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第3話「グループディスカッションで、誰も議論しない」
翌日。
諏訪は再び会社へやって来た。
受付の女性が笑顔で言う。
「本日はグループディスカッションです。」
「やっと普通の就活だ……。」
諏訪は胸をなで下ろした。
案内された会議室には六人。
・東大大学院卒
・元プロゲーマー
・ミスキャンパス日本代表
・世界一周経験者
・起業して会社を売却した学生
・そして、諏訪。
「みんな経歴が濃いな……。」
司会の人事がルールを説明する。
「テーマは――」
全員が身構える。
「**『いい感じの昼ご飯』**について議論してください。」
「軽っ!」
「制限時間は三十分。」
「なるほど。」
「ただし、議論は禁止です。」
「え?」
「え?」
「グループディスカッションですが、議論すると失格です。」
「タイトル詐欺!」
人事は真顔だ。
「弊社では空気を大切にしております。」
「空気だけで三十分!?」
開始のブザーが鳴った。
シーン……
誰も話さない。
沈黙。
諏訪は耐えきれず言った。
「えっと……ラーメンとか。」
全員が一斉に諏訪を見る。
人事が笛を吹いた。
ピーッ!
「はい、議論です。」
「今のどこが!?」
「ラーメン派という主張をしました。」
「昼ご飯の例を出しただけ!」
すると元プロゲーマーが静かに立ち上がり、自動販売機へ向かった。
コーヒーを六本買って戻ってくる。
一本ずつ全員に配る。
誰も何も言わない。
ただ受け取る。
人事が深くうなずいた。
「素晴らしい。」
「何が!?」
「言葉ではなく、行動で昼ご飯の空気を表現しました。」
「昼ご飯じゃなくてコーヒーですよね!?」
さらにミスキャンパス代表がカバンからハンカチを取り出し、机を丁寧に拭き始めた。
起業家はゴミをまとめる。
世界一周経験者は窓を少し開ける。
東大大学院生はホワイトボードに大きく一文字だけ書いた。
『和』
諏訪は頭を抱えた。
「何なんだ、この会社……。」
その瞬間、人事が満面の笑みで宣言した。
「終了です!」
「早い!」
「優勝は……」
全員が息をのむ。
「受付の観葉植物です。」
「参加してない!」
人事は真剣な表情で説明する。
「三十分、誰とも争わず、そこに立ち続けました。」
「植物と競わせるな!」
会議室は拍手に包まれた。
観葉植物だけが、風に揺れていた。
諏訪は評価シートをちらりと見る。
諏訪貴信
ツッコミ:S+
常識:A
混乱耐性:B+
観葉植物への敗北:初
「最後の項目、就活で初めて見たぞ……。」
そして人事部長は静かにつぶやく。
「いよいよ次は、弊社名物――最終面接の前の最終面接の説明会です。」
諏訪は天井を見上げた。
「……まだ説明会があるのか。」




