⑦変態をやっつける究極の技
「ほーら、言ったでしょ? 彼女、強そうでしょう?」
阿部さんが鼻の穴を膨らまし、興奮気味に言う。
「まあ、強そうですけど……」
「いやぁ、それにしても凄いなぁ。闘神水を飲むと、こうなるのか。初めて見たなぁ……写真撮って、後で村の連中に自慢しよ」
阿部さんは、スマホを取り出すと、茜を撮影し始めた。
「えっ? ちょっと待って。もしかして、その闘神水って、誰も飲んだ事がないんですか?」
パシャパシャと撮影する阿部さんが、こちらを見ずに、口元を緩めた。
「……ははは。飲むわけないでしょう。あんな小便みたいな、臭い汚い水」
「えっ! ひどーい! それを飲ませたんですか?」
「でも、これでマサクニと対等に、いや、それ以上に闘えるはずですから!」
画像を保存した阿部さんは、スマートフォンをポケットにしまった。
そして、宙に浮かぶ茜へと近づく。
「さあ、茜さん、念力を使ってみて下さい」
「念力?」と、茜。
「ええ、巨大な物体でも、自由自在に動かせる事が出来ます。持ち上げたい物に掌を向けて、念じてみて下さい」
茜は阿部さんの言葉に従い、掌をかざした。
その先には、赤い三角コーンがある。
茜がフンと唸ると、それは五メール程の高さへと、浮かび上がった。
「わぁっ、凄い!」
私は、思わず叫んだ。
茜も、驚きと嬉しさに満ちた顔をしていた。
「では次に、マサクニをやっつける、究極の技を教えますね」
「えっ、究極の技?」
茜が阿部さんを見て、フッと力を抜いた。
すると、浮遊していた三角コーンが重力を手に入れて、落ちてきた。
——バコンッ‼︎
「ウギャーーーーー‼︎‼︎」
三角コーンは見事に、阿部さんの頭に当たった。
それも先端の尖った部分が、脳天に直撃したのだ。
「痛いぃ! 痛いぃぃぃ!」
阿部さんは両手で頭を押さえ、のたうち回った。
茜は「あ、ごめーん」と、反省の色なし謝罪。
私は、悶絶する阿部さんへと駆け寄った。
「だ、大丈夫ですか?」
「う、うーん……なんのこれしき……それより早く、究極の技を茜さんに教えないと……マサクニが戻ってくる前に……」
涙目の阿部さんは、脳天をさすりながら起き上がった。
「茜さん、ピストルのように人差し指を突き出してみて下さい」
「え? こう?」
茜が人を指差すようにして、手を伸ばした。
「死神消滅ビーム、と叫んで、指先からビームが飛び出すイメージを持ってみて下さい」
「えっ? こう? 死神消滅ビーム!」
「ウギャーーーー‼︎」
青い光線が、阿部さんへと命中した!
バリバリバリッ!
電流が流れ、阿部さんは前後に痙攣し始めた。
「あ、ごめーん、阿部さん!」
「ごめーんじゃないですよぉぉ! なんで私に向けて撃つんですか……あう……ゥゥゥ……」
ウ
ギ
ャ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
・
阿部さんは炎に包まれると、最後はフッと灰になって、消えてしまった。
しーんと静寂。
焦げ臭い中、私達は目を点にして立ち尽くした。
「し……死んじゃったね」と私。
——死んどらんわッ——
阿部さんの声がした。
「あ、阿部さん? どこ?」と、茜がキョロキョロ、見回した。
——私は死神ではありませんから、この攻撃では死にませんよ。ただ身体が消滅してしまったので、元いた場所に帰ります。君達は協力して、なんとかマサクニをやっつけて下さいね——
「任せて、阿部さん!」
茜が、力強く拳を握った。
——頼みました……よ……——
阿部さんの声が、遠退いていく。
その気配が完全に消えると、茜は厳しい表情を見せた。
「阿部さんが消えちゃった……。許せない、絶対に許せない! 阿部さんのカタキは、私が必ず取るからね!」
「いや、阿部さんを消したのは茜だよ……」
つづく……




