第2話「一蓮托生」
「……嘘じゃろ、わしが蜂? の、の、Noooo――っ!」
「……うるせえ。俺だって蜂なんだよ。しかもピンク色の蜂ってなんだよ。ファンシーすぎて死ぬ!」
異世界転送ゲートに吸い込まれた俺たちは、必死に現状把握に努めていた。
森の切れ目にある湖のほとり。鏡のように静かな水面に映る自分たちの姿を見て、俺たちは絶叫した。
「わしの、わしの美しい和服が……! 縞々の毛むくじゃらになっておる! しかもなんじゃこの腹は、膨らみすぎじゃ! 何でわしまで蜂になってるんじゃ」
「あんたはまだいいだろ。体が少し蜂寄りになっただけで、美人な顔のままだし! 俺なんか完全に蜂だぞ。小型犬サイズでピンクだぞ。モンスター確定じゃん」
俺が水際でもがいていると、閻魔様が、ブブンッと羽を震わせて俺を見下ろしてきた。
「まあ慌てても仕方ないか。じゃが、わしは女王蜂。貴様は働き蜂じゃ。つまり主従関係もわしが上ということじゃな。苦しゅうない、早くあっちの花から蜜を吸うてきて献上するのじゃ」
「ざっけんな。 ニートは働いたら負けなんだよ。 そもそも閻魔のくせに何で一緒に落ちてるんだよ。それに、そんな身体で飛べるのかよ?」
閻魔が羽を動かし飛ぼうとする。が、地面より少し浮いただけ。
「……よいか、真の王は自ら飛ばぬもの。配下にすべてをさせるのじゃ。さあ幸成、貴様がわしを満足させよ」
「飛べねーのかよ! 誰が配下だ!てか閻魔様ならこの状況なんとか出来ねーのかよ」
「おお、そっ、そうじゃ。ステータス!」
やっぱりあるのか。閻魔様の前に異世界テンプレ、ステータス画面らしきものが表示された。蜂になったことは納得いかないが、テンプレのステータスを見れることには心が躍る。俺も唱えた!
「ステータス!」
……………
「うん?ステータス!」
……………
「ステータスオープン!」
……………
俺が何度言っても何もおこらない。
「出ねーのかよぉー!?」
「ププッ、ダサッ。貴様、ステータス画面すら出せぬのか。これだからニートは……」
閻魔が腹を抱えて笑いながら、自分の画面を俺の方へ向けてきた。
「ほれ、拝むがよい。わらわの神々しきステータスを。……ん? えっ?」
名前:エマ
種族:地獄のクイーンビー(堕ちた神)
職業:見習い閻魔(無断欠勤中)
称号:生真面目な愚か者、無断欠勤者
スキル:死者の裁き、神眼、徳ポイント管理、一蓮托生(効果:配下の徳ポイントを管理出来る。代償:死ぬ時は一緒)
配下:一匹
徳ポイント:283pt
「お前見習いだったんだなあ」
「今、ツッコむところそこじゃないじゃろー!?わし、無断欠勤扱いになってるんじゃぞー。ヤバいヤバいヤバい、また徳ポイントをペナルティでもっていかれたのじゃあー」
俺は騒ぐ閻魔をよそに、もう一度、閻魔のステータスを確認する。見習い、生真面目な愚か者ねー、こいつ落ちこぼれ系か。もうポンコツでいいな。……うん、これは?
「おい、ポンコツ閻魔」
閻魔様を呼ぶと、ポンコツに反応してこちらを睨んでくる。が、地獄にいた時の様な恐ろしい気配はない。ふふふ、これは反逆の狼煙を上げるチャンスだな。その為にもまずは確認が必要だ。
「なあポンコツ閻魔、1番下の配下リストの横に詳細マークついてるんだが俺のステータスみれるんじゃないか?」
「だれがポンコツじゃ。ええい、まあ良い。わしは今から地獄省に問い合わせをしなければならんから勝手に見とれ。ほれ」
閻魔様がそういうと、俺のステータス画面が表示された。
……………………………
「……おい、ポンコツ。見間違いじゃなきゃ、俺のステータスが不穏なものしか無いんだが?」
「おお、幸成! 素晴らしいのじゃ! 一撃絶命のスキル。それは神すら殺せる最強のスキルじゃぞ! ほれ、さっそくあそこの熊に試してくるのじゃ。それとなポンコツ呼びは辞めるのじゃ。わしの精神がけずれてくのじゃ。ワシのことはエマ様と呼ぶのじゃ」
「何?神すら殺せるだと。流石俺だ。俺の異世界無双ムフフな未来が視えてきた。って違うわー。そうじゃなくて、試す前にスキルの横にある詳細も見せてくれ。あとエマポン、その嘘くさい年寄り口調は辞めてくれ」
「エマポン…まあ有りよりの有りね。何か響きが可愛いし。じゃなくて、私これでも威厳口調検定3級持ってるのよ。嘘くさいって何よ!まあ、私も疲れるから普通に話すわね」
名前:ニート・コーセー
種族:地獄のキラービー
神罰により変異したユニークモンスター
職業:ニートな働き蜂
働いたらダメージ働かなくてもダメージを喰らう矛盾の職業
称号:親不孝者、エマの配下
スキル:一撃絶命ワンプッシュ・デッド(効果:お尻の毒針で刺した対象を、防御力・耐性無視で100%即死させる。代償:魂の消滅、蘇生不可)、
前借り(効果:徳ポイントを前借りしスキルを購入出来る。代償:トイチ。返済遅れは・・・)、
一蓮托生(効果:女王蜂のスキルを行使出来る。代償:死ぬ時は一緒)
徳ポイント:△1,000,000ポイント
あっぶねー、試し打ちなんかしたら、死んでたじゃねーか。てかさ、チートひとつも無いって何、なんなの?死ぬ時は一緒ってなんだよ!
「おい、エマポンさんや。何試させようとしちゃってくれてんの?俺消滅しちゃうよ」
「コーセー、私たち一蓮托生で頑張りましょうね」
うん?先ほどまで悪態をついていた閻魔様の様子がおかしい。これは何かあるな。
「……お前何か隠してるな?」
「ななな、なんのことかしら?」
「吐け」
「・・・」
「一撃絶命使っちゃうよ?」
「何でよ!そんなことしたらあなたも死んじゃうじゃない」
「なあ、地獄省への問い合わせはどうだった?」
「ギクッ!?」
「……」
「あーもう話します話します。だからその目やめて。怖いから!私が地獄勤務に戻るにはペナルティで徳ポイントを100万ポイント支払えって言われたの。私が貯めてたへそくりの30万ポイント持っていかれたから、私は残り70万ポイント。頑張りましょ」
「それ、俺関係ないじゃん」
「コーセー、私たちは一蓮托生よ。もちろん徳ポイントも。貴方はマイナス100万ポイントのスタート。目的を果たすには更に100万ポイントでしょ。だから、2人合わせてここから270万ポイント稼ぐだけよ。楽勝ね」
「……川で溺れている子を助けました。得られる徳ポイントは?」
「えー?10ポイントくらいかなあ?あっでも助けた子が徳ポイントいっぱい持ってる善人なら5ポイントくらい色つけてもらえるかな。うん、やっぱり楽勝よ」
「あーっ、楽勝じゃねーだろ!俺達は魔物なの!徳積むの大変なの。分かる?討伐対象なの!そもそも何で俺がお前の分まで払わないといけないんだよ」
「だって私たち一蓮托生だもの。ハッ!そんな細かい事よりコーセー、向こうから困ってる人の匂いがするわ。徳を積むチャンスよ。異世界での初仕事!行くわよ」
「あーもう、後でちゃんと説明しろよ」
納得はいかないが俺達は初仕事に向かうのだった。




