第21話 教育無双
オレの左手には龍の形をした痣がある。それは決してただの痣ではなく異世界を司る黒龍の化身と魂の契約を結んだ時に刻まれたものだ。
あれはオレが厨……中二の時に交通事故に遭い生死の境を彷徨った(気になっている)時に異世界の龍神がオレの生命を惜しんで救ってくれた証で、あの時に異世界への転生を垣間見た(ような気がしている)オレは何時向うの世界へ再召喚されても困らないようにと、こちらの世界の知識を学び続ける宿命を負っている。
さて、前回までの検証において武器や生活用品などの工業製品を一定の品質を保って量産化する為には、部品や部材を含めた統一規格を定めて生産する必要がある事を知った。しかし異世界の住人たちは学校や教育の必要性を知らず、その産業を支えている職人たちですら生活の知恵程度の学識しか持っていない事が予想される。
彼らはこちらの世界で例えるなら中世ヨーロッパ程度の文化水準の中で育っており、一部の支配階級(王族や貴族)でも無ければ技術の理解・継承に必要とされる初等教育すら受けていないのが実情だ。――いや、受ける機会に恵まれずに育ったというべきだろう。
そこでオレは異世界におけるインダストリーレヴォリューションを巻き起こす前に、エデュケーショナルなレヴォューションを計画しようと考えた。
――先ずは学校が必要だ。
学校設立の為に最低限必要なものは……大きな敷地に校舎と運動場が最初に思い浮かぶが、これらのものはお金とコネさえあれば何とかなる。するとやはり得難いものは生徒を教え導く存在である教師たちだろう。こればかりは正直なところお金だけではどうしようもないし、逆にお金だけで寄って来るようなヤツらに大切な子供たちの教育を任せる事は出来ない。
その次に必要となるものは教育カリキュラムで、異世界にどの様な知識や知恵が必要になるか改めて考えておく必要がある。日本で中世のモデルケースとして江戸時代までの頃を参考とするなら、この教育は寺子屋で行っておりここでの教育は”読み・書き・そろばん”だと聞いた事がある。
だから国語と算数は必ず習わせる必要があるが、特に算数の後で習う数学は工業分野以外でも絶対必要になるので数学の素養がある者を見出して必ず学ばせておきたい。
それから理科についてだがいくら魔法が一般的な異世界だとしても、ここで教育を受けた人材を将来オレの事業に役立たせる為には電気や自然科学に関する知識は必要になるだろう。また社会については現地の事情を調査してから政治・地理・歴史について教育プログラムを作成する必要があるし、国語と外国語は向うの世界の言語をまだ知らないので後で考えよう。
とりあえずはこの5教科に加えて体育も必要だがそれ以外の教科まで含めるとカリキュラムが多すぎてどれも中途半端になりそうだから、この初等教育が普及して次の中等教育を求められるようになってから導入するれば良いだろう。
オレが異世界で技術チートによるウハウハ生活を手に入れるには、これら初等教育を受けた者たちの力が必要だから教育制度の実現の為に勇者の知名度と発言力を存分に使わせて貰おう。
ただ中世の頃だと子供も立派な働き手として数えられているから、何とかして親が子供を学校へ通わせるように仕向ける必要があるな。それに生活が決して楽では無い国民たちが学費を捻出してまで子供を学校へ送り出せる家庭はそう多くはないだろう。
物事は理想だけでは成り立たない。だってそうだろう、人間は腹も減るし感情もある生き物だ。例えそれが正しいと理解しても感情的・物理的に可能かどうかは別の問題だからだ。そうなるとこちらの世界と同じように学費無償の義務教育制度が必要で、弁当を持って来られない子供の為には学校給食も必要になって来るな。
これだけ考えても教育に必要なものは後から絶えず浮かんできてしまい、その全てをまとめて実現させる為にはお金と時間が圧倒的に足りない。
『よくぞここまで辿りついたな勇者たちよ…‥ん、今日はいつもの元気が無いな?』
「もうすぐ中間テストの時期だから、早く帰って勉強しないと」
『お主、まさか教師ではなく生徒となっておるのか……』
……オレの苦悩は続く。
(;´・ω・)「これはテンプレでお馴染みの学生勇者様のお話ですか?」
( ゜Д゜)「身体は中学生でも頭の中身は小学生の勇者だがや……」
これまでの戦績
1勝14敗(不戦敗12・完封負け2)
1引き分け・無効試合5




