111 勝利と変化
魔族軍はローナ神の加護によって、快進撃を続けた。
王国軍の砲撃は当たらず、一方で魔族軍はまるで敵軍の情報が全て分かっているかのような攻撃をし続けた。
不落だと考えられていた王都は、徐々にその綻びを見せ始め――
砲撃の音が止む。
「中央門が開きました! 開城の意思を示しているようです!」
その報告に、リヴィゼは王都を見ようともせずに頬杖をつく。
「ふん、まともな戦いにならなかったわね。一方的すぎて、つまらないくらいだったわ」
……にしてもあいつら、流石にやり過ぎでしょ。
リヴィゼは心の中で毒づく。
相手は大陸最強の国家、エンデ王国。
だというのに、戦いはあまりに一方的なものだった。
こちらにはヘロシュの融資、ユゴルアの新式砲台、ウルグガルグの資源がある。
対して相手の経済は崩壊させ、そして何より王国に広がる無数の魔族の裏切り。
その根底を揺るがせば、最強と呼ばれた王国もここまで弱くなるものなのね。
ニセ神のやつ、最初はあと二週間で戦争を終わらせろだの言ってきて、ぶん殴ってやろうかと思ったのに……
タイムリミットまで一日を残して、本当に終わってしまった。
これだけのおぜん立てがあったら、こんなのどうやったって……
……まぁ、そんなのがなくても? ウチの軍だけで余裕で勝てたけどね?
これはあくまで、常勝無敗の魔族軍の手柄であって、アイツらはちょっとした手伝いをしただけで……
「リ、リヴィゼ様? その、進軍の許可を……」
黙り込んで考え事を始めた王女様に、魔物はおずおずと進言する。
「そ、そうね。お前たち! 占拠して略奪して、残虐の限りを尽くしなさい! 城内に侵攻して、魔族の恐ろしさをエンデの民に思い知らせて……!」
立ち上がってそう宣言しようとして……言葉に詰まる。
「魔族軍の恐ろしさを、思い、知らせて……」
その言葉の途中で、リヴィゼは口を噤んでしまった。
……おかしい。
これまでなら、人々が魔族に恐れおののき、血を流して叫ぶところを思い浮かべるだけで……何よりの快感を覚えていた。
だけど……そいつらの苦しむ顔が、ゲティアに居るアイツらの顔に置き換わると、急になんだか……
「リ、リヴィゼ様……?」
心配そうに声をかけて来る部下。一方でリヴィゼは、困惑していた。
この新世界に来るまでは、ローナ神を信仰しない野蛮人たちを支配してあげる事こそ、全ての人々の幸せにつながると考えていた。
野蛮人より優れた魔族こそ、この世界を支配するにふさわしいと。
確かにあいつらはいろんな面で魔族に劣ってる。
けど、全ての面においてじゃないってことくらい、いやでも分かって来た。
それに何より、何度も言葉を交わして、そして肌を触れ合わせてるとなんだか……
「…………進軍はナシ。王国からの使者を待ちなさい」
そういってリヴィゼは、再び椅子にどかりと座り込んだ。
「リヴィゼ様……っ⁉ それはどういう……⁉」
「ち、違うわ。別に、アイツらに情けをかけてやろうってんじゃないの!」
気恥ずかしさを紛れさせるように机をバンと叩くリヴィゼは、戸惑う部下から目を逸らす。
「ほ、ほら、もしかしたら、この開城が罠って可能性もあるでしょ? ならすぐにつっこむのは愚策。向こうから正式に降伏の宣言を待った方が良い、そう思っただけよ」
「な、なるほど……! 流石はリヴィゼ様……!」
納得してくれた部下に、リヴィゼは冷や汗を無意識に拭う。
なんなのよ、このきもち。
魔族としてあるまじき行為なのに、まるで何か、良いことをしてやったような気分になってるみたいに。
「ふ、フン! お前たちはもっと頭を働かせるべきね。だ、だから……それまで、エンデの民衆に手出しをするのを禁ずるわ」
「……へ? それはどういう意図で……」
「いいから! もし無暗に殺生をしたら、厳しく罰する。そのように伝えなさい!」
「は、はっ……!」
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