書類選考
第4話「最終面接の前の最終面接の説明会の受付」
翌朝。
諏訪は会社の前で深呼吸した。
「今日は説明会だ。」
受付の女性が笑顔で迎える。
「お待ちしておりました。」
「今日は何も起きませんよね?」
「はい。」
諏訪は安心した。
「本日は**『最終面接の前の最終面接の説明会』の受付**です。」
「受付だけ!?」
「説明会は来週です。」
「じゃあ今日は何をするんですか?」
「受付です。」
「五分で終わるじゃないですか。」
「受付は八時間あります。」
「長すぎる!」
会場には百人以上の就活生が並んでいた。
全員、番号札を持っている。
諏訪の番号は――
A-38。
前にはA-37。
後ろにはA-39。
「意外と普通だな。」
そう思った瞬間、受付係が叫んだ。
「A-12番!」
「はい!」
「今日はお疲れさまでした!」
「まだ受付してない!」
A-12は頭を下げて帰っていった。
諏訪は隣の学生に小声で聞く。
「あの人、何だったの?」
「ああ、受付に並ぶ才能があるって評価されたらしい。」
「才能の使い道!」
ようやく諏訪の番。
「A-38番。」
「はい。」
受付係が一枚の紙を渡した。
『受付申請書』
「受付するのに申請が必要なんですか?」
「はい。」
「じゃあ書きます。」
「その前に。」
受付係はさらに紙を取り出した。
『受付申請書を受け取る申請書』
「増えた!」
さらに。
『受付申請書を受け取る申請書を受け取る同意書』
「もう紙が目的になってる!」
諏訪の前には、あっという間に書類の山。
「全部書くんですか?」
「いいえ。」
「助かった。」
「眺めるだけです。」
「書かないの!?」
「書類を見たときの表情を評価しております。」
「表情採用!」
そこへ突然、社長が現れた。
「どうですか。」
人事部長が答える。
「A-38、良いツッコミです。」
「なるほど。」
社長は諏訪を見つめた。
「君。」
「はい。」
「疲れてる?」
「めちゃくちゃ疲れてます。」
社長はガッツポーズをした。
「よし!」
「何がよしなんですか!」
「本音を言える人材だ。」
「そこ評価するんだ。」
社長は満足そうにうなずく。
「採用に一歩近づいた。」
諏訪は思わず笑ってしまった。
「普通の会社なら、とっくに帰ってますよ。」
社長も笑う。
「普通の人ならね。」
二人はしばらく笑い合った。
すると受付係が静かに言った。
「おめでとうございます。」
「え?」
「受付の受付が終了しました。」
「まだ受付じゃなかったの!?」
受付係は最後の紙を差し出した。
『次回、受付を開始するための整理券』
諏訪は天井を見上げ、ぽつりとつぶやく。
「……この会社、仕事はいつしてるんだ?」
その瞬間、社員全員が動きを止めた。
社内放送が流れる。
「緊急連絡。現在、社員全員が採用活動に参加しているため、通常業務を三年間休止いたします。」
諏訪は絶句した。
「会社を止めてまで採用するな!」
会議室の外から、社員たちの大きな拍手が響いた。
どうやらこの会社では、最高のツッコミが出るたびに拍手をする文化らしい。




