第28話「帰る場所」
「質問の答えだったね。何故、指名手配したかだったかな」
国王の声の裏にマリンが泣いている声がする。こんな時に、かけていい言葉を俺は知らない。顔を見ることも出来ない。情けない。
「マリンのしたことを私は怒っていないし、むしろ謝りたかったんだ」
「なおさら、指名手配はしなくても良かったんじゃないかしら…」
「エマさん。逃げたマリンを協定を結んだ国が捕まえてくれれば、マリンを連れ戻せると私は思ったんだ」
「逆効果ね」
バッサリとエマが切り捨てた。
「ああ、私が間違えていたよ。でも私はもう誰も失いたくなかったんだ!娘も!国民も!誰一人……でもそれはマリンが出ていって
から400年。マリンを長い時間、孤独にし傷つけていたと知ったのは最近だったんだ。すぐに指名手配を解除しようとしていた矢先にエルフフロンティアから連絡が来たんだ」
「最近知った?」
「私はずっとマリンのSNSのを見ていたんだ」
---マリン視点---
『愛の逃避行:145,328日目
初めて友達が出来た。7人も!
帰る場所の無かった私に帰る場所が出来たの。
もう、淋しい思いをしなくてすみそうね』
久々に長文で更新したわ。フフッ、私をパーティに誘ってくれる人…蜂なんて初めてね。
やっちゃった。あれから毎日楽しすぎて羽目を外しすぎちゃった。まさか捕まるなんて。あんなに気をつけていたのに…
だから帰って来たくなかったのよ。父はもっと聡明だったはずなのに…早く結界を壊さなきゃだめね。サトウ、どこにいるのよ。
まさか迎えに来てくれるなんて…凄く嬉しいけど恥ずかし過ぎるわ。
ヤスオだったのね。行かなきゃ。え?お母さんそんなに強かったの?
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ…お姉ちゃんは死んでなんかいない!嘘だと言ってよ。
『ピー』
え?急に私の中から何かが消えていった。
私は怒っていたはずなのに、それがなくなった?
あれ?あっ、あっ……ああ、そういうことね。結界は私のためでもあったんだ。
お姉ちゃんが死んだことを私は知ってた。壊れていたのは私だったのね…
私は流れる涙を止められ無かった。
「マリン」
私の名前を呼ぶ父の声。
「すまなかった」
何で謝るのよ。私は別に……
「あなた!マリンは怒ってなんていないの。今はその言葉じゃないわ」
お母さん…
「……マリン。おかえり。君が無事で良かった」
お母さんが私の手をそっと握ってくれた。
「……ただいま」
私の返事を聞いて父がハグをしてくれた。
「俺も疑問なんですけど、マリンが包丁を持って暴れた時に結界は反応しなかったんですか?」
あっ、コーセー。その質問は駄目よ!
「コーセーさん。この子に悪意なんて無かったからよ」
お母さん、やめて!
「この子ね。最初からお父さんにチョコレートを作ったのよ、私と一緒に。それを渡す前に食べられたから恥ずかしくなって暴れただけなのよ」
お父様、モジモジしないで!
「悪意は無かったから結界が反応しなかったということですか」
「ええ、その通りよ。この子昔から恥ずかしがり屋さんでね。なんて言ったかしら?サトウさんに聞いた……ええと」
「…もしかしてツンデレですか?」
コーセー覚えて起きなさいよ!
「そう、それよ!この子ツンデレなのよ。あの時はツンが出たみたいなの。それで、マリナの事もあったし、ほとぼり冷めるまで外の世界を見てきなさいって私が言ったんですけどね。まさか400年も帰って来ないなんて思わなかったわ」
それは、ごめんなさい。
私はもう逃げない。お姉ちゃんの死にも向き合うわ。
『愛の逃避行:145,358日目
ツンデレってなんだろう?
それにしても、最初からあったのね。私の帰る場所』




