第22話 硝子無双
オレの左手には龍の形をした痣がある。それは決してただの痣ではなく異世界を司る黒龍の化身と魂の契約を結んだ時に刻まれたものだ。
あれはオレが厨……中二の時に交通事故に遭い生死の境を彷徨った(気になっている)時に異世界の龍神がオレの生命を惜しんで救ってくれた証で、あの時に異世界への転生を垣間見た(ような気がしている)オレは何時向うの世界へ再召喚されても困らないようにと、こちらの世界の知識を学び続ける宿命を負っている。
さて、これまでの検証結果から巨大ロボの開発の為には様々な技術が必要だという事が改めて判った。国民に教育を施して質の高い研究者と労働者として育て上げ、産業技術についても工場制手工業の導入から始めてエネルギー革命を起こし、そこから一気に22世紀の生産レベルまで引き上げる必要があるから大変だ。
だがここで焦って遠くばかりに目を奪われて思わずところで躓いてしまうといった失敗も予想されるので、ここは地道でも繊維や素材の分野から一つずつ知識を積み上げておく必要がある。
オレが目指すのは宇宙でも活躍出来る正義の巨大ロボなのだが、そこへ至るプロセスの前に開発しておくべきモノがいくつもあって、例えば航空機ならジェットエンジンの前はレシプロエンジンが主流だったがこれは自動車のエンジンが元となっているのは皆も知っている事だろう。
自動車の開発に必要な素材としては、エンジンやシャフトそれにサスペンション等に必要な強度の高い鋼鉄と圧出し加工に対応可能なある程度の柔らかさを持った薄い鋼板などの製鉄材。それ以外にもアルミやステンレスなどの金属も必要だが、これらの金属を繋ぎ合わせる為の様々な溶接技術なども必要となってくる。
あと金属以外にも必要な素材と言えばタイヤのゴムとかプラスチック類、それにウィンドウのガラスなんかも思いつくな。
――と言う訳で、先ずはこのガラスから調べてみよう。
ガラスは漢字で”硝子”と書く事で判るように硝石から作られる。その素材は石英や花崗岩が風化して出来る珪石と珪砂であり、これらの原料は水で洗ってみると色の付いた透明でキラキラ光る粒だという事が判る。
この珪砂と一緒に必要とされる炭酸ナトリウムはスーパーのお掃除用品売り場で売られている”重曹”を熱して二酸化炭素を抜けば作る事が出来るので、後は石灰石があれば材料としては揃った事になる。
異世界でこれらの素材が実際に手に入るかどうかは判らないが、過去の偉大なる先人たちの記録の多くにはガラスに関する記述を見つける事が出来るので多分大丈夫だと思う。
こちらの世界のように高品質なフロートガラスを製造する為には機械技術の発展を待たなくてはならないが、ある一定の大きさまでなら製造単価は高額となる事にさえ目を瞑れば”吹き硝子法”では無く、4世紀頃から伝わっている”クラウン法”や中世の英国で発明されたとされる”円筒法”によって製造する事が可能となるだろう。
ガラスを作る素材の融解温度は1600度程度とされているが、これくらいの温度ならギリで通常の炎で加工を行う事が出来るから特別な機材は無くても溶解炉を作る事は出来そうだ。どちらかと言えば素材を溶解させるよりも素材の中から不純物を取り出して透明度を上げる作業の方が難易度が高い気がする。
ガラスにつく”色み”は極小量の金属が原因でこの素材の選り分けの為の技術が中世程度の文明しか持たない異世界では難関となるだろう。逆にガラスに着色したい場合は極少量のコバルトやニッケル等の金属粉末を添加してやれば良いという事になる。
こうして考えてみるとガラスその物の製造はこれまで検証してきたものと比べて難易度は低い方だと言える。だがそのガラスの品質を現代のフロートガラス並みに求めるとなると製造に必要となるハイテク機材の開発も必要となってムリゲーレベルの技術力が求められてしまう事になる。
しかし”千歩の道も一歩から”と言われるようにイキナリ高品質なガラス製造を目指すのではなく、最初は現地の職人たちのレベルからスタートして徐々に技術力を磨いて行く手法の方が確実だし他にも転用が可能な技術の発見に繋がると思う。
このガラスの製造技術が一定レベルまで発展すれば次なる製品の開発へ進む事も出来るから、辛抱強くやっていくしかない。
『よくぞここまで辿りついたな勇者たちよ…‥ん、今日はいつもの装備と違うな』
「魔王よ!これが最先端技術で作った強化ガラス製の剣と盾だ、どうだキレイだろ~」
『お主、まさかそれで予に勝てるつもりか……?』
……オレの苦悩は続く。
(;´・ω・)「いくら強化ガラスでも武器にするには強度が足りませんよね?」
( ゜Д゜)「足らないのは強度じゃなくてアタマの中身だがや……」
これまでの戦績
1勝15敗(不戦敗12・完封負け3)
1引き分け・無効試合5




