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就活するは我にあり  作者: 諏訪貴信


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二次面接

第8話「地上最強の転職活動」


「……就職してないのに、転職かよ!」


諏訪のツッコミが青空に響いた、その翌日。


気になってしまった諏訪は、メールを開いていた。


『地上最強の転職活動へご招待』


応募条件:転職経験不問


※就職経験がなくても応募できます。


※むしろ歓迎します。


※現在、無職の方を積極採用中です。


「最後の一文がやたら力強い!」


さらにスクロールすると、見覚えのある名前があった。


主催:株式会社アルティメット人事部ホールディングス


「増えてる!」


諏訪は思わず二度見した。


「ホールディングスになってる!」


慌ててホームページを確認する。


すると、グループ会社がずらりと並んでいた。


株式会社アルティメット人事部

株式会社アルティメット総務部

株式会社アルティメット経理部

株式会社アルティメット会議室

株式会社アルティメット給湯室

株式会社アルティメットホールディングスホールディングス


「最後、もう誰も止めなかったのか!」


しかも社員数はすべて一名。


「社長しかいない!」


翌日、諏訪は説明会へ向かった。


「どうせまた変な会社なんだろうな。」


会場に入ると、そこには見覚えのある顔が並んでいた。


「諏訪くん!」


「社長!」


なんと、アルティメット人事部の社長がスーツ姿で座っている。


「どうしてここに?」


「転職活動です。」


「社長、またですか!」


「私、先日社長を退職しまして。」


「早い!」


「現在、株式会社アルティメット会議室の会議室長をしております。」


「何をする会社なんですか?」


「会議室を予約します。」


「普通だ!」


「ちなみに社員は私だけです。」


「やっぱり普通じゃなかった!」


その隣には、人事部長まで座っていた。


「人事部長!?」


「転職です。」


「あなたまで!」


「現在は株式会社アルティメット給湯室のお湯責任者をしております。」


「責任重大そうで全然重大じゃない!」


そこへ司会者がマイクを持った。


「それでは、第一試験を始めます!」


「転職活動もあるんですね。」


「もちろんです。」


「今回は何をするんですか?」


司会者は満面の笑みで答えた。


「履歴書を書いてください。」


「普通だ!」


諏訪は感動した。


「やっと普通の採用試験だ!」


しかし、次の一言で絶望した。


「ただし、自分の履歴書を書いてはいけません。」


「始まった!」


「隣の人の人生を想像して書いてください。」


「個人情報の概念どうなってるんだ!」


制限時間は三十分。


諏訪の隣には、社長が座っていた。


「よろしくお願いします。」


「よろしくお願いします。」


社長の履歴書を見る。


氏名:田中一郎

年齢:42歳

趣味:採用活動

特技:採用活動

座右の銘:採用活動


「人生の九割が採用活動だ!」


諏訪はため息をついた。


「社長、休日は何してるんですか?」


「採用活動です。」


「休んでください!」


すると社長が、少しだけ真面目な顔をした。


「でもね、諏訪くん。」


「はい?」


「私は、人と出会うのが好きなんですよ。」


「……。」


「だから採用活動をしているんです。」


「会社のためじゃなくて?」


「半分くらいは。」


「半分なんだ!」


「もう半分は、面白い人を見つけたい。」


諏訪は少しだけ笑った。


「変な会社だと思ってました。」


「実際、変ですよ。」


「そこは否定しないんですね。」


「でもね。」


社長は窓の外を見ながら言った。


「採用って、誰かを選ぶことじゃないと思うんです。」


「え?」


「その人が、自分らしくいられる場所を見つけることだと思うんですよ。」


「……。」


「だから君を不採用にしました。」


「それ、まだ少し根に持ってます。」


「ははは。」


諏訪も思わず笑ってしまった。


この会社は変だ。


いや、変すぎる。


だけど、人を大切にする気持ちだけは、本物なのかもしれない。


その時だった。


司会者が大声で叫ぶ。


「時間です!」


「終わった!」


「それでは結果発表です!」


「早い!」


「合格者は――」


全員が固唾をのんで見守る。


「観葉植物さん!」


「またお前か!」


会場の隅に置かれていた観葉植物が、今年も優勝していた。


理由は、


『転職することなく、自分らしく生きているため』


「深いこと言ってるようで、全然納得できない!」


こうして、諏訪の終わらない就職活動は、今日も続いていくのであった。

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