表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/119

54 黒い共通点

 東区の貴族街、豪華な馬車の傍。

 高価な服装に身を包んだ貴族と、それに対するは目の下に黒い宝石を光らせる岩晶族の少女。


「――ですから、利子の徴収を認める法改正が議会を通る、今が好機なのです。この機会を逃せば、金貸し業は飽和してしまいます。出資するには今しかありません!」


「そうだな……確かにセイロン殿の言う通りかもしれん。それで、金貨一万の融資をすれば、一年後には二倍に膨らんでいると?」

「はい! 間違いありません! 重ねて申し上げますが、この法改正を知るものは限られています。だからこそ今、先に事業を始めれば、先行者利益によって優位に立つことが出来るわけです」

「なるほど、これは……」


 セイロンと名乗る少女の話に、貴族の方が身を乗り出したそのとき。


「あ、オニキスだ! ほらロナ、あそこ、居たぞ! おいオニキス、ロナの野郎がお前のこと探してたんだぞ!」


 貴族街には似つかわしくない、汚らしい布を体に巻いた獣人がずけずけと割り込んでいく。

 貴族は獣人の行動にあっけにとられ、戸惑いの表情で。


「……なんだこの無礼な獣人は。オニキスと言ったか? 何やら聞いた事のある名前だが……」

「いえ、人違いでしょう。それより商談に――」


 あー……

 これは……タイミングが悪かったな。

 オニキスは明らかに声をかけられて欲しくない空気を出すが、ズーがそんなものを読めるはずもなく。


「おい無視すんなよオニキス、ロナが一大事だからって、おまえを探すために皆で探し回ってたんだぞ? ごめんなおっさん、ちょっとこいつは借りてくからよ」

「ちょ……や、やめてください、引っ張らないでください。ひ、人違いですよ、今は大事な商談中で……」

「人違いなわけねーだろオニキス! なんだ? お前頭でも打ったのか?」


 ……面倒なことになって来た。

 が、俺とてあまり引き下がれない。

 いまはこの子の力が必要なのだ。

 

「き、君、彼女が嫌がっているだろう、これ以上するなら警護のものを呼ぶぞ?ほらセイロン殿、馬車へ入って。邸宅でこの話の続きを……」


 と、オニキスの手を取っていそいそと逃げようとする貴族だが。

 俺はその名前に引っかかっていた。


 今オニキスのこと、セイロンって言ったか?

 セイロナイト、オニキス、やっぱりこれも黒い宝石の名前……


「ズーさん、彼女はオニキスじゃないと言ってますけど」

「そんなわけねーだろ? だってどう見ても……おいだから、どうしたんだよオニキス! なんで知らねーふりすんだよ!」

「くっ……! は、離してください、わ、私はオニキスなんて名前では、ありません、から!」


 身をよじらせるオニキスに、俺はズーの手を引いて。


「ほらズーさん、やめてあげてください。オブシディアさんが嫌がってるじゃないですか」

「…………ッ⁉」

「……オブシディア? 新入りおめー、何の話をしてんだ……?」


 一か八かで口を挟んでみると。

 眉を潜める貴族とズーとは違い、オニキスだけが目をかっぴらいて完全に動揺している。


「いったい何の話をしているのだ? ユゴルアの七大豪商の名を急に……」

「オブシディア家当主の話、ご存じありませんか。一か月前ほど前に……兵器を違法に輸出した咎で投獄されたそうで。判決は死刑、しかしその処刑は公開されなかったとか」

「……マジでなんだ急に。そりゃ噂では聞いたことあるけどよ。オブシディアの隠し財産の話は有名だし。ずぶずぶだった政界のコネを使って国外逃亡を図ったんじゃねーかとか言う話もあるけど」


 だからなんだと言わんばかりにズーは言うが。


「その当主は、道端のイカサマで集めた資金を元手に物凄い速度で成り上がり……処刑当時彼女はまだ、年端もいかない少女だったらしいですね」

「……何の話をしている? それがどう……?」


 ぽかんとしている貴族の隣で、オニキスがわなわなと唇を震わせている。

 やっぱり、間違ってなかったみたいだな。


「そしてその少女には……オブシディアン、つまり黒曜石の名の通り、黒い宝石を目の下に」

「ま、ままままってください! 分かりました! 分かりましたから、これ以上は言わないでください……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ