第59話「バカばっかりだ。」
---ロザリー視点---
「時空旅行、やっぱ楽しいー」
マミを誘って良かった。研究がだいぶ捗る。モーリスと研究していた頃と比べると、雲泥の差だ。
この間、アルに、あいつらの賞を取り消せと言ったら、「わしが死んだ後のことだし、知らんよ」と言われた。「ああ、でも、わしがロザリーにノーベル賞をあげる」と、マミと作った折り紙の星を渡された時は、アルを星にしようとしてしまった。マリーに止められたけど。
「ねー、ロザリーっち。そういえば、出発前にコーセーっちと何話してたの?」
思い出してムカムカしていると、マミに話しかけられた。
「あー、コーセーに『死ぬ前に連れて行こうか?』と聞いたんだよ。それが今の目的だって言ってたからな。合理的だろ」
「コーセーっち、断ったでしょ?」
「『それも有りなのかもな』って言われたよ。これは断られたのか?」
日本人は、どうして分かりにくい表現をするんだ? 普通に断れば良いものを。
断る理由も分からないが。無条件でやり直せるのだから。
「コーセーっちらしいね。あーしは好きだなー。そういう不器用なところ」
不合理だ。まあ、私も不器用なアルが好きなのだから、そんなものか。
「マミ! 次は、ネッティー、リーゼ、エイダを迎えにいくぞ」
「うーん、誰か分かんないけど、オー!」
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---誰か視点---
「俺の子なのに、なんでこんな簡単なことが出来ないんだ!」
父は、いつも怒っていた。
昨日も。
一昨日も。
去年も。
その前も。
ずっと。
最後に見た父の笑顔を、覚えていない。
そもそも、笑ったことあるのかな。
もちろん、今日も怒ってた。
自分の中の何かが、はじける音がした。
「……もういい」
そう言って、家を出た。
たどり着いた場所は、僕には天国だった。
皆が、褒めてくれる。称えてくれる。
僕を、見てくれる。
そう、天国だったのに……。
今いるのは、地獄だ。
「判決! 堕天した経緯には、情状酌量の……」
元婚約者のお父さんが、僕に判決を下す。
「……よって、天使の資格を剥奪し……転生することを罰とする。異議は認めない。以上、閉廷」
異界の門が開かれ、閻魔大王が近づいてきて、門に落とされた。
意識を失う直前、
「次は愛してもらえるさ」
そう聞こえた気がした。
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---コーセー視点---
俺は今、三度目の地獄に来ている。
アカリが里帰りして出産したからだ。お祝いに駆けつけるためには、地獄に来るしかなかった。そう何度も来たい場所じゃないんだけどな。
ただ、一つだけ解せないことがあった。
「あっ、パパー? オレオレ! アカリとクルスのお祝いに行きたいから、迎えに来て〜」
『ブチッ! ……あー、もちろん迎えに行くよー』
そう、閻魔大王に電話したのだ。快く引き受けてくれた。転送ゲートが開いて、皆が先に転送され、最後が俺の番だった。なのに、行く手を阻む死神さん。どいてくんない?
「コーセー様は、特別な招待をと、部長より賜っております」
「は?」
そう言うと、死神のハーベスターが、俺を目掛けて振り下ろされた。
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「むくれた顔してたら、赤ちゃん泣いちゃうわ」
「キャッ、キャッ」
「そうだよな」
クルスとアカリの生まれたての子を見ていると、怒りも収まるな。マジで可愛い。
「名前は決めたのか」
「ああ、アマーラ。アマーラだ」
「愛される子って意味っす。クルスと二人で、いっぱい愛でるっす」
クルスが名前を、アカリが由来を、そう答えてくれた。
アマーラを見つめる二人の優しい笑顔は、なぜか妙に懐かしかった。
「あら、とっても良い魂ね」
エマが、アマーラを抱っこさせてもらいながら呟いた。
さすが元閻魔様だ。そんなことが分かるんだな。
……俺の魂は、エマにはどう見えているんだろう。
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---ヤスオ視点---
妹だと思ってたんだがなあ。何で手を繋いでるんだろうなあ。
「何考えているんですか? 早くしないと始まっちゃいますよ! 『三千年越しの恋』!」
コーセーとエマに勧められ、俺たちは映画を観に来ていた。
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こうなったのは、地獄にクルスとアカリの子供、アマーラを皆で見に行った時のことだった。
「へえ、地獄にも産婦人科ってあるんだな」
俺が独り言のように呟くと、前を歩いていたエマが、振り向いた。
「ヤスオ。地獄にはコンビニもあるし、産婦人科だってあるわ。無いのは葬儀場くらいよ」
え、何? その地獄ギャグ。エマの隣で、コーセーがツボってるんだが。
「あっ、ママ」
「あなた達も来たのね。私も今行ってきたとこよ。可愛かったわ」
オシリア様がやって来た。
そして、俺の隣にいたミレイが「初めまして」と挨拶をしたのだが……。
「ああ、あなたがミレイちゃんね。エマから聞いてるわよ。幼なじみと一緒にいたくて魔王になるバカだって。でも、素敵ね」
そう言って、俺の方を向き、
「……あら? あなた、気づいてないふりをしているの? ダメよ。早く言いなさい。夫に言って、舌を引っこ抜くわよ」
何言ってくれてんだ、このオバサ……。
ゴンッ!!
あぁ、オシリア様、心読めるんだった。そこで、意識が途切れた。
そして、目を開けると、ミレイが俺を覗き込んでいた。膝枕をされているらしい。
「気付いてたなら言いなさいよ」
ミレイが、顔を赤くしながら、怒ったように、でも笑顔で言ってくる。
「お前も言えよ。でも、歓迎会でブスって言ったのは、謝るわ」
「フフフ、バーカ」
「ああ、バカだよ。お前に気づいてることも、自分の気持ちも、言えなかったからな」
ミレイが、今度は小さく「バカ」と呟いた。
ミレイも俺も、顔を真っ赤にして、お互い目を背けた。
目を背けた先では、ヒューヒューと茶化し、エマにゲンコツされるコーセーがいた。
バカばっかりだ。
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ミレイが、映画を観ながら泣いている。
あいつらも、報われるといいな。




