第20話 規格無双
オレの左手には龍の形をした痣がある。それは決してただの痣ではなく異世界を司る黒龍の化身と魂の契約を結んだ時に刻まれたものだ。
あれはオレが厨……中二の時に交通事故に遭い生死の境を彷徨った(気になっている)時に異世界の龍神がオレの生命を惜しんで救ってくれた証で、あの時に異世界への転生を垣間見た(ような気がしている)オレは何時向うの世界へ再召喚されても困らないようにと、こちらの世界の知識を学び続ける宿命を負っている。
さて、前回の検証では製造したネジ山が上手く噛み合わず、銃身の尾底部分の強度が不足して発砲した際に火薬の威力によって暴発してしまうといった事故が予想された。これは製造されたネジの山形にバラツキが出て上手く噛み合わなかった事が原因だった。
そこで今回は部品の規格化について考えてみようと思う。
――そう、工業規格というヤツだ。
21世紀の現在では世界中の国毎に規格があり、それらを統合しようとガンバっているISO規格といった世界共通の規格も作られようとしている。
この決められた基準を皆が守る事で別の工場で製作されたイロイロな部品や部材を組み合わせて製品を作る事が可能となり、各社毎にその製品製造に特化する事で品質の向上に役立っている。それは”製品”全てを自社で作るより”部品”などの小さな品物を作る事によって製造機械などの投資額を減らす事も可能となり事業全体の安全性を高めていると言えよう。
だがオレがこれから行く異世界では、どの国にも統一された規格なんて持って無いだろうし下手をすれば市町村レベルでも別々に物を作っている可能性すらある。もしかすると鍛冶屋や工房ごとに大きさや数などが違っていても不思議では無いから先が思いやられるな。
先ずは大きさの基準から決めないと先に進めないのだが何か良い案は無いものだろうか。この身体一つで異世界へと召喚された時にスケールでも持っていれば役に立つとは思うのだが、それこそいつ召喚されるかも判らないのに常にスケールを持ち歩くなんてナンセンスすぎるだろう。
中には極小サイズでキーホルダーになっているスケールもあるが、家の鍵そのものを持っていない可能性も排除出来ないので決して油断は出来ない。せめてオレがいつも身につけている物の中から大きさや寸法の基準となる物でもあれば良いのだが……。
しかし、”持ってる”オレはこの問題もある閃きによって解決の糸口を見つける。
それは身の周りにある物の大きさや重さを計っていた時の事だった。財布の中にある硬貨を調べてみると一円玉の直径が20mmで厚さが1.5mm、そして重さが1gぴったりの数値だったのだ。この一円玉の厚さと重さを基準にすれば何とかなると考えたオレは規格の基準となる基本単位について考えた。
1マル(20mm)
1アツ(1.5mm)
1グラ(1g)
これも途中で発見したのだが、千円札の大きさがタテ76mm×150mmとなっていて、この150mmという長さが1アツの100倍となっていた。これを元により大きな数値を扱う為の単位についても考えた。
1マイ(150mm)=100アツ
1ロイ(900mm)=6マイ
1カイ(900m)=1000ロイ
1キロ=1000グラ
1トン=1000キロ
1メートルに近い方が理解し易いと考えて1サツの倍数で1mに近い数値としては900mmか1050mmという事になるが計算が楽な900mmを採用する。後はこの900mmを1ロイとして呼称しその1000倍単位も1カイと設定する。そして重さについてはそのまま”グラ”と”キロ”それと”トン”をそのまま使用する事にした。
ここまで決めれば細かな作業については1アツ(1.5mm)を基準にして、これの何分の1かを定めておけば日常で使用する品々の製造規格としては十分だろう。そしてこの数値を元に例えばネジなら山のピッチや深さ、それに角度なんかを予め決めておけば高精度のネジを作る事が可能となる。これで異世界へ行ったとしても心配事がまた一つ減った事になるから安心して旅立てる気がしてきた。
『よくぞここまで辿り着いたな勇者たちよ……その顔だと、まだ何か困って居る事でもあるのか?』
「規格化については成功した――と言っても良いだろう。ただ、こちらの世界の職人たちは勉強が嫌いと言うか……計算が苦手な者たちが多くてその必要性がイマイチ理解されないと言うか何というか……」
『では次は初等教育からやり直す必要があるな、ご苦労な事だ……』
……オレの苦悩は続く。
(;´・ω・)「前から思ってたんですが魔王様も異世界転生者ですよね?!」
( ゜Д゜)「しかも勇者よりかなり優秀だがや……」
これまでの戦績
1勝14敗(不戦敗12・完封負け2)
1引き分け・無効試合4




