先輩①
「あら、結局入れることに決めたのね」
その日の深夜。
1年生たちが寮の自室に帰って行き、数時間たったのち。そろそろ寮に戻ろうかと思い始めたあたりで、フレインとイサクが隠し部屋にやって来た。
先輩たちの飲み物を準備しながら、ユイは今日あったことを2人に話して聞かせた。
「……という感じです。やりたいことがあいまいだったけれど、2人とも悪い子じゃなさそうだったのでいいかなと思ったんですが……」
「ユイちゃんの決定に反対はしないわ。あとは一緒に過ごしていって、そこからその子たちのことを知っていけばいいんだもの」
「……うるさくなければそれでいい」
「イサク、あんたはもう少しくらい愛想よくしなさいよ」
やはり、先輩たちに話を聞いてもらうだけで安心する。
久しぶりにこの3人でゆっくり会話を楽しみ、全員での1年生たちとの対面は、次の休日に持ち越されることとなった。
そして、やってきた休日。
全員、昼頃に隠し部屋へと集まってきた。
「さすがにこの部屋、5人集まると手狭ね……」
入り口から一番最初にある部屋は、ソファや机などある程度掃除しても、5人が集まればかなり手狭だ。一応全員座れるソファやいすはあるが、密集度が高いことに変わりはない。
さすがに今日は部屋割りを変えることはあきらめ、1年生たちと5年生たちの顔合わせへと移っていった。
「ガウル・リナルソンっす。よろしくお願いします!」
「は、初めまして。ミ、ミア・ドッグソンです……。よろしくお願いします」
「ガウルとミアね。あたしは5年のフレイン・アダンソンよ。こっちはイサク・ナシュナージ。ユイちゃんから聞いてるかもしれないけど、あたしたち3人は探掘コースを専攻しているわ」
さすが、フレインというべきか。いつもの物腰柔らかな雰囲気で、すぐに1年生たちと打ち解けていく。対してイサクはいつもの調子で、ソファの端で足を組みながら、黙ってその様子を眺めている。
ガウルとミアも、最初のうちはかなり固い感じであったが、少しフレインと話していたら、だんだんと表情が柔らかくなってきた。
「あら、ミアは薬草の調合が得意なのね」
「と、得意といっても、基本的なものばかりですが……」
「それでも1年生からちゃんと調合できる子は少ないわよ。実はね、この部屋の奥にあたしとユイちゃんで育てている薬草たちがあるの。よかったら案内しようか?」
「こ、ここで育てているんですか?」
「えぇ、そうよ。じゃあ、ちょっと見に行きましょうか。ガウルもよかったら、奥の部屋を見に行く?」
「うっす、見てみたいっす」
そういって、フレインは1年生たちを伴って、奥の部屋へと案内していった。
主に話していたメンバーがいなくなり、ここにはユイとイサクだけが残った。
「イサク先輩は、新しい人を入れることに、反対とかはなかったですか?」
「あ?」
ユイの質問に、イサクは眉を寄せて聞き返す。
「別に反対なんかねぇけど……なんでだよ。俺がそういうとでも思ったか?」
「……正直、少しだけ。だって、私が入った時も、最初のほうはなんかずっと不機嫌だったような気がして。フレイン先輩は、それがイサク先輩の常だとは言ってましたけど、本当は嫌だったんじゃないかなと」
もともと、イサクが大人数で行動している姿を見たことがない。構内で見かけたとしても、たいていひとりか、フレインや2、3人ほどで歩いている姿を見かけたくらいだ。
隠し部屋では、さすがに3年近く一緒にいるので、普通に話はしているけれど、口数は決して多いほうではないだろう。それに黙っていたら、その顔つきから不機嫌そうだと思ってしまうこともあるので、新しく人を入れることについては直接聞かないとその真意は分からない。
ユイの言葉に、イサクは別にと答える。
「いつかは人が増えるとは思っていたことだし。それに、お前が選んだんだろ? 変な奴はいないだろうから、うるさくなければ俺はそれでいい」
「うるさいことはないと……思います」
ガウルの元気良さに少しひっかかったが、言葉弱めに否定をする。もちろん、半分冗談半分は本気だと思っているので、大丈夫だよなと内心心配する。
そんなユイの心境を知ってか知らずか、イサクはふっと鼻で笑った。
「そんなに心配すんな。別に決めたことにとやかく言いやしねぇよ」
そう言って、イサクはおもむろに立ち上がる。
「どこか行くんですか?」
「あ? あいつらんとこに行くだけだ。ほら、お前も行くぞ」
そう言って、ゆっくりと奥の部屋へと歩いていく。
珍しいと思いながらも、ユイもイサクの後について、フレインたちがいる奥の部屋へと向かった。




