第60話「大好きだよ」
あれから一年。
フェイタル・ガーデンのメンバーは、今はバラバラになって活動している。
クルスは、閻魔大王にスカウトされて獄卒になった。アカリとアマーラのために、地獄への移住を決めたみたいだ。
レンレンは、精霊王になった。
ある日、月の女神が迎えにやって来て、月で本気の説教をされた。なぜか俺たちも一緒に。まあ、月に宇宙旅行は楽しかったから、良かったけどな。
レンレンは罰を与えられ、それが千年間の精霊王無料奉仕だった。要は、じっとしとけ、だそうだ。ああ、カエルはクビになった。今は、ハニー村でのんびりしている。
ズッ友のマリンも、レンレンについて行った。私も精霊になる、って精霊試験なるものを受けていたけど……精霊って、そんな感じでなるの?
本物の精霊のキアラとノッテは、本業の光マナネット商会とダークフォン商会が忙しいらしく、今は、そちらに掛かりきりだ。
忙しい理由は、閻魔大王がダークフォンを神界会議なるもので自慢した結果らしい。
マミは、ロザリーとの時空旅行から、戻ってない。
この間、メッセージを送ったら、『あーし、ケモミミエルフになったしー』って返信があって、写真も届いた。
マミのお母さんに、『ロザリーに預けてごめんなさい』って言ったら、『元気なら良いんです。私もケモミミと、蜂の触角がありますし』……理解あるお母さんで良かった。
ヤスオとミレイは、孤児院の運営を始めた。
元々、奴隷商会を潰した時に保護した孤児の面倒を、ヤスオがみていた。元聖女のミレイが混ざったことで、本格的に孤児院を運営している。
ユータは、誰かに酒を飲まされ、裸踊りをした。アステリアマークZの前で。猥褻罪で有罪になり、現在は地獄だ。
そんな感じだったが、今日は久しぶりに、フェイタル・ガーデンのメンバーが全員集まる。
アマーラのお誕生日会に、お呼ばれしているからだ。四回目の地獄だ。
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先に着いた俺とエマは、地獄の公園で時間を潰していた。
「ねえ、コーセー。ポイントは今、どのくらいかしら?」
エマに聞かれ、徳ポイントを確認する。現在、28ptだ。増えては減ってを繰り返している。なぜか、俺にはトラブルが多いんだよ。
「……まあ、それなりにたまったよ。28ptも」
「100万ポイントは、まだまだね……もし、貯まったら、どうするの?」
「……どうするって?」
「私との結婚か、元の世界の十分間か、どっちを先にするの?」
あー、それは考えていなかったな。でも……。
「先に十分かな。またエマの所に戻って来れるんだろ?」
「ええ、ここに戻って来るわ」
「なら決まりだな。戻って、親に伝えて、スッキリしたら、エマに告白するよ」
エマが、潤んだ瞳で、嬉しそうに俺を見つめて言った。
「そうすると思ったわ。あなたを、ずっと観てきたんだもの。待ってるわね」
「ああ、約束だ。まずは、100万ポイント貯めないといけないけどな」
エマが「それもそうね」と笑い、俺もつられて笑った。
その後も、ひとしきり話した俺たちは、お誕生日会に向かった。
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「アマーラを離せ!!」
「こいつの……こいつのせいで、私は神界を、追放されたんだ。死以上の苦しみを与えて……」
お誕生日会場に着くと、変な奴がアマーラにナイフを押し付けていた。クルスが、震えるアカリを背に、対峙している。他の皆は、まだ到着していないみたいだ。
幸い、俺たちは扉の影に隠れて、見つかっていない。俺が後ろから変な奴を取り押さえに行こうとすると、エマから念話が入った。
『コーセー、ダメよ!! 堕天したみたいだけど、あれは創造神様に近い上級天使の、ベリアよ。今の私たちで勝てる相手じゃないわ』
『なっ、……』
『パパかママが来てくれれば、どうにかなるんだけど……ベリアが、この辺りに結界を張って、連絡が取れないわ』
エマも焦って、ダークフォンを操作している。それにしても、エマが勝てないと言う相手か。でも、逃げる訳にもいかない。このままじゃ、アマーラが……。
はぁ、どうするかねーって悩む時間は、無さそうだな。今にも殺されそうだ。
まさか使う時が来るなんてな。
『……エマ、さっきの約束。守れそうにない。だから、後悔しない様に、今言うよ』
『コーセー、急にどうしたのよ! 何をするつもり!?』
俺は、エマの言葉を無視して続けた。
『俺の気持ちを、ちゃんと伝えたいんだよ』
『急に何を言い出すのよ。私だって言ってない……』
『大好きだよ』
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---エマ視点---
私は、ずっとコーセーを観てきた。彼が、小さい頃から。
それは、私が見習い閻魔の仕事に嫌気がさして、地球に逃げ出した時のこと。
私には、もう一つの顔がある。地蔵菩薩。地球には、そんな私たちのための依り代が、たくさんある。そのうちの一つに、私は降り立った。
地球のきれいな夜空が見たくて、山にある依り代まで来たのに……まさかの雨。最悪だ。泣けてくる。
でも、あの子が……コーセーが来た。
この依り代の近くに、両親とキャンプに来ていたらしい。コーセーのお父さんが言う。
『お地蔵さんに傘なんか差してあげて、雨をやませてくださいってお願いするのか?』
『パパ、違うよ』
『国語の教科書に書いてある話を、真似したかったのよね』
『ママ、そんなお話、知らないよ。何か、このお地蔵さんが、泣いてるように見えたから……』
嘘は言っていなかった。何で分かるのよ。
『だって、せっかくキャンプ来たのに、雨なんだもん。僕も悲しいから。だから、僕が一緒に、お地蔵さんと泣いてあげようと思って』
『コーセーは、バカだなあ』
夜空にだって負けないくらいの、すっごく綺麗な魂だった。
それから私は、コーセーから目が離せなくなった。神眼って便利ね。
程なくして、コーセーは地獄にやってきた。彼を蜂に転生させたけど……嘘をついた私まで、地獄から追放され、蜂にされた。ママは厳しい。
それから、ずっと一緒に過ごしてきたコーセーが、この状況で、何か良くない事をしようとしている。
ピンクの蜂の姿に戻ったコーセーを、捕まえようと手を伸ばしたけれど、躱された。
お願い。パパ、ママ、助けて。
願いも虚しく、コーセーが、ベリアに向かって行った。勝てっこない。
これが、言えなかった私への罰なの?
「一撃絶命ワンプッシュ・デッド!!」
《ピコーン! 自身の魂を代償に、他者の生命を救いました。救済措置として、魂の消滅をキャンセルします》
え? もしかして、助かった!?
《ピコーン! 堕天使ベリアの討伐を確認。徳ポイント120万ptを獲得しました》
よし、キタキタキター!!
《ピコーン! 徳ポイント1,000,000pt達成を確認》
《ピコーン! 現世への転移、開始します。制限時間:十分》
え!? いきなり戻るの!? ちょっ、まっ――。
俺は、意識を手放した。




