2-8
島田、跳ね起きた。
「永倉組長!?お大福、じゃない!奇襲で!?」
斎藤一が耳を塞ぐ。
「うるっさいのよ、こんな時間にさ。」
土方歳三、柄にもなく、思想の志しで隊士を取り戻したことは嬉しく、財布の紐も緩む。
「藤堂の帰還祝いだ。もっとも、この縁は死者の御前で、派手にとは行かねぇが……。向こうの遊郭街は眠らずの街だ。そこのフランス酒場に出前を頼むとするか。おい、起きた隊士達は来な。」
永倉、出前と聞いて飛びつく。
「奢りか?ムフフ。」
相馬がさりげなく、藤堂に告げた。
「藤堂は知るまいが、蝦夷共和国のかまぼこはフランス人が作る、それは旨い一品なんだぜ。」
「主計……なんだか旨いと聞いたら、腹が減ったな!俺達、潜入中に味噌切らしちゃって。フランスの料理は名が読めず頼めないし。」
斎藤一は口を酸っぱく言い聞かせた。
「かまぼこは禁止!いい?かまぼこは注文しないでね!?」
三樹三郎、窓辺で藤堂が祝われている様を見ながら、兄に語りかけた。
「おさまるべくして、おさまったかのようです。俺たちが近藤の死の起因になったことも、堪え……」
「三樹。貴方も、よく堪えたわね。」
「……死して尚、兄様の言葉は鮮やかによみがえりますから。」
「新撰組は夢を得て始まったばかり。土方君はようやく近藤局長に追いついたって訳ね。」
「はい。まだ、尊王の足元僅かに追いついたくらいでしょうけどね。」
「幸あれ。夢見る同志にわたしから送るのは、友としての祝福だわ。」
兄の残像が消えていく。三樹三郎は、その手に近藤の首を責務を抱え、生きてゆく。藤堂は違う。これでよかったのだと、藤堂を仰ぎ見た。
「永倉兄!何だ、このかまぼこ!旨い!かまぼこ旨い!!」
「うめぇだろう藤堂、食いねぇ食いねぇ!!」
斎藤一は張り詰めた。
「ちょっと!かまぼこ禁止だって!パテもかまぼこも禁止!!」
土方、丸ごと一本かじりながら答えた。
「斎藤よ。こいつぁ、テリーヌだぜ……?」
斎藤一は、領収書と契約書を奪い、辞典が置いてある自室まで走り抜け、翻訳。
「テリーヌ……クッソ!落とし穴かよ!!……あー!!これは不味いわ……もう、土方に榎本武揚氏にでも、交渉してもらわないと。」
新撰組、志しと夢を新たに、借金も新たに。
剣を振るうだけではなく、その思想、誠の武士ならんとす。
藤堂と再び合間見え、壬生狼チャンバラ、お次の一戦や誰ぞ知る。
終劇
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