第11話「ちょーふつーのスパイ」
ヤスオの野太い声が響き、次の瞬間には治療術師の女が地面に叩き伏せられていた。
「え?」
治療術士の女はキョトンと呆けていたが、状況を理解すると叫びだした。
「なっ、なにするのよ!? 離して!」
「見苦しいぜ。奴隷商の連絡員さんよぉ」
ヤスオが冷めた目で女を見下ろす。あえて泳がせていたスパイの確保。それは1ヶ月前から始まっていた。
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『なあ、ヤスオ。俺は奴隷商をブッ飛ばしに行く冒険者の協力者は5人って聞いてたんだが?』
俺がカーテンの隙間から窓の外を覗くと、小屋から少し離れた場所に6人の集団がいるのが見える。
「ああ、1人は冒険者ギルドの支部長だ」
なるほどね。奴隷商を大規模に潰すんだから、運営のトップも来るか。
『いやいやいや。ヤスオ。俺達が魔物だってバレたらマズいんじゃないか?』
「連れてくる前に言っただろ。守秘義務の契約を交わしてるって。まあ、お前らは俺の獣魔ってことにしているけどな。支部長以外はな」
『支部長以外?』
「あー、支部長には全部話したぜ。あいつは信用出来るから大丈夫だ。まあ、この前の魔石の件がバレて怒られたけどな」
『それって大丈夫なの?また降格するんじゃないの?』
「今回のクエストを成功させたらチャラだよ。それよりエマは鑑定使えるんだろ?あいつら見てみろよ」
ヤスオはあっけらかんと笑いながら、心配してるエマに答えた。
それにしても、見た目のインパクトが凄い気になってしゃーない。だが本能が見ては行けないといっている気がする。だが見ない訳にはいかないので、エマに鑑定を頼む。
「エマ、頼めるか?」
「そうね、見てみるわ」
エマが鑑定の結果を引きつった顔で俺だけに伝えてくる。念話を使っていないからヤスオに聞かれることも無いから安心だ。
名前:ユータ
性別:男
年齢:2568歳
種族:エルダードワーフ
職業:冒険者ギルドイーサ支部支部長、ドワーフの里相談役
称号:紳士を装うナルシスト、酒に嫌われし者、聖剣量産工場
スキル:速読速記、ゲコ(喜怒哀楽)鍛冶神の加護(鍛冶の匠)、 etc.
備考:秘密保持契約中
名前:クルス
性別:オス型
年齢:1999歳
種族:ホムンクルス(巨人族ベース)
職業:イーサ支部B級冒険者(重戦士)
称号:名も無き錬金術師の忘れ形見、自我を得た悲しきゴーレム、難攻不落の盾使い
スキル:豪腕、豪脚、大地神の加護(土魔法、重力魔法)、etc.
備考:秘密保持契約中、生命活動停止まであと1年
名前:マリン・ショーナン
性別:女
年齢:508歳
種族:マーメイド(エルフに偽装中)
職業:イーサ支部B級冒険者(斥候)、海底国家ショーナン第2王女
称号:大地に憧れる幼き少女、恋に恋する魔性の女、メンヘラアサシン
スキル:遠視、暗視、隠密、カモフラージュ、ナイーブなナイフ術、水神の加護(水魔法)、etc.
備考:秘密保持契約中、親子喧嘩で父親(国王)をぶっ刺して(軽傷)家出中(国際指名手配中)
名前:レンレン(愛称)
ニコタール・スカイ(本名)
性別:オネェさん
年齢:15763歳
種族:エンシェントドラゴン(人化中)
職業:イーサ支部B級冒険者(魔術師)、天空国家スカイ初代国王、闘神の眷族
称号:物理の魔法少女?、剃らない勇気、滾る男気、天空の守護者、破壊を司る大精霊
スキル:ファイア(物理摩擦熱)、エクスプロージョン(物理パンチ)、闘神の加護(漢は拳で語る)、etc.
備考:秘密保持契約中、レンレンの空中散歩チャンネル(登録者数82人)
名前:サルユキ
性別:オス
年齢:18歳
種族:猿(光と闇の精霊が憑依し猿の獣人に偽装中)
職業:イーサ支部B級冒険者(弓使い)
称号:精霊の依代、精霊のペット
スキル:言語翻訳
備考:秘密保持契約中
光の大精霊(光マナネット商会会長、光神の加護(光の精霊魔法))
闇の大精霊(ダークフォン商会会長、闇神の加護(闇の精霊魔法))
動画配信アプリマナネット開発者
名前:レオ(偽名)レオナ(本名)
性別:女
年齢:24歳
種族:人間
職業:イーサ支部B級冒険者(治療術師)、奴隷商会幹部
称号:堕ちた治癒術士、詐欺師、スパイ
スキル:ヒール
備考:
バシッ!
ヤスオに叩かれて正気に戻た。ヤバい情報が多すぎて俺は気を失いかけていたみたいだ。
どこから突っ込んで良いのかも分からん。エマも隣でポカーンとしているし。
「どうだ、見えたか?俺は鑑定は使えねーからな。確信はねーんだが、一人いるだろ?真っ黒な奴が」
多分、治療術士のことを言ってるんだろう。だが、今はどうでもいい。スパイかもしれないが一番まともだろ、こいつ。
『ああ、1人いるな。ちょーふつーのスパイが』
「やっぱりな。そいつは逆に利用するつもりで連れてきたんだよ」
『……ところで他の奴はどんな基準で参加してるんだ?』
「他の奴らか?支部長…ユータの推薦だな。今回、スキルを取ればS級にあげてもいいベテランの実力者達らしい。俺も今日会ったばかりだから詳しくはしらないが、まあそれなりに強いんじゃないか。あぁ、それとユータは昔なじみだから知ってるんだが俺とタイマンはれるぐらいには強いぜ?」
『……なあ、実は俺とエマの討伐隊ってことは無いよな?』
俺は思い切って、核心を聞いてみた。
「ワハハハ、何だそれ。強いって言っても俺からしたらユータ以外は赤ちゃんだ、赤ちゃん。お前達を討伐するなら、他の街のS級冒険者を何人か連れて来ないと無理だろうな」
『それを剣……いや蜂蜜酒に誓えるか?』
ヤスオは、本当にこいつらを知らないのか?こいつら全員、お前を瞬殺出来るくらいに強いと思うよ?俺とエマも瞬殺されるかもしれん。
「あぁ、蜂蜜酒に誓うぜ。心配するな。俺たちの目的は奴隷商を潰すことだろ」
『ああ、そうだな』
『ソウネ、ドレイショ、ブッツブシマショ』
何故かエマはカタコトになって戻ってきた。元とはいえ神がビビりすぎだろ。
まあ俺たちの討伐隊では無いことを今は良しとするか。もう、厄介事の未来が見える気がするけどな。
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その後のヤスオとユータの手際は完璧だった。スパイである治療術士にだけ、偽装した契約書にサインさせ、わざと情報が筒抜けになるように偽の作戦計画を立てたのだ。そして決行前夜、今の「かくほー!」に至る。
「さて、スパイから『偽の情報』を掴まされた奴隷商どもは、今頃ありもしない伏撃地点で首を長くして待っているはずだ」
拘束した治療術士を眠らせ、俺たちは作戦会議続けるのだった。




