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ユイ・メモワール  作者: 碧川亜理沙
4年生編
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ダンテの一族⑦



 部屋へ戻ると、先ほどよりも体を崩したダンテの一族が待っていた。


「クリスティン・ハワードを呼んできました」

「お久しぶりでございます。クリスティン・ハワードと申します」

「あぁ、畏まらくてよい。あくまでこれからする話は非公式……お願いのようなものじゃ。お主らも楽にせぃ」


 そう言われて、お互い跪くのは止めたが、楽にしろと言われそう簡単にできるものでもない。

 ひとまず、ユイたちは立ったまま、ダンテの一族の話を聞くことにした。


「それで、私たちに話とは? 先ほど、お願いと仰っていましたが」


 クリスティンが先に口火を切った。

 ダンテの一族は、崩した体制から、顔だけをユイたちに向ける。


「お主ら、今この国で、魔石に憑かれる人間がどのくらいいると思う?」


 唐突に尋ねられる内容に、ユイとクリスティンは反応に遅れる。少しして、先にクリスティンが口を開いた。


「協会が公表している情報ですと、その時々によって差はありますが、平均しても毎年2桁はいかないと認識しています」


 ユイもクリスティンと同様の知識だ。

 実のところ、魔石に憑かれるということ自体、そう起こるものではない。いくつかの条件が揃わなければ、魔石が人に憑くということは起きないのだ。


 ──例年、魔石に憑かれたうちのほとんどは、学内で起こっているのだっけ。


 1人前の探掘者や鑑石課など、魔石に携わる人が魔石に憑かれたという話は少ない。多くはまだ未熟な、学生たちが被害にあっている。


 クリスティンの認識に相違はなかったのだろう、ダンテの一族もそうだと頷き返す。


「年ごとに見れば確かにそうじゃ。統計を取り始めてから今日まで、さしてその数字に変わりはない」


 ダンテの一族は、心なしか、声を低めて言葉を続ける。


「お主らは聞いたことがあるか? 人工的に、魔石を人に憑かせ、魔石側の人格を肉体へと定着させる話があることを」

「人工的に……」

「憑かせる……」


 初耳だった。

 数年前のフェールディング家であれば、研究をしていそうだと思うあたり、自分の一族に対する嫌悪感が湧き上がるが、そうだとしてもこの話は初めて聞いた。


「……いや、何かで聞いた気がする。大昔、そう言った研究を試みようとしていたと。だが結局、倫理的に背くということで、王命により禁止された……のではなかったか」


 クリスティンが記憶を辿るように呟く。

 ダンテの一族も続くように口を開く。


「今現在、魔石の取り扱いに関する王令の中に、ひっそりとその文は組み込まれている。だが、日常を過ごす人たちにとって、そこに何が書いてあるかなど気にすることはない」


 王令の中に記載されているのであれば、もし破ったものが現れた場合、その者は厳しく罰せられるはずだ。

 それに魔石に携わる人たちは、少なくとも魔石に関わる王令は一律覚えさせられる。知らなかったで済む話ではない。

 もし携わらなくても、普通の人が人工的に魔石を人に憑かせようと思うのだろうか。


「……少し話がそれたか。さて、本題じゃ」


 ダンテの一族が、崩していた体制を整え、ソファ座り直して言う。


「レイスヴィーグ大学校内にて、人工的に魔石を憑かせる実験が行われている可能性が出てきた。お主らには、その手がかりを探してもらいたい」


 またしても、話の大きさにユイたちは驚きを隠せない。


 ──学内にそんな実験をしている人がいるですって……?


 にわかには信じがたい。

 だが、こうして話を持ち出している時点で、そのような噂はすでに出ていたのだろう。


「……なぜ、それを俺たちに頼むのですか? そのような大きな話なら、五家の当主たちに頼む内容に思えますが」


 クリスティンが隣で質問する。


「先に言うたであろう。これはあくまでお願いじゃ。五家への依頼ではない。それに、学校内で動いているのであれば、外部の者が出入りするより、学生であるお主たちに頼む方が怪しまれることもなかろう」

「それは……そう、かもしれませんが」


 クリスティンは納得いかなさそうな表情をするも、ダンテの一族の回答は一理あり、反論する術がない。

 即答をしない2人に対し、ダンテの一族は重ねて言う。


「お主らに捕まえろと言うとるのではない。その辺は、正式に五家を通して話をするわ。あくまでその前段階……学校内でそのような動きが本当にあるのか、それを調べるだけで良いのじゃ」


 だけで良い、と言われても、それ相応の成果は必要だろう。中途半端な行動はできない。


「どうじゃ、お願いを聞いてくれるかのぉ」


 ユイとクリスティンは、思わずお互いの顔を見合わせる。

 ダンテの一族はあくまでお願いだと言っているものの、ユイたちからしてみれば、それは最早命令に近しいものだ。断る、という選択肢がない以上、2人はそれを受けるほかない。


 最終的に、ユイとクリスティンは、ダンテの一族の話を承諾した。





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