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親より先に死んだ俺【改稿版】  作者: 田舎浪漫


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第9話「一本いっとく?」

「それにしてもヤスオには驚かされたわね」


「そうだなあ、まさかこの周辺の土地を全部買いとってくるなんてなぁ」


 作戦会議中にヤスオに聞かされた「この辺りの土地は俺のものだ」宣言。何処ぞのガキ大将が馬鹿なことを言ってると思ったが、契約書をみて驚いた。魔石のお陰で買い取れたらしい。


「でも丁度良かったわ。クエストが成功したら他にも奴隷として囚われている人達を連れてくるわけでしょ?」


「確かにな。それに、マジックバッグもだ。俺も欲しいな。今のところ使いみち無いけど」


 さらに驚かされたのが、ファンタジー御用達のマジックバッグだ。買い出しした物(3割お酒)が出てくる出てくる。そのお陰で簡易宿泊施設を俺たちが住みやすい拠点へと改築することが出来たのは有難かった。

 今街に出ているヤスオには新たにトールとマミの服や足りない布団などを頼んでいる。   

 そんなやり取りをしている俺とエマは、枯れたダンジョン内にいる。ヤスオとの約束を果たすために。


「なぁエマ。これ、本当に酒になるのか? まだ蜂蜜にすらなって無いんだが」


 俺は、ヤスオが街から調達してきた大きな木樽を前に途方に暮れていた。樽の中には、俺が死ぬ気で集めてきた花の蜜が入っている。只々汚い花の蜜が。なんか臭いし。


「だ、大丈夫よ。人類最古の酒なのよ? 適当に混ぜて置いとけば勝手に発酵して、極上の黄金色に変わる…はずよ!」


「その『はず』が怖いんだよ! エマは地獄のクイーンビーだろ? 女王蜂なら体から魔法の酵母とか出せないのかよ」


「失礼ね。女王蜂なのよ。ただの管理職なの。 現場の生産ラインのことは、工場の働き蜂が責任持ちなさいよ。だいたい、蜂蜜酒の言い出しっぺは貴方なのよ?」


「そうだけどさ。俺の種族は地獄のキラービーだろ?蜜蜂ですら無いんだよなあ」


「………」


 蜂蜜酒を造るにあたって俺たちは蜂蜜すら造れないという壁にぶつかっていた。


「しょうが無いわね。また徳ポイントの前借りしとく?」


 すると、一本いっとく?みたいなノリでエマが前借りを言い出した。


「返すのが俺だからって軽いノリで言いやがって」


「私は借りなくても良いのよ?ヤスオと約束したのはコーセーだもの。造れなかったらブチ切れるでしょうね。剣聖が切れたらどうなるのかしら?」


「…よし、何のスキルを取れば良いんだ?」


 気持ちを切り替えた俺はエマに聞く。この前全額返したからな。また借りれるだろ。多重債務者の気持ちが今なら分かるわ。

 そして、エマがステータスをいじりだした。


《スキル【眷属召喚】を解放しました。》

《警告:徳ポイントが『マイナス50,000ポイント』加算されます。返済期限にご注意下さい》


---ヤスオ視点---


 俺はユータの執務室にやって来た。


「ヤスオ、今日は何しに来た?残りの金なら振り込んだぞ?」


 ユータが紅茶を飲みながら尋ねてきた。


「今日はお願いがあってな。単刀直入に言うが、この街の奴隷商を潰すのを手伝ってくれ」


 この国で奴隷になるのは犯罪者だけだ。それも全て裁判後に国営の鉱山に送られるから奴隷商は存在するはずが無いのだ。もし存在するならそれは違法な存在だ。


「何の話だ?」


 ユータの表情が険しくなる。奴隷商の横行は田舎から出てきたばかりの新人冒険者が拐われたりとギルドとしても問題視しているはずだ。だが、確固たる証拠が無ければ手が出せない状況だった。この街を統治している貴族、ひいては国の法体制にケチをつけることになるからだ。


「先日、奴隷の獣人兄妹を俺の森で保護した。ほらっ!」


 俺はトールたちにはめられていた首輪を机に投げた。


「俺は今でこそ呑んだくれているが…俺が剣聖と呼ばれるほどに努力した理由を知らないわけじゃないだろ?」


「ギルドに何を求める?」


「先ずは情報が必要だ。奴隷商潰しは俺と…俺の新しい仲間で片付ける。ギルドに頼みたいのは、国への根回しと救出した連中の身分保証だ」


「!?お前、またパーティーを組んだのか?…いいだろう。だが、ギルドへの見返りは? 報酬もなしに協力しろとは言わないだろ?」


 俺はニヤリと、最高に不敵な笑みを浮かべた。


「報酬なら、とてつもねぇのが入るぜ。俺の仲間にスキル獲得クエストが発生した。この意味が分かるだろ?」


 この世界でスキルを獲得するのは簡単では無い。ダンジョンから極稀にでるスキルスクロールを使うか、スキル獲得クエストに参加するかだ。殆どの奴はスキルなんて持っていない。このギルドも俺を含めて5人くらいだ。


「…それは本当か?」


「嘘は言わねーよ。クエスト名は《闇の鎖を断つ者》この地域の奴隷商組織を壊滅させろだ」


 ギルドにスキル持ちが増えれば、今後の利益は計り知れない。考え込むユータに俺は畳み掛ける。


「さっきは奴隷商潰しは俺たちがするって言ったよな。だが、支部長様の推薦で5人までなら討伐にも参加していいぜ?契約書は交わしてもらうがな。悪い話しじゃないだろ?」


 スキル獲得クエストは声が聞こえた者が仲間と認めないとスキルは獲得出来ない。勝手に討伐しても何も無いのだ。

 そして、貢献度により獲得出来るスキルにも差が出る。今回のクエストなら情報収集をした者は、索敵や隠密等のスキルを得られるだろう。では討伐に参加した者は?悪くてB級、良ければS級冒険者になれる実力を得られるほどのスキルを得られるだろう。


「分かった、協力させてくれ。」


「よし。じゃあまた来るから人選をしといてくれ」


「ああ、次は紅茶じゃなくてうまい酒を用意して待っとくよ」


 俺はギルドを出て拠点へと帰りを急いだ。


 徳ポイント:△918,634ポイント

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