第19話 螺子無双
オレの左手には龍の形をした痣がある。それは決してただの痣ではなく異世界を司る黒龍の化身と魂の契約を結んだ時に刻まれたものだ。
あれはオレが厨……中二の時に交通事故に遭い生死の境を彷徨った(気になっている)時に異世界の龍神がオレの生命を惜しんで救ってくれた証で、あの時に異世界への転生を垣間見た(ような気がしている)オレは何時向うの世界へ再召喚されても困らないようにと、こちらの世界の知識を学び続ける宿命を負っている。
さて、前回までの検証によって異世界でも産業革命を巻き起こせる事について一定程度の確証を得たと言っても良いだろう。先ずは魔力を運動エネルギーに変換する機器や火薬などの開発から始まり最後には漢のロマンである巨大ロボで宇宙を征服すところまでをとりあえずの目標としたい。
このように順風満帆とも言えるオレの異世界生活準備の進捗だが、その計画の細部までを思い描いてみると意外な所で躓きそうな予感がする。それはモーターにしろ鉄砲にしろそれら全てが工業製品であり、全ての製品は部品という更に小さな工業製品で構成されている。
その部品もネジやバネといったもっと小さい部材から出来ていて、実務レベルで生産可能となる為には更なる知識と技術の勉強が必要だと考える。要はそれらの部材についても製造方法を熟知しておかなければオレが異世界でインダストリー・レヴォューションを巻き起こす事が難しくなる。
――先ずはネジからでいいだろう。
ネジの起源を調べてみると古くは紀元前に揚水機として発明されていたらしい。また14世紀頃には螺子構造を利用した葡萄の圧搾機や活版印刷の技術にも用いられ、15世紀頃になるとかの有名なレオナルド・ダ・ビンチ氏の研究記録も残っている。(このレオナルド何某さんもオレは別世界からやって来た異世界の人だと思っている)
それにネジの製造技術が無ければ”オレTUEEE”をする為に必要な火縄銃の開発もままならず、火薬を爆発させた衝撃によって銃身の底が抜けてしまうといった事故が予想される。
このネジを大量に生産する為にはネジ専用の工作機械が必要だが、最初に製作する旋盤のネジ部品は勿論だが手作りになる。そして最初の旋盤を使用して次にもう少し加工精度の高い旋盤を作り、そのネジ部品を使用して更に精度の高い旋盤を……。この後も開発を続けて第5世代くらい後まで進化させれば明治維新の頃の製造技術には追いつけると思う。
こうして製造された旋盤を使用して次はダイスやタップの改良を行う一方で、ビス頭部の加工の為に圧造機械の開発も必要になるな。これらの技術を結集して量産された大量の鉄砲を配備すれば、魔族軍と互角以上に戦える見通しが立つだろう。
『よくぞここまで辿り着いたな勇者たちよ。ん、それは何時ぞやの新兵器か?』
「銃身もネジも完成したんだけど、どれも噛み合わせがイマイチで火薬の爆発に耐えられるかどうか自信が無くてな。でも、せっかくここまで作ったんだし勿体ないからこのまま銃剣として活用してみようかなって……」
『勇者よ、まさかネジなどの部品製造には規格化が必要だとは知らなかったのか?』
「・・・・・・」
……オレの苦悩は続く。
(;´・ω・)「前から思ってたんですが魔王様も異世界転生者っぽくないですか?!」
( ゜Д゜)「しかも勇者よりかなり優秀だがや……」
これまでの戦績
1勝13敗(不戦敗11・完封負け2)
1引き分け・無効試合4




