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親より先に死んだ俺【改稿版】  作者: 田舎浪漫


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第1話「人間一択です」

 改めて自己紹介をしよう。俺は二堂幸成。死だら異世界転生を夢みる32歳のエリートニートだった。名前と年齢以外に紹介する所も特に無いありふれた落ちこぼれだ。………以上自己紹介終わり。

 で、目の前で蟻か蜂で悩んでいる閻魔様だが―――

 異世界アニメオタクの俺としては、これについては異議を申し立てたくなる。

 閻魔様がどれだけ美人だろうと虫に転生させられるのは納得いかない。美人だからって何しても許されると思うなよ。

 テンプレの神様でないことさえ遺憾なのだが、それ以上に蟻か蜂って、頭沸いてんのか。そこは、ドラゴンだったり悪いスライムじゃなかったりあるだろう。虫じゃチート無双ハーレムする未来が見えないんだよ。

 という心の悪態を抑えながら、冷静を装い閻魔様に尋ねる。


「異議有り!人間一択です。蟻か蜂って。人権侵害です。閻魔様は馬鹿なんですか?」


 あっ、やべっ。ちょっとだけ心の悪態出ちゃった。


「うん?ああ貴様は、怠惰に生きてきたから徳ポイントがマイナス100万ポイントじゃからの。怠惰は大罪じゃ。人への輪廻は無理じゃな。無理というか虫じゃな。ププッ」


 カッチーン。


 人生ではじめて(まあ死んでるんだが)俺の頭にカッチーンという変な擬音が鳴り響く。これがキレるってやつか。まあ俺は夢みる少年32歳だから、心の声は出さんがな。

 しかし何とか虫以外の転生先をこのクソ閻魔に交渉しなければ。ここは大人な対応を見せるべきだろうと俺が考えをまとめていると――


「ああ、そうそう貴様の心の声聞こえるからな?クソ閻魔?ワシ、カッチーンきたぞ。ププッ」


「・・・」


「まあ良い。貴様が望む人への転生はすぐには無理じゃな。貴様の死は、不慮の事故や病気で死んだわけでも無い、怠惰が原因じゃからの。まあ虫の生を百回くらい繰り返せば犬や猫くらいにはなれるじゃろ」


 グフッ。


 人生ではじめて(まあ死んでるんだが)俺の頭にグフッという変な擬音が鳴り響く。これがダメージを食らうってやつか。デジャヴだな。

 違う違う、馬鹿な事を考えている場合じゃない。閻魔様と交渉せねば。


 「閻魔様。俺、親孝行したいんだ。やり直すチャンスが欲しいんだ」


 これは本音。


 「それが無理ならせめて、母ちゃんに出来なかったことを、誰かの幸せの為にこれからは生きていきたいんだ」


 これは建前。


「だから虫ではない、人に転生お願いしやす」


 これは願望。

 決まった。本音、建前、願望、何かの三段活用(テキトー)みたいな感じでこれはクソ閻魔の心に刺さるだろ。さあ俺を異世界に!俺にチートを!さあ、さあ!

 あーでも、ガチで母ちゃんとついでにオヤジに謝りたいなあ。


「貴様、そんなに地獄ツアーに招待されたいのじゃな?さっき心の声聞こえるって言ったばかりじゃが?」


「・・・」


 やべ、また読まれた。無心になろう。俺なら出来る。無心に、無心に。無心、無心、無心、虫、無心。

 はっ、一瞬虫になっちまった。俺が馬鹿なことを考えていると、閻魔様が続けて話しだした。


「が、無くもないぞ?」


 おっ!やはり俺の素晴らしい三段活用(テキトー)が刺さったのか。閻魔が可能性を示してきた。

 よし!ここは、畳み掛けるか。


「私を人として転生させて頂いた暁には、まず、世の為、人の為に、はた、は、はた、働こうと思う意識を持ち、」


「貴様、何地獄が好きじゃ?」


 クソ。また心の声読んだのか?血反吐を吐く思いで働くと言った俺の思いを返せ。

 そして俺の心の声よ。頼むからレジストしてくれ。死んでるはずの俺の命が危ない。クソ閻魔も勝手に人の心を読むな。読んでも既読スルーしろ。空気よ…

 俺がまた心の中で悪態をついてると、閻魔が無言でこちらを睨んでいるのに気づいてしまった。とりあえず謝っておこう。さーせん。さーせん。


「はあ、話がすすまん。貴様何も考えずに黙って聞くんじゃ」


「イエス、マム」


「まず最初に言っとくがの貴様をまた人へと転生させたり、人生のやり直しをさせることは出来ん。次の転生は蟻か蜂。これは決定事項じゃ」


 おいおい、思わせぶりかよ。やはり閻魔じゃ駄目か。神に会わせろー。チートもらってウハウハしたいんだよ俺は。


「人は学習する生き物じゃったはずじゃがの」


 やべっ。また心読まれてるやん。


「人は愚かな生き物です、マム」


「いいから最後まで聞け。儂は役職こそ閻魔じゃがお前が言う神と同格じゃ。じゃから貴様を異世界転生させることもできる。虫じゃがの」


 こいつ、人の心読めるくせにわかってねーな。虫が嫌なんだよ。虫が!アンダースタン?


「意味なーし。転生したくありませーん。お前が虫になれー」


 ガンッ!


 えっ殴られた?親にも殴られたことない……いやあるか。てか今の魂状態の俺に物理攻撃効くんだ。


「魂に響く拳骨じゃ」


 口は災いの元というが、俺の口のことだったのか。てかさ、


「いってぇぇ! 魂が物理的に凹んだわ! 訴えてやる、上司呼べ、上司!」


「騒ぐな、不届き者が。よいか。これより学習しない貴様に『特別救済措置』を提示してやる。感謝して聞くんじゃ」


 そう言いながら閻魔が赤い和服の袖を払うと、虚空にホログラムが浮かび上がった。


「貴様には、徳積みポイント制度を使わせてやろう。これはな、善行で徳を積めばポイントが貯まる。100万ポイント貯まれば、超特別に時間を巻き戻し、現世に『10分間』だけ帰してやろう。あーただ貴様はマイナススタートじゃがな」


「……10分? 謝罪動画かよ。短けぇよ!」


 短い、短いが心は揺れる。母ちゃんに謝りたい。どうしても。あっついでにオヤジにも。


「その10分で、謝るなり、親の肩を叩くなり、好きにするがよい。ただし――」


 閻魔がニヤリと、最高に性格の悪そうな笑みを浮かべた。


「貴様の転生先は、うーん、蜂か蟻か―――よし決めた。『蜂』じゃ。蜂に転生して徳を積み100万ポイント稼いでみせよ。ププッ」


「…… 無理だろ。俺、一生懸命花粉でも運ぶの? 働きバチになって善行をする? 結局ニートの次はブラック労働かよ! そもそも蜂の寿命短けーだろ。徳ポイント稼ぐ前にまた直ぐ死ぬじゃねぇか!」


「安心せよ、異世界転生させてやると言ったじゃろ」


「異世界転生?」


「本来なら地球の働き蜂なんじゃが、剣と魔法の異世界でキラー・ビーにしてやるのじゃ」


「……」


「どうした?貴様の望む異世界転生じゃぞ?喜べ!」


「………キラー・ビーってどう考えてもモンスターじゃねーか!!絶対討伐対象だろ。どうやって徳ポイントを稼ぐだよー」


「やかましい! モンスターでも異世界転生は異世界転生じゃ。 さあ、善は急げ、幸成(コウセイ)という名に免じて更生させてやるぞ。行ってくるのじゃ!」


 閻魔が手をかざすと、俺の前にアニメで見るような魔法陣が浮かんできた。そして、閻魔は机に身を乗り出し、俺を掴もうとした。 


 だが―――


「あ」


 足を絡ませた閻魔が転びそうになる。


「あわわわ、落ちる、落ちるのじゃ!?」


 閻魔が倒れ込んだ先は魔法陣がある。まあ、間違いなく異世界への転送ゲートだろう。

 ガシッ。閻魔の手が、俺の腕を掴む。


「え?ちょっ、クソ閻魔離せ! 心中とかお断りだ!」


「嫌じゃ! 貴様だけが行くんじゃあー」


 閻魔様の叫びを地獄に響かせながら、そのまま俺たち2人は魔法陣へと吸い込まれたのだった。

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