第33話「乾くとマジ最強」
うーん。カオスってんなあ。このままでは色んな意味で話が進まないので俺は状況を整理することにした。
「はい、皆聞いてくれー。これから第1回カオス収束会議をしまーす。異議がある人は?はい無い様なのでこのまま進めたいと思います。まずは誰かホワイトボードー、机、椅子持ってる人?」
「ありますわ」
俺がちょっとだけノリで聞いてみると、ノッテが経営会議セットがあると、収納魔法から黒板、机、椅子を取り出し会議室さながらに並べ始めた。マミも皆にお茶を淹れてくれて会議の準備が整ったところで、俺は話を切り出した。
「よし、始めるぞ。まず、精霊王。あんたは何しに来たんだ? 過去と未来の精霊に何か用事があったのか?ウシガエルの姿は趣味でやってるのか?話しにくいから人の姿を…」
「無礼な! 我はもとよりウシガエルだ。ここに来たのは、かつて我が永久追放した破壊の精霊の気配を感じたからだ。精霊王としての仕事だ!」
「なるほどな。レンレンが原因か。俺達は用事がすんだらすぐ出て行くから今は見逃してくれ。それと、過去と未来の精霊が関わってる問題が今発生してるから、出来れば精霊王にも手伝って欲しいんだが?」
「無理だな、我にはそんな力は無い。」
精霊王なのに力が無い?俺の疑問はエマがキアラとノッテに聞いてくれたので、すぐに理由が分かった。
「キアラ、ノッテ?どういうことかしら?」
「お姉様。前精霊王が逝った時に、誰も精霊王をやりたくなくて、暇そうなカエルにやらせる?みたいなノリで精霊選挙で決まりました。」
「本当に元はただのカエルですね。精霊王に指名されて、寿命が無くなる存在進化はしたみたいですが」
は?俺が呆れて隣を見ると、レンレンが髭を弄りながら言う。
「ただのカエルなのに私に出ていけってうるさかったわねぇん。まあうるさいのが嫌で私は本当に精霊界を出たんだけどねぇん」
「破壊の精霊なんだから、力で黙らせれば良かったんじゃないか?」
「コーセーきゅん。そんなことしたら私が精霊王になっちゃうじゃない。当時はそれが嫌だったのよん。まぁ今はそれでも良いかも知れないわねぇん」
「ひっ、相変わらず話の通じぬ破壊の権化め……! 我はお前に、屈しないぞ」
なんか、精霊王が不憫に思えてきた。
「よし分かった! 2人の因縁は、今はどうでもいい。……レンレン、精霊王」
俺は神殿の裏手にある、水が下から上へと逆流している奇妙な滝がある川を指差した。
「2人の問題は2人で解決してくれ。あそこでじっくり話し合ってこい。レンレン勢いで殺すなよ」
そう告げるとレンレンは精霊王の首根っこをひょいと摘み上げた。精霊王は本日3度目の退場だ。もう戻ってくるなよ。
「はぁい、お散歩ねぇん。美味しく焼ける方法でも語り合いましょうかぁん」
不穏な独り言を漏らしながら去っていくレンレンを見送り(判定さんはセーフだったことに安堵し)、俺は大きく息を吐き、マミを振り返った。
「次は、マミ。そっちのデロリアンだが……直ったのか?」
「あ、コーセーっち! 見て見て、あーしの手にかかればこんなの余裕っしょ! バッチリ直ったしー!」
マミがジャジャーンと効果音を口で言いながら指差したサイドミラー。そこには、白くて粘り気のある、見たことある謎の塊が山盛りに塗りたくられている。
「……マミ。これ、何でくっつけたんだ? 錬金術使ったのか?」
「え? ご、ご飯粒だけど? これ、乾くとマジ最強だから! 」
俺はこめかみを押さえた。マミのポジティブさは時に凶器になる。
「よし、俺は何も聞いてない。次だ」
だが、今はそれ以上に深刻な問題が目の前に転がっているのだ。俺は視線を、マリンがチラつかせている銃に怯えブルブル震えている2人組に向けた。
「マリン、一旦銃をしまえ。……そこの、タイムパトロールの2人。あんたらの事情を、包み隠さず話してもらおうか」
マリンが静かに、そして名残惜しそうに銃をしまい、俺の背後に立った。恐怖から解放された二人は、ホッとした様子で話しだした。
「あ、ありがとうございます……本当に殺されるかと……」
「で、あんたらは何しにここに来たんだ? 殺気を向けて来た理由は?」
俺が問いかけると、メガネのほうが答える。
「実は……私たちは、神界の時空管理局から派遣された捜査官です。今回の目的は、過去と未来を司る二人の精霊が、時空旅行法に違反した疑いを掴み、その強制捜査にきたんです」
「 過去と未来の精霊は具体的に何をしたのかしら?」
エマが身を乗り出して尋ねる。
「今、神界を騒がしている時空旅行をしている集団に手を貸してる証拠があったんです。……ですが、私たちが神殿に踏み込んだ時には、既にもぬけの殻で……」
「殺気を向けた理由は何かしら?」
マリンも二人に尋ねる。
「我々のタイムパトロールカーのサイドミラーが壊されていたので……」
「あ、それはごめんなさい。でもあーしが、ばっちり直したよ」
「……ねえ、コーセー。これ、笑い事じゃないわよ」
エマが、いつになく真剣な顔で俺を見た。
「過去と未来の精霊が、ロザリー達と一緒に時空の彼方に消えた。もし、精霊の力を使って歴史の根幹をいじくり回したら……」
うんヤバいだろうなぁ。
「なあ、時空旅行をしている集団を追う方法はあるのか?俺達はその手段を探しにここに来たんだが…」
「おー、もしや手伝って頂けるのですか?それならこのタイムパトロールカーで追えます。ただ…」
「ただ?」
「二人乗りです…」
だよな。知ってた!デロリアンは二人乗りだからこそ、粋なんだ。とはいえだ、
「マミ。何とならないか?」
「あー、コーセーっち!あーしが作った改良版の飴を舐めたら皆乗れるよ〜」
「マミ、その飴の効果は?」
「12時間、強制的に10分の1サイズになれるよ〜2頭身の効果は消したんだ〜。歩きにくいし?」
エマに禁止されたのに隠れて作ってたな。だが、今回はでかした。
「禁止していたはずだけど…今回は目を瞑るわ」
すまん。エマ。俺は見た時からデロリアンに乗りたかったんだ。例え飴を舐めたとしてもな。
「道? 我々が向かう先に道なんて必要ないさ」
「コーセー。バカなこと言ってないで行くわよ」
あっはい。スイマセン。
こうして、俺たちは時空旅行に旅立った。




