一次面接
第7話「内定式で、まさかの不採用」
一か月後。
諏訪はついに、株式会社アルティメット人事部の内定式へやって来た。
会場には、新卒百名。
全員、希望に満ちた笑顔だ。
壇上には社長。
その隣には、本物の人事部長。
社長がマイクを握る。
「皆さん、本日は内定おめでとうございます!」
拍手。
パチパチパチ。
諏訪も拍手をする。
「長かったなぁ……。」
すると社長が続けた。
「それでは、内定者の皆さん。」
「はい!」
「これから、不採用者を発表します。」
会場が静まり返る。
「……え?」
諏訪は聞き間違いかと思った。
「内定式ですよね?」
社長は笑顔で答えた。
「はい。」
「でも不採用者?」
「はい。」
「内定と不採用、同時にやるんですか!?」
人事部長が静かに説明する。
「効率化です。」
「そこ効率化する!?」
社長が封筒を開く。
「不採用者……」
全員が息をのむ。
「諏訪貴信さん。」
「俺ぇ!?」
諏訪は思わず立ち上がった。
「ちょっと待ってください!」
「はい。」
「内定式ですよね!?」
「はい。」
「何で俺だけ!?」
社長は真顔で答えた。
「理由をご説明します。」
会場中が注目する。
「諏訪さん。」
「はい……。」
「あなたは優秀でした。」
「ありがとうございます。」
「優秀すぎました。」
「悪口の新ジャンル!」
「弊社にはもったいない人材です。」
「断り方が上手すぎる!」
人事部長が一枚の評価シートを映し出す。
そこには、
発想力 S
ツッコミ SSS
協調性 A
忍耐力 A+
常識 A
そして最後に、
『もっと普通の会社へ行くべき』
「そこだけ親目線!」
会場から笑いが起きた。
諏訪も苦笑する。
「確かに……。」
社長が壇上を降りてくる。
「諏訪さん。」
「はい。」
「あなたなら、どこへ行ってもやっていけます。」
「……。」
「だから、弊社では採用しません。」
諏訪はしばらく黙っていたが、やがて笑った。
「こんな理由で落ちる人、初めて見ました。」
社長も笑う。
「弊社も初めてです。」
その時、会場の後ろの扉が勢いよく開いた。
「失礼します!」
息を切らした女性が駆け込んできた。
「社長、大変です!」
「どうしました?」
「今年も誰も入社しません!」
「またか……。」
諏訪は耳を疑った。
「え?」
女性が説明する。
「毎年、最終的に全員を不採用にしてしまうので、社員が増えないんです。」
「会社として致命的!」
社長は腕を組んでうなった。
「だから人手不足なんだよなあ。」
「原因、社長じゃないですか!」
会場は大爆笑。
社員たちまで笑っている。
社長は頭をかきながら言った。
「では、来年こそは誰か採用しよう。」
人事部長が冷静に返す。
「毎年そう言っています。」
「反省してない!」
諏訪は笑いながら会場を後にした。
会社の外へ出ると、青空が広がっていた。
「結局、就職できなかったな。」
そうつぶやいた瞬間、スマホが震えた。
差出人は知らない会社。
件名は――
『地上最強の転職活動へご招待』
諏訪は空を見上げて、小さく笑った。
「……就職してないのに、転職かよ!」
その声は青空に響き、どこからともなく拍手が聞こえてきた。シリーズは終わった……かに見えた。




