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親より先に死んだ俺。異世界で徳を積んで無双したい【改稿版】  作者: 田舎浪漫


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第47話「立派な趣味だ。」



---レンレン視点---


「私がいない間に、この国も、ずいぶん変わったのねぇん。ねぇマリン、私ちょっと用事があるの。一人で諜報活動をお願いしてもいいかしらん?」


「いいわよ。私は私で動くわ」


 天空国家スカイに降り立ってすぐ、二人は別行動を取った。


--------------------------------


 レンレンが向かったのは、王都から離れた、見晴らしの良い小さな丘。


 そこには、一基の墓が、静かに佇んでいる。


 墓前に立つレンレンは、いつもの魔法少女姿ではなかった。建国当時、初代国王として即位した際に身にまとっていた、紋付袴の正装である。ピンク色だった髪とヒゲは、黒に戻っていた。


「……ただいま、サラ」


 墓前に立ち、静かに頭を下げた。


「ここに来るのも久しぶりだな」


 雲海の向こうに沈む夕日を見つめ、懐かしむように続ける。


「お前が死んでから……もう五千三百年だ。ここから見える景色も、ずいぶん変わっただろ?」


 レンレンは、墓石に語りかけるように、ゆっくりと言葉を継いだ。


「あの頃の俺は、精霊界を追い出されて、地上で暴れてばかりだった。そこに、人間どもが勇者を送り込んできたな。異世界から召喚された、パーティーだった」


 小さく、鼻で笑う。


「あっさり返り討ちにしてやったが……あの勇者は、お前を置いていきやがった」


 拳を、ゆるく握る。


「勇者に置き去りにされたってのに、お前は、泣きもしなかったな。暴れる俺を、真正面から叱りつけて」


 懐かしむように、目を細める。


「気付いたら、お前の前でだけは、俺は暴れなくなっていた。……それで、いつの間にか、二人でいるのが当たり前になっていた」


 風が、袴の裾を揺らした。


「お前を背中に乗せて、この浮島に来た日。あれが、最初だったな」


 ドラゴンの姿で風を切って飛び、何もない空の島で語り合った時間。


「……楽しかったな」


 結婚し、はみだし者ばかりの村を地上に作り、息子も生まれた。


「……なのに、お前は先に逝ったな。息子を……俺を置いて」


 救えなかった後悔が、レンレンの頭をよぎる。拳が震える。


「この島を墓にしたのは、誰にも荒らされたくなかったからだ。お前が好きだった場所を、守りたかった」


 空を見上げ、静かに息を吐く。


「だから国を作った。天空国家スカイ。全部……お前のためだ」


 しばしの沈黙。


 そして、絞り出すように呟いた。


「……俺の命は、いつ終わるんだろうな」


 その声は、普段の軽薄な調子ではなかった。


「いつになったら……お前のいる場所に行けるんだろうか」


 一筋の涙が、頬を伝う。


 その時、背後に微かな気配を感じ取った。


「――誰だ」


 殺気を込めて振り返ると、そこに立っていたのはマリンだった。


「……ごめんなさい」


「……ずっと聞いてたのか」


 マリンは、小さく頷く。


「……そうか」


 レンレンは、深く息を吐いた。


「聞きたいことがあるんだろ?」


「……ええ」


 マリンは一拍置いて、問いかけた。


「どうして、普段……女装なんてしているの? 今のあなた、すごく素敵よ?」


 レンレンは、しばらく黙っていた。


「……息子のためだった」


「息子?」


「サラが死んでから、あいつは夜泣きが酷くてな。泣いて、泣いて、眠れなかった」


 苦笑が浮かぶ。


「お前らがタイムマシンで来て、マミの薬で俺は変になっただろ? その時、偶然、魔法少女の格好を見た息子が、サラが死んでから初めて笑ったんだ。夜泣きも止まった」


 マリンは、言葉を失った。


「薬の効果が切れて正気に戻って、でも、この格好をやめたら、また息子は泣き出してな……。それに、独身になった俺を狙って、王妃の座を狙う、権力欲にまみれた連中も増えていた。この格好は、色んな意味で都合が良かったんだ」


 肩をすくめて、いつもの調子を少しだけ取り戻す。


「気付いたら、やめられなくなっていた。今じゃ、立派な趣味だ」


「……じゃあ、なぜヒゲは剃らないの?」


「サラが、俺のヒゲを好きだと言ったからな」


 即答だった。


 五千三百年経っても、たった一言の「好き」を守り続けている。


 重い沈黙が、二人を包む。


 やがて、レンレンは静かに立ち上がった。


「行きましょう。息子に会わせるわん」

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