第7話 憑依1 左手がうずく
第一章 量子重力理論に基づく特異点結合
第7話 憑依1 左手がうずく
よし、まずはこの見慣れないスキル「憑依」を試してみよう。
え~と、どうやって発動すればいいんじゃ?
普段の魔法のように、事象をイメージ化して魔力を込め、トリガーワードを言ってみればよいのかの?
憑依ということは、何かに憑りつくことだよな?
う~ん。
あたりを見回してみるが・・・。
この館の中は静かなもんじゃな。
黒装束たちが箒などを使って綺麗に清掃しておる。
・・・しておるが、音がほとんどしていない。
掃除一つに、凄まじい練度じゃな。
まあ、よい。
よし、まずは、あの庭にいる黒装束の箒に取り付いてみようか。
イメージして魔力を込め
「憑依!」
・・・。
発動しないね。
物体相手だとだめなのかね?
次は、あの黒装束本人にいってみようかね。
「憑依!」
・・・うん?
一瞬いけそうな気配があったが、魔素がはじかれるようにして消えてしまった。
う~ん、どうしようか。
そういえば、琢磨に撫でられているときは、気持ちの良い魔素を感じた気がするな。
相性の問題もあるのかもしれんな。
よし、次は琢磨を思い浮かべて試してみよう。
流れ込んできた知識によると、琢磨は高校一年生。
今日は、学校に行っているようじゃ。
ちなみにわしが今いる場所からは3Kmほど離れているらしい。
琢磨の顔をよく思い浮かべてみる。
そういえば、あいつに似ている気がするな・・・。
まあ良い。
今は、スキル検証に集中じゃ。
いくぞ!
「憑依!」
・・・
すると、目の前の空間がまばゆい光とともに、歪みだした。
次の瞬間、気が付くとわしは、
琢磨の左腕に「憑依」していた!
◇◇皇立 富士第一高等学校 一般生徒視点◇◇
龍禅寺琢磨。
高校一年生。
伝統ある神社の跡取り息子にして、
中学県道で全国2位。
高校剣道の世界でもトップクラスの実力者。
性格は、奢ることなく寡黙で実直。
黒く艶のある黒髪に束感ショートヘアスタイル。
身長は175㎝程で、体幹のしっかりとした歩き姿が美しい。
彼が歩けば自然に道が開ける。
そして生徒たちは遠巻きに羨望の視線を送り、口々に彼の噂話をする。
「今日もかっこいい」
「同じ空間にいるだけで幸せ」
「オーラがすごすぎて近づけないわ」
「さすが琢磨さん、孤高の漢って感じがするっす!」
などなど。
そう、その侍のようなクールな佇まいに、誰も気軽に近づけないのだ。
◇◇琢磨視点◇◇
うぅ・・。
今日も、絶賛みんなに嫌われているな~。
俺が視線を向けても、みんなサッとそらしてしまうし、今朝も下駄箱には呪いの手紙が嫌がらせのように大量に入ってた・・・。
(手紙は怖くて読んでいない)
でも、俺は負けんぞ・・・。
それよりも、なんだかさっきから左腕がうずく。
そう、まるで世界の闇を祓うべきフォースがこの腕に宿っているようだ。
ついに、解放の時が来たか?
くっくっく。
俺は左手を天高くかかげる。
『はい、琢磨君。この答えがわかるんですね!』
しまった、今は授業中だ。
先生にあてられてしまった。
まともに聞いていなかった為、質問すらよくわからん。
「・・・。いえ、わかりません。」
『ぷっ。』
くっ、隣の席にいる美月が馬鹿にしたような笑いを浮かべている。
こいつは、俺の幼馴染であるがゆえに、ほかの生徒たちとは違い、俺に対して一切の遠慮がない。
ちょうどチャイムが鳴り、授業が終わる。
休み時間になると、美月がニヤニヤ近づいてきた。
顔が少し熱いな。
決して恥ずかしいなどとは思っていないぞ、絶対だぞ。
きっと熱いのはこの部屋に風が入ってきていないからだな。
今なら左手の力を開放すれば、龍禅寺家の魔術を解放することができる気がする。
よし、このうずく左手で風の術を発動してやる!
「遍く大気よ、新たな息吹を芽吹かせる者よ。我が呼びかけに応えよ、風の術・壱乃型 “突風”!」
左手を下からすくい上げる様に上に掲げる!
すると、床から突風が突き上げる様に吹き荒れた!
「できた・・。ついに・・・!」
やはり俺の真のチカラが解放されたのか?
このチカラがあれば・・・
俺は左手を見つめる。
俺はこの時、まだ気づいていなかった。
美月の右ストレートが、俺の顔面に迫っていることを・・・。
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