ぶ。この時に削った樹皮の下端を斜めに切り込んでおけば樹液が一カ所に集まって来るのでカップで集める事がカンタンになる。
こうして集められた樹液を濾してゴミを取り除いてから酸を添加し、その後で型に入れてある程度の硬さに固まるのを待つ。固まったゴムを踏むかローラーを使い薄く伸ばしてシート状に加工する。シート状に加工するのは竿に掛けて干す為らしいんだけど、シート状に伸ばしたゴムを仮置きする時に重ねてしまうとゴムがくっついてしまうから石鹸水を表面に塗っておいけば防げるみたいだ。
干す時は先ほどの石鹸の膜を水洗いして最初の一日目は屋外で干して水分を抜いてから、二日目以降は直射日光が当たらない屋内で日陰干しをする。ここまでの工程を経る頃になると最初は乳白色だったゴムが段々と変色してきて最後にはオレたちが日頃から良く知っているあの”輪ゴム”色となっている。
これでゴムが出来たような気がするがまだ完成では無い。
このままの状態のゴムは寒いと固まるし逆に暑いとドロドロの状態へと戻ってしまうのでもう一手間の加工が必要とされていて、それが硫黄と混ぜて高温で熱する事だと知った。この時の温度は華氏270度とされているから摂氏なら大体130度くらいかな。
こうしてオレたちが良く知っているあのゴム(っぽいモノ)が完成する。後はこの素材を元に様々な添加物を加えたり加工温度を変えたりして実験を繰り返せばこちらの世界の品物を遜色の無いゴムを製造する事が可能となるだろう。
『よくぞここまで辿りついたな勇者たちよ…‥ん、今日も何かいつもと違うな?』
「魔王よ、実は伝説の鎧とか兜の裏側にゴムシートを張りまくったから衝撃吸収力と電撃耐性が以前の倍以上になったぞ! ……ただチョットというか、カナ~リ重くはなってしまったがな!」
『だから勇者よ、まさか本当にそれで予に勝てるつもりなのかと聞いておる……』
……オレの苦悩は続く。
(;´・ω・)「たとえ衝撃とか電撃には強くても炎には弱そうですよね?」
( ゜Д゜)「そんな事も考えられん勇者の頭の方が衝撃的だがや……」
これまでの戦績
1勝16敗(不戦敗13・完封負け3)
1引き分け・無効試合5




