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ユイ・メモワール  作者: 碧川亜理沙
4年生編
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調査①



「そうですか……そのようなお話があったのですね」


 夕刻時、ユイとフランは情報共有も兼ねて、ハワード家の夕食に招待された。


 ユイとクリスティンが聞いた話をリリヤたちに共有する。

 リリヤも同様に初めて聞いた話だったようで、ダンテの一族からの話に驚いている。


「ご当主であれば何かしら聞いているかもしれませんが……。ですが、今回はクリスティンたちに依頼が持ち掛けられたのですね。そこまで危ないことではないと思いますけど、気を付けて対応してください」

「はい、承知してます。頼まれた以上は、やり遂げるまでです」


 クリスティンも話を受けた以上、やる気になっている。ユイにも気遣いの言葉をかけられたので、素直に頑張りますと返す。


 その日はリリヤたちのご好意で、1泊させてもらうこととなった。




 ──翌朝。


 朝食までご馳走になってしまい、ユイとフランは申し訳なさそうに、食後すぐに帰路へと着こうとする。


 少ない荷物をまとめて玄関外に向かうと、そこには来た時に乗ってきたフェールディング家の馬車と、隣にハワード家の馬車があった。


「この度は本当に、本当にありがとうございました。まだまだ至らないところが多いですけど、どうぞよろしくお願いします」


 フランがリリヤに礼を言うのを横耳に、先に挨拶をしたユイは馬車に乗ろうとする。その直前に、クリスティンに呼び止められた。


「何?」

「学校へ戻るんだろう? それならうちの馬車に乗って行くといい。行き先が同じ方が、双方手間がないだろう?」


 思わぬ提案に、思わず眉を寄せる。

 確かに、後は本家に寄る用事もないので、このまま学校へ向かってもらうつもりだった。しかし、なぜわざわざハワード家の馬車に乗らねばならないのか。


 話が聞こえたのだろう、リリヤも遠慮せず、送り届けてくれると言う。


「……でも、さすがに」

「それに学校へ行くまでに、今回受けた件の認識合わせをしたい。学校へ着いたら、そう多くゆっくり話す時間もないだろう」

「……それは、そうね」


 それを言われたら、もう断る理由はない。

 最終的に、ユイはクリスティンとともにハワード家の馬車で学校へ戻ることになった。


「何かあれば都度連絡するのですよ。深追いだけはし過ぎないように」

「ユイも困ったことがあったら言ってね。力になれるか分からないけど、手伝えることはやるから」


 リリヤとフランの言葉に礼を言い、ユイたちが乗った馬車は、ひと足先に学校へと向けて出発した。





「早速だが、話に移ろうと思う」


 馬車が動き出して少しした頃、クリスティンのほうが先に口を開いた。


「……とは言え、証拠集めと言われても、学内で無理やり魔石を憑かせる実験が行われているか、どのように調べるかだな」

「それはそうよね……。ダンテの一族も、本当に大ざっぱなとこしか話してないから、どこから手をつければいいのか分からないわ」


 魔石の研究だけであれば、国内最大の魔法学校なので、学生から先生たちに至るまで数多くなされているだろう。その中から、魔石を憑かせる内容に近しい研究をしている者を絞っても、そこそこいるのではないだろうか。


「そもそも、ダンテの一族の話し方からして、正式に研究を行っている分に関しては除外していいと思う。裏で秘密裏に行われている可能性の方を調べる方がいいんじゃないだろうか」

「それこそ、表に出てない分、探すきっかけがないと思うのだけれど……」


 2人で頭を悩ませる。

 しばらくお互い無言の時間が続いたが、ユイはふと、学内でダンテの一族の姿を見かけた時のことを思い出す。


「……そう言えば、今回のきっかけにもなった、学内でダンテの一族のことをみた話をしたと思うのだけれど」

「聞いたな。そこでダンテの一族への当主代替わりの報告漏れが発覚したわけだが」

「私がダンテの一族を見かけた時、ちょうど騒ぎがあった頃だわ」

「騒ぎ?」

「知らない? 課外行動中……かは分からないけれど、学生が数人魔石に憑かれたって出来事」

「あぁ、その話なら聞いた。確か2年生のひとりが運悪く亡くなったと聞いたぞ」


 人死が出ていることまでは知らなかった。

 クリスティンはある程度状況を知っているようだったので、詳しく話を聞く。


 ひと通り聞き終わったあと、ユイの脳裏には数年前の記憶が蘇ってきた。


「……私たちが1年生の時も同じようなことがあったの、知っている?」

「1年の時? ……そういえば、噂で聞いた気がしなくもない」

「わりとその渦中にいたからなのだけど、何となく、今回の件と状況が似ていると思うの」


 クリスティンの話を聞いていて、違うのは現場と被害の大きさだ。それ以外は、ユイが立ち会ってしまった状況と非常によく似ている。


「そうなると、まずは授業外……主に課外行動やサークル関係か。その辺りで魔石に関する事故がなかったか、そこを調べるのが良さそうだな」


 クリスティンの意見にユイも賛成した。

 今回、ダンテの一族を学内で見かけた時も、ちょうどその騒ぎの真っ只中だった。依頼された内容と無関係であるとは思えない。


 お互い授業などで忙し身ではあるものの、この件はさっさと済ませてしまいたい。年内までには、何かしらの成果をあげることを目標とした。

 そして、ユイは今回の騒ぎを含め、前回の騒ぎも含めて当事者たちへのより詳細情報の聴取を。クリスティンは学生会含め、今までに騒ぎになった魔石関連の資料を集めることとした。


「役割、逆の方がいいと思うのだけれど」

「そうか? 妥当な割り当てだと思ったが。それに、聞き込みより資料集めの方が時間も手間も多いだろう。探掘コースに比べれば、まだ魔法騎士コースの方が時間が取れると思ったのだが」

「……それならば、まぁ、仕方がないのか」


 腑に落ちない部分もありつつも、労力が多い方を受け持ってくれるのなら、これ以上文句を言うつもりはない。


 2人は学校に着くまで、現時点でのお互いの情報の認識合わせに時間をつぶしていった。



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