油断
今日こそは、帰宅部エースは早く帰りたい。
帰りの会が、そろそろ終わると勘付いたぼくは、フライング気味でバッグを背負っていた。
すると先生がぼくをみて、クラス委員は放課後、話し合いなーと、お残り発言をしてきたじゃないかっ‼︎
「はーい」
と、元気よく隣の人が言った。
は?
「クラス委員は、ぼくなんですけど?」
「わたしも立候補したんだよ?よかったね、ゆうちゃん。わたしと放課後も一緒で」
…
この人は、いったいなんの目的でぼくをつけまわすのだろう…
よっぽど小瓶飼育に頭きてるに違いない。
なんとか、ぼくに仕返しがしたいのだろう。
どうやって仕返ししてもらおうか…
仕返しさえ終わってしまえば、もうぼくにつきまとわないはずだ。
言ってしまった言葉は、取り消しがなかなか難しいから…
うーん…
どうにかして、美名川さんの怒りをしずめさえしてしまえば、もうぼくとのかかわりもなくなるってことだ。
褒めちぎれば機嫌よくなるのかな?
かわいいねとか、美人だよね?って⁇
…いつも言われてそー。
うーん…
「ねぇ、行かないの?クラス委員の集まり」
「えっ、ああ、行きます。」
美名川さんの子分にでもなったかのように、美名川さんの後を追った。
なんでぼくが、美名川さんについていくんだよ…
あー、でも同じ教室に行くんだもんな。
こればっかりは、仕方ないんだよね…。
「ねぇ…ゆうちゃんは、いつわたしのことあやちゃんって呼んでくれるの?」
…
美名川さんがぼくの方を振り返り、ん?って首をかしげた。
ん?
ぼくも首をかしげた。
そんなの、呼ぶわけがない。
「なんで首をかしげるの?これは、鏡かなぁ?」
「そうかもね」
「へぇ」
静かな学校ってなんか落ち着くようで、そうでない。
ぶっちゃけ、薄気味悪い。
「あのさ、美名川さん」
「なあに?」
「なんでクラス委員なんて立候補したの?」
「それは…なんでも挑戦してみたいからかな」
「…ふーん。好奇心旺盛なんだね」
「そうかもしれないな。あ、てかさ…昨日のお礼に今度うちに来ない?というか、来て欲しいな」
⁉︎
えっ、なぜ⁈
はっ‼︎
まさか、ぼくが魔女の餌食に…
こわ…
魔女に監禁されるとか、こわ…
あ…
え…
監禁ってこわくね?
いまさらだけど、ぼくは…
ぼくは、美名川さんを怖がらせていたんじゃ…
それで仕返しを企んでいたのか?
いつかそんなお前を黙らせるって…こと?
…
「あの、美名川さん…」
「どうしたの?」
「ぼく…ごめんなさい」
…
「え、な…なんで?まだ告白してないのに、なんでごめんなさい?」
…
告白?
なんのだよ⁈
実は魔女でしたー‼︎って?
それとも…魔法使い⁇
…
「告白?」
「ああ、ううん。なっ…なんでもないよ。そうだよね…うちに来るとか、ないよね…ごめんなさい」
…
いや、もしかして家に行けば何かがわかるかもしれない?
魔女なのか、それとも魔法使いなのか…
「行く。今日集まり終わったら、行きたい」
「え、今日?」
「うん」
今日行けば、なんか秘密を見破れる可能性が高い。
慌てて隠しても、隠し忘れたものとかでてきそうな気がする。
「今日か。うん!いいよ」
…
意外とすんなりだな。
あとで後悔するがいい。
…
もしかして後悔するのって、ぼくじゃないですよね?
…
美名川さんは、きっと相当お怒りなのでしょう。
だからぼくに懐いているフリをして、ぼくを陥れるつもりなのだろう。
なぜぼくは、あんな嫌がらせ言葉スプレーを美名川さんに浴びせてしまったのだろうか。
…
いやいや、負けてたまるか‼︎
ぼくだって、やるときはやる‼︎
だってぼくの夢は、夢は…
特にない。
あー、夢なんてなかったわ。
とにかく毎日いかに早く帰れるかって、それが生きがいみたいなものだったからなぁ。
つまらんな。
でも、とにかく今は負けられない。
魔女だか魔法使いだかしらないけど、なぜか美名川さんとのバトルは、きちんと決着をつけなければならない気がする。
気のせいかもしれないけど、それでもいい。
「ねぇ、見陰くん」
⁉︎
いきなり苗字呼びするとか、びっくりするだろう。
そう、ぼくの苗字は見陰だ。
「なっ、なに?」
「ふふ、そんなに驚かなくてもいいじゃない?」
「いや、いきなり苗字で呼ばれたから…びっくりして」
「ゆーちゃんのほうがいい?」
…
「いいわけない」
「へぇ。でね、ゆーちゃん」
「人の話、聞かないよね」
「へへ、でさぁ犬と猫どっちが好き?それともわたしが一番好き?」
⁉︎
な…なんて質問を。
…
「ワン」
「え?」
「ワンだよ」
「えっ、もしかして…犬のことワンちゃんって言ってる?かわいい、ヤバいね。かわいいー」
…
「いや、犬一択って言いたかったんだけど…。いちとワンでさ…」
「そうなんだ?じゃあ、ワンチャンあげます。」
⁉︎
「アイス好き?」
…
「うん」
「同じだね。わたしも愛す」
?
「え?なに?」
「ううん。なんかゆうちゃんといると楽しいな」
…
え、かわいい発言だな…って‼︎
ほっこりしている場合じゃない‼︎
めっちゃ美名川さんのペースじゃないか…
危ない危ない…
気を引き締めねば。
続く。




