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親より先に死んだ俺【改稿版】  作者: 田舎浪漫


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第26話「人魚姫」

---マリン視点---


 私は小さい頃から大好きな絵本があった。


 それは――――


■■■■■■■■■■


人魚姫


 青い海の底に、美しい声を持つ人魚姫が暮らしていました。15歳になったある日、海の上で嵐に遭った人間の王子さまを救い、一目で恋に落ちます。


「どうしても、もう一度王子さまに会いたい」


 人魚姫は海の魔女のところへ行き、美しい声と引き換えに、人間の足をもらいました。「もし王子さまが他の人と結婚したら、あなたは海の泡になって消えてしまうよ」という恐ろしい呪いとともに。


 陸に上がった人魚姫は、お城で王子さまと再会します。声は出せませんでしたが、誰よりも優しく寄り添いました。


 しかし、王子さまは別の国の姫を命の恩人だと勘違いし、その姫と結婚することになってしまいます。


 結婚式の夜、悲しむ人魚姫のもとに、人魚姫のお姉さんたちが現れて1本の短剣を渡しました。


「夜明けまでにこれで王子さまの胸を刺して!その血を足にかければ、人魚に戻って海へ帰れるわ!」


 人魚姫は眠る王子さまの枕元に立ち、短剣を構えます。しかし、愛する王子さまを刺すことはどうしてもできませんでした。


「王子さま、どうかお幸せに……」


 人魚姫は静かに短剣を海に投げ捨て、自らも冷たい波の間へと身を投げました。体はみるみるうちに白い泡へと変わってしまいました。


■■■■■■■■■■


 この物語は、異世界から来たという勇者と父が面会した時に聞いた、異世界の人魚の話を絵本にしたんだって。


 幼い私(100歳くらいかな?)を膝に乗せ何度も読んでくれた父は最後には必ずこう言ったわ。


「マリンは泡になったらダメだよ。異世界の人間も、この世界の人間も変わらないんだ。マリンは私に悲しい思いをさせないでおくれ」


 勇者と面会してから、父が行った事は2つある。


 1つがこの絵本。教訓として、この絵本を国中に広めたこと。


 もう1つが、国全体を悪意から守る結界を張ったこと。


 ただ、この結界にはどうしても許せない欠陥が1つあったわ。


 結界の効果は、悪意ある外部の者の侵入を拒むこと。そして次が問題。結界内で悪意を抱いら、その悪意だけが吸収されること。 


 元々結界内にいた国民を守る為に施された術式ね。


 この結界で国内での犯罪は無くなったわ。一見、とても良いことに見えるけど続きがあるの。悪意を抜かれた影響か分からないけど皆、2頭身の可愛い生き物になっていったのよ。


 父はおじゃーとか言うようになるし、兄も姉も似たようなものね。私は別世界に生まれ変わったんじゃないかと錯覚したわ。


 でもタコンヌ宰相は魔法抵抗が凄く強いらしく蛸のままだったの。私も体は2頭身になっちゃったけど何とか自我だけは保てたわ。


 宰相の案内で勇者が施した魔法陣に案内して貰えたわ。


 こんな結界ぶっ壊してやるって思ってたのに…無理ね。今の私じゃ壊せないわ。


 その後も色々あったけど、ある日父を刺してしまった。そんなつもりは無かったのに。


 近衛兵から逃げて、魔法陣のある隠し部屋に隠れて私は泣いた。味方が誰もいないように思えて。


 でもそこに母がやって来たわ。母も自我を保てていたの。凄く嬉しかったわ。


 私を見つけた母は、私をハグしてくれて言ったの。


「マリン。良い機会だわ。あなた外の国を見てきなさい。お父さんなら大丈夫よ。こっちは私が上手いことやっておくわ」


「お母さん……」


 私は母にしたがい国を捨て、冒険者になったわ。余計なことをした勇者は嫌いだけど、あの絵本は大好きだから…枕元に立ち短剣を構えるアサシンをジョブに選んだの。


 私ならあの場面でどうするかな。まだ愛しい人は見つけれていないけどね。


 とりあえず今は、勇者サトウを見つけて結界を解除させなきゃ。

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