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見える感情、見えないまま  作者: 颍川
第四章 告白——僕が見た、彼女の本当の気持ち
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第二十話

---


【放課後・生徒会室】


生徒会室では、春野がホワイトボードの前に立ち、意気揚々と体育祭の準備案を説明していた。

立花はというと、目をきらきらさせながら話を聞いていて、思いつくたびに手を挙げては、自由すぎる案を口にする。


その一方で、石原だけは無表情のまま、部屋の隅に座っていた。

頬杖をついたまま、視線はどこにも定まっていなかった。


石原の隣、本来なら緒山が座っている席は、今日は空いたままだった。

ぽっかり空いたその場所は、妙に冷たい空白のようで、賑やかなはずの部屋の中にいる石原にだけ、いっそうはっきりとした寂しさを感じさせた。


(緒山さん……今日は休みか)

(また体調、悪いのか……?)


朝の杏との言い争いの記憶も絡み合って、胸の奥に解けないまま引っかかる。まるで乱れた糸の塊でも押し込まれたみたいで、石原は思わず小さく息を漏らした。


「おや?」


そのため息を、立花が見逃すはずがない。

すぐに石原のそばに寄ってきて、いつもの自分なりのやり方で場を明るくしようと、にっと笑った。


「先輩、今日も省エネモード全開ですね! それじゃダメですよ?」


石原は反応しなかった。視線すら動かさない。


【立花美里の感情:心配21(&¥%%……】


自分の気遣いを完全に無視された形になって、立花はむっと頬を膨らませたが、次の瞬間にはいたずらっぽい顔になった。

指をすっと伸ばして石原の腕にちょんと触れた瞬間、光がぱっと弾けた。


「うわっ!?」


石原は椅子から跳ね上がった。

自分の体を見下ろすと、いつの間にか派手な色合いの、フリルだらけの大げさなロングドレスを身につけていた。

顔にはあからさまな困惑と、少しだけ恨めしそうな色が浮かんだ。


春野はそれを見て、腹を抱えて笑っている。


【立花美里の感情:#@/$*%】


「立花」


平淡な声が響いた。

花野真汐は手にしていた本を閉じ、いつもの死んだ魚みたいな目で部屋を見渡した。


「石原、状態が良くない。残りの文書作業はいったん中断。今から私と校外施設の確認に行く」


「え……?」


石原はまだドレス姿のまま固まっていた。


「だ、ダメですよ!」


立花は自分の底上げ用の椅子から飛び降り、机に両手をばしんとついた。背伸びしながら、必死に花野の“圧”に対抗するみたいに目線を合わせる。


「先輩はまだ仕事がいっぱい残ってるんです。それに私が先に――」


花野は表情一つ変えず、淡々と問い返した。

「なら、どうして今こんなことをした」


「……っ」


立花の勢いは一気にしぼみ、視線を落として小さくつぶやいた。


「……元気なさそうだったから。ちょっと元気出してほしくて……」


【立花美里の感情:落ち込み64¥%……*&】


しゅんとしたまま椅子に戻った立花が、おとなしく指を動かして石原の服を元の制服に戻すのを見て――

石原の胸に、わずかな罪悪感がよぎった。


深く息を吸う。

それから、自分の頬をぱちんと強めに叩いた。


はっきりした痛みが走り、そのおかげで頭の中に渦巻いていた感情のざわめきが少しだけ引いていく。


(……ダメだ)

(自分のことで、生徒会のみんなにまでこんな空気を背負わせてどうする)


石原は立ち上がった。


「行きましょう、花野先輩」


声もいつもの落ち着いた調子に戻っていた。


花野はそれ以上何も言わず、そのまま先にドアへ向かう。

石原は春野と立花に軽くうなずいてから、そのあとに続いた。


---


校内の人影は、昼休みの頃より少し減っていた。

廊下に響いているのは、まばらな足音だけだ。


花野はゆっくり歩いていた。急いではいないが、一歩一歩はしっかりしている。

その少し後ろを、石原は記録ノートを手にしたままついていった。


最初の調査場所は、中庭の掲示板だった。


花野は破れている掲示物を指差し、「これはどう記録する?」と尋ねてくる。石原が答えると、花野は小さくうなずいた。


そして、また歩き出した。


ここまでは――特に問題はなかった。


だが、校舎の連絡通路に差しかかったところで、急に人が増えた。


部活の時間がひと区切りついたのだろう。


あちこちから生徒たちがどっと廊下へあふれ出してきた。

笑い声や足音、誰かの大きな呼び声が入り混じって、廊下は一気に騒がしくなる。


その瞬間、石原の視界には感情タグがあふれ出した。


【興奮73】

【疲労42】

【苛立ち58】

【眠気61】

【期待39】


まるで花火みたいに次々と弾けながら、視界の中へ密に流れ込んでくる。


石原はくらりと眩暈を覚え、足がわずかに鈍った。


顔を落として手元の記録ノートを見ると、書かれた文字がうまく追えず、揺れて見える。


「石原」


前方から飛んできたその声は、花野のものだった。


石原が顔を上げると、少し先で花野が別の生徒と話していた。

その生徒がこちらを見て、少し好奇心をにじませた顔をする。


「こちらは……?」


花野は淡々と答えた。


「新しく入った書記。石原」


その生徒は一瞬きょとんとしたあと、にこっと笑った。


「へえ……石原さんも生徒会なんですね」


その瞬間、石原の指がぎゅっとペンを握りしめた。


頭の中で、その言葉が勝手に別の意味へとすり替わる。


――お前みたいなのが、生徒会に入れるわけがないだろ。


「石原先輩、思っていたよりずっと穏やかな人なんですね。あ、そういえば――石原先輩が生徒会に入れたのって、緒山副会長の推薦だって聞きましたけど、彼女は今――」


相手が言い終わる前に、石原が口を挟んだ。


「……緒山とは関係ない!」


思わず声が飛び出し、それは自分で思っていたよりずっと大きかった。


その生徒は目を丸くした。花野は石原をきつく一瞥した。


石原自身も固まった。どうして今、あんなふうに声を荒げたのか、自分でも分からなかった。


「……すみません。ちょっと……まだ慣れてなくて」


花野は何も言わなかった。

ただ視線をその生徒へ戻し、声色もさっきとまったく同じままで言った。


「それで。さっきの話の続きだけど、どこまでだった?」


その生徒は苦笑いを浮かべて「え、ああ……はい」と返し、頭をかきながらまた説明を始めた。


石原はノートを見下ろした。書かれた文字は、もうぐにゃぐにゃに歪んでいた。

ペンを握る指が、かすかに震えている。


花野は、石原を見なかった。


でも――質問の間は少しだけ長くなっていた。一つ問いかけるたびに、前よりほんの少し長めの間を置いてから、次の質問へ移っていた。

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