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魔法少女の殺し方〜All we need is〜  作者: 黒鮫しゃけ
第2章

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第16話・頼れる(?)先輩

音に釣られ振り向いたその先、のほほんとした顔でこっちを見つめる――


「あれれ? 乙女(おとめ)っちもう終わったの? 早かったね〜」


茶色い髪をした、1人の少女の姿があった。


(えーと……誰?)


薄手の白いパーカーに細身のズボン。

身長は比較的高そうに見える。


肩で揃えられた茶髪は艶やかで、愛嬌がある顔立ちをしている。


知らない人のはずなのに、どこか見覚えのある笑顔。

乙女は首を大きく傾げながらも、彼女へと言葉を返した。


「あー、すいませんけど。どちら様……です?」


その返答を聞いた少女は、口をあんぐりと開けたままパクパクと動かす。

乙女のことをじーっと凝視すると、次の瞬間、崩れたように膝から廊下に倒れた。


床に押し潰れている頬を気にせずに、少女が細々とした声で呟く。


「そんな、そんな……乙女っち、うちのこと忘れちゃったの……」


(忘れる……? けど、初めて会った気しか……)


顎に右手を当てながら、痴態を晒す少女を眺める。


(うーん……? 顔に見覚えも……ない)


小さく唸り声を鳴らしながら眉をひそめる。

床に倒れた後ろ姿を見続けていると、乙女はどこか既視感を覚えた。


(なんだろ……すごい頭が痛かった、気がする……)


まるで事の発端というか、混乱そのものみたいな。


「えっ、乙女っち。もしかして……ふざけてる? そんなまさかのまさか?」


にゅっと膝立ちした少女が、瞳をうるうるとさせながら口を開く。

その言葉を聞いた瞬間、乙女の脳裏に騒がしい声が蘇った。


『えっえっ、もしかしてふざけてる?』


『いやいやいや!? その格好で否定するのは厳しいよ!』


『言わないお約束!』


華やかな金色の髪に、ふわふわとリボンが舞う真っ白いドレス。

そして右手に握られた、燦々と輝く光の剣。


こちらを睨む少女、彼女の正体が分かった乙女は、視線を逸らしながら口を開いた。


「えーと……お疲れ様、です。白羽(しろばね)……さん?」


「やっと分かったの!? もう遅いよ乙女っち〜」


ムッとした表情を浮かべていた白羽が、乙女の言葉に破顔した。

なんだか申し訳なくなって、視線を少しだけ逸らす。


「変身、解いてるとこ……初めてだったので」


「あ〜、たしかにたしかに!」


乙女の言葉に納得したのか、膝立ちのまま手のひらをポンっと叩いた。

その後こちらをじっくり見つめてから、白羽は再び口を開いた。


「乙女っちはまだ解いてないんだね〜」


(あ。まだ私って、魔法少女の見た目なのか)


そういえば忘れていた、と乙女は自分の体を見下ろす。

すると、白羽が両足でさっと立ち上がり、てくてくとこっちに向かってきた。


「にしても、なんだろ……凄いよね!」


素早くしゃがんで衣装の袖を掴むと、フリフリさせながら不思議そうな声を漏らす。

そのまま数秒ほど揺らしてから、白羽は顔を上げて別の話題を口にした。


「そいえばさ……どうどう? 課長との話どうだった?」


「別に。何もありませんでしたよ」


ぐいっと限界まで近付いてきた白羽を、肩を押して引き離しながら乙女は答える。


「えー、絶対何かあったでしょー! だってだって、あの課長だよ? あの!」


押し除ける乙女の手を無視して、彼女は更に迫ってくる。

これ以上の追求がめんどくさくなり、乙女は無理矢理に話をすり替えた。


「白羽さんの方は終わったんですか」


「うん……? え。いや、全然? みんなバリバリやってるよ〜。もちろん(あららぎ)っちも」


白羽の返事に、乙女の思考が一瞬止まる。

ならば何故ここにいるのか、と。


「……あぁ、休憩だったんですね」


納得する意見が浮かび、乙女は手のひらを打とうとする。

しかし、次の言葉で右手は掠りもせずに空を切った。


「のんのん。嫌になったから脱走中」


流れるように、乙女は目元を両手で覆う。

それを気にも止めず、ふと思い出したのか白羽が話を変えた。


「あれ、そういえば。うちって、乙女っちにお名前紹介してなくない?」


彼女の言葉を聞いて、乙女は右手を口元に持っていく。

そして、数秒ほど黙ってから首を横に振った。


「あ、やっぱり? 忘れてた忘れてた〜」


白羽は右手を腰に当てると、顎を上げて口を開いた。


「Bランク魔法少女【幸運】、ラヴ・ホワイト! 本名、白羽 頼依(たより)だよ。よろしくね〜」


そして腰から右手を離して、こちらに向かって差し出してくる。

乙女が彼女の手を掴み握手を交わす。


「あぁ、はい。よろしく……白羽さん」


「可愛い後輩が出来て嬉しいな〜。なんでも先輩に任せてよ!」


自慢げな表情を浮かべて、ドンッと自分の胸を叩く。

「あ、はは……」と声を漏らしながら、乙女は口元をひくつかせた。


(不安しか無いっすよ、先輩。はぁ……)


白羽は乙女の手を離すと、両腕を持ち上げて背中を伸ばす。


「んー! ふぅ……そろそろ仕事戻んなきゃ〜」


「そうですね。すいません、引き留めちゃって」


心にも無いことを口にする乙女。

白羽は自販機のそばに戻ると、その場にしゃがみ込んだ。


取り出し口に手を入れて何かを引っこ抜く。

その手に握られているのは、CMをよく見かける有名なサイダー飲料。


姿勢を変えずにペットボトルを眺めてから、白羽はゆっくり立ち上がる。

そのまま勢いよく振り返り、乙女にノールックで投げ付けた。


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