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57 大悪魔とゼタ様

「ふーん。その文書とやらを盗めばいーんだ。仕事はそんだけ?」

「そ、それだけって……。言いますけど、手掛かりは無いんですよ……?」 

「んー? 別にそんなこと無くない? おにーちゃん、大人なのにわかんないの?」


 ……お兄ちゃん? 


 俺達は一度闇市を出て、また港まで出てきていた。

 隣を歩くと、アビスがいかに小さいか分かる。

 小鬼特有の黒い角とつむじを、真上から見下ろす形になっていた。


「なら……どうすればいいか、当てはあるんですか?」

「ふふん、当ったり前でしょ! この大悪魔アビス様がぜーんぶ解決したげる!」

「だ、大悪魔……?」


 どういうことだ? 何を言って……

 アビスが胸を張りながら笑うと、口元の牙が光る。


 ……そういえば、アビスは『ちょっと痛い奴』だってあの背の高い小鬼が言ってたけど。

 既に冷めた目で見始めた俺に、アビスは気にする様子もなく。


「ね、かっこいいでしょ? アビスは大悪魔、それで……こっちはゼタ。この子もアビスと同じ、天の上の存在なの!」


 …………っ⁉

 腰に手を当てて自慢げに言い切るアビスに、俺は思わず目を見開いて。


「ゼ、ゼタって言いました⁉ や、やっぱりその子は、ゼタ様なんですね⁉」

「そうだけど……なんで知ってるの?」

「そ、それはもう、数千年の付き合いですから……!」


 少しだけ身を引いていたアビスは、俺がそう言うと眼を輝かせる。


「……! そ、そうなの! ゼタは八千歳で……まぁでもアビスは一万歳だから、アビスの方が年上だけどね? それでゼタはね? 大悪魔のアビス様とわたりあえるほどの力を持っている、ゆいいつの天使でね? それでそれで……」


 なにやら熱っぽくまくし立てるアビスだが、衝撃でほとんど話が入ってこない。


 や、やっぱりこの子は、ゼタ様だったんだ……!

 ならアビスも、本当に悪魔なのか。

 思わず冷めた目で見てしまっていた、申し訳ない。

 でも……


「そ、それでゼタ様は、どうしてここに? あなたはなぜゼタ様とご一緒に居るんですか?」

「それはもう……話は一万年前に遡るんだけどね? アビスが宿敵探しの旅の途中で出会って、その時にただ者ではないオーラを感じたの! それから二人で刃を交えて戦って、数千年の戦いを経て……」


 さっきゼタ様は八千歳とか言ってなかったか?

 ……けどまぁ、長く生きているとこういう矛盾はよくおきがちだ。

 その点もまた、アビスが本物の悪魔だと裏付けになるだろう。


「――そんなわけで、おねえちゃんになってあげたの! ね?」


 なんだか嬉しそうにアビスは語るが、あまり途中の話は聞いてなかった。

 それより、気になる言葉が。


「宿敵、というのはなんですか? この世界に何か敵が居るんですか」

「そう……宿敵こそこのアビス様がゲティアに潜む理由でね? 我が生みの親である上位存在、その仇、そいつを殺すためにアビスは、日々生きながらえているのだ……」

「親の仇ですか。なるほど?」


 話を聞く限りだと、親を殺されたのは一万年以上前ってことになるが……

 そのカタキとやらはちゃんと今も生きているのだろうか。

 などと考えていると、どうもゼタ様が静かなのが気になって来た。


「ところで……ゼタ様はどうしてお口を利かないんですか」

「いや、ちょっと人見知りしてるだけ。言ってる事は分かるし、初対面で恥ずかしくて喋れないだけ、だよね?」


 アビスが言うと、少女は控えめにこくこくと頷いた。

 

「な、なら俺の事、分りますか? ロナです、あなたの部下の……」


 興奮して話しかけると、ゼタ様ちゃんは後ずさってアビスの後ろに隠れてしまった。

 かばうようにアビスが両手を広げて、俺に立ち向かってくる。


「ねえ、怖がってるからやめて! てか何言ってんの? ゼタの部下って……」

「俺が天界にいたころ……救済課ってとこ分かります? そこで、この方の部下として働いてたんですよ。そこで何千年もお世話になってて……」


 嬉しくなってまくし立てると、ぽかんとしたようにアビスは口を開けている。

 

「……どうしました?」

「え? いや、その……おとなってみんな、そういう話を信じてくれないから……おにーちゃんみたいに、ここまで信じてくれる人が珍しくて」

「そりゃまぁ、下界の人間には理解できないですよ。そもそも彼らはこの世界の上に天界があること自体知らないんですから」

「そ、そっか。そうだよね。おにーちゃんもアビスと一緒なんだ……」


 俺が言うと、アビスはなんだか嬉しそうにこちらを見上げた。


 なんか会話が噛み合ってない気もするけど……まぁいいか。

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