↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親より先に死んだ俺【改稿版】  作者: 田舎浪漫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/55

第43話「うん。分かった分かった」



「話を伺いましょう! 辺境伯殿?」


「わざとらしい、下手な敬語はやめろ」


 俺が茶化すように言うと、ヤスオは顔をしかめ、「いいから真面目に聞け」とユータに目配せをした。


「私から説明しましょう。あなた達、S級冒険者フェイタル・ガーデンに、アグロニア王国のヴォルド・ルクス・アグロニア23世国王陛下から、直々に指名依頼がありました。依頼内容は、魔王を討伐する異世界勇者のサポートです。魔王討伐の監督責任者として、辺境伯でS級冒険者、そして剣聖の肩書きを持つヤスオも同行します。この依頼、受けますか?」


 へー。この世界に転生してだいぶ経つけど、この国の名前、初めて聞いたわ。


 しかし、異世界勇者ねぇ。


「皆、この依頼、受けていいか?」


--------------------------------


 依頼を受けることを決めた翌日、俺たちは早速、王城に呼ばれた。


「いいか、一応、粗相はするなよ。相手はプライドだけは高いが、この国の王だ。……まあ、俺にとっては、酒を奢らせる相手にすぎんがな」


 ヤスオがそう言いながら、俺たちを先導する。


 俺は人化して、ピンク色の髪に、腰には刀。エマはラフな洋装で、銀髪を靡かせている。妖艶な空気を纏うマリンは、いつもの黒いイブニングドレス。


 そして、ヒゲを生やした魔法少女のレンレン。最近はあまり憑依をしなくなった、ふわふわ浮くキアラとノッテ。マミは、茶髪にピンクのメッシュを入れた、一昔前のギャル姿。


 先頭を行くヤスオは、辺境伯のくせに酒瓶を持ち、「あ、ここ禁酒だっけ? まぁいいか」とフラフラ歩いている。


 そして、謁見の間に足を踏み入れた。


「……フン。これが辺境伯の推挙した冒険者か。金に汚い冒険者よ、余のために尽くせよ」


 玉座に座るヴォルド・ルクス・アグロニア23世は、こちらを一瞥するなり、鼻で笑った。周りにいる貴族たちも、俺たちを見てクスクスと嘲笑する。


 かなりイラッときたが、俺の視線は、国王よりも、国王の左右に並ぶ集団に釘付けになった。


「……え、マジ? あいつら、コスプレ集団か何か?」


「男いらなくね?」


「Sランク冒険者のパーティーとか言ってたから期待してたのに。あのピンク頭のリーダー、なんか弱そうじゃね?」


「俺たちのほうがよっぽど強いだろ。勇者だし」


 制服姿の男女、計30人。


 日本から召喚された、異世界勇者たちだ。彼らの目は、期待と不安、そして「自分たちは選ばれた特別な主人公だ」という慢心に満ちていた。


 彼らは、俺たちをゲームのNPCくらいにしか見えないのだろう。


 金髪のリーダー格らしい男子が、ドヤ顔で眩い聖剣を召喚してみせる。


「あのー、王様? 俺たち勇者っすよね? 最強スキルとかもらったんで、さっさと魔王倒しに行っていいっすか? 経験値稼ぎたいんで。あ、そこのイケメン気取ってるリーダー? は、雑用係としてなら使ってやってもいいっすよ。女は、俺たちのお相手でもしてもらおうかな。あー、ヒゲの化け物とふわふわしてる幽霊は、チェンジで」


「えー、委員長、あんなケバイ女や年増がいいの? なんかペチャパイの子もいるしー。私のほうが可愛いし〜」


 あーあ。言っちゃった。慢心って、怖いね。


「……ねえ、コーセー。もういいかしら」


 エマの額に、青筋が浮かんでいる。


 今のエマや皆を止める? それは、自殺と同義だ。


 俺は、首を縦に振った。


「キアラ、ノッテ、マリン、レンレン、マミ……教育的指導の時間よ」


「「任せて、お姉様! 馬鹿どもに裁きを!」」


 まず動いたのは、精霊の二人だった。キアラが魔力を爆発させ、最上階にある謁見の間の天井と壁を、豪快にぶち壊す。


「なんちゃら王様ー、修繕費は辺境伯に請求をー」


 俺が手を挙げてそう言うと、ヤスオの肩が、ぴくりと動いた。


「動かないでねぇ」


 続いてノッテが闇魔法を展開した。逃げようとする近衛兵や貴族たちを、影の手で、一瞬にして拘束する。


「なっ……何事だ! 衛兵! 衛兵!!」


 なんちゃら王が叫ぶが、その横には、いつの間にかマリンが立っていた。


「陛下、あまり動くと……手元が狂いますわよ?」


 妖艶に微笑むマリンのナイフが、王の首筋を撫でる。少し血が滲むくらいの、絶妙な斬撃。王は青ざめて失禁した。


「なんちゃら王様、労災入ってますかー」


 俺は、一応聞いてみた。答えはない。


「いやぁん、若い男の子がいっぱい!」


 レンレンが、猛烈な勢いで高校生男子たちに突撃した。


「ちょっと! やめろ! くるな!!」


「愛のジョリジョリよぉぉん!!」


 抱きつかれ、頬に思い切りヒゲを擦りつけられた男子高校生たちが、阿鼻叫喚の叫びと共に、次々と崩れ落ちていく。


「ヒゲが! ヒゲがぁぁぁ!」


「痛い痛い痛い! ジョリジョリする!!」


「よかったねー、愛してもらえたねー」


 俺は、崩れ落ちた男子たちに、心を込めて拍手を送った。


「ペチャパイ? へー。そう。あーしのことかな? へー。ウケる。へー。あーしがペチャパイかあ。うん。分かった分かった」


 あ、ヤバい。マミが一番きれてるわ。


 マミが女子高生の集団に、不思議なガスを放出した。それを吸った女子高生たちは、一瞬でレンレンみたいになった。


「「「いやぁぁぁ! 私の顔がぁぁぁ!!」」」


「大丈夫だよー。効果は12時間だからー」


 マミは、にこにこしている。


「レンレン増産計画、続いてたのかーい!!」


 俺のツッコミは、悲鳴にかき消された。


「……勇者の聖剣召喚ね、ホイッ」


 酒を煽りながら歩み寄ったヤスオが、金髪リーダーの構える聖剣を、手刀でバキィッ! と粉砕した。


「なっ……俺の聖剣が……!?」


「いいか、小僧ども。そして金づ……陛下」


 ヤスオが千鳥足で彼らを見下ろし、説教臭く言い放つ。


「お前らの『チート』なんてなぁ、この連中の前じゃ『ままごと』なんだよ。陛下も陛下だ、こんなガキに世界が救えると思ってんのか? 酒の飲み過ぎで、頭が腐ったか?」


 ガキ、か。


 こいつらにも、帰りを待ってる親がいるんだよな。


 俺は、床にへたり込む彼らを見ながら、ふと思った。


--------------------------------


 風通しの良くなった謁見の間。玉座には、エマがふんぞり返っている。俺たちはその側に並び立ち、前には、王、貴族、兵、異世界勇者の全員が、正座をして、ビクビクしながらこちらを見ていた。


「……さあ、コーセー。話を進めて」


 満足げなエマに促され、俺は口を開く。


「反省した?」


「なぜ、余が反省せねば……」


「エマ、女王やってみる?」


「いいわね〜。私が女王になったら、こいつらどうしようかなー?」


 エマと寸劇をしていると、なんちゃら王が、慌てて頭を下げた。


「大変、申し訳ございませんでした!」


「うんうん、それで、よろしい」


《ピコーン! 説明は必要ありませんよね? △50,000ポイント》


 

 あっ、やり過ぎた。



徳ポイント:△230,322ポイント

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。