おうち
美名川さんは、昨日のことを恨んでいるのだろう。
そりゃそうか。
あんな言葉のスプレーかけられた挙句に、キモ笑顔までお見舞いさせたのだから。
怒って当然だ。
やってみなさいよ‼︎わたしを小瓶に入れて飼育してみなさいよ‼︎ってことなのだろう。
案の定、今日一日ずーっとこっちをみてきた美名川さん。
そして、帰宅部エースのぼくは美名川さんから逃げるべく、一目散に下駄箱へと向かった。
しかし、いる…
ぼくの後ろに美名川さんが。
これは、どうしたことか…
仕方なく、先に美名川さんを追いやったほうがよさそうだ。
ゆっくりゆっくり歩いて、先に行ってもらう作戦だ。
しかし…
一向に抜かされない。
というか、そもそも方向が一緒すぎる。
このままずーっと一緒じゃないだろうな⁉︎
今日から義妹になります♡的な展開になったりしないよな⁉︎
恐る恐る振り向いて聞いてみた。
「家、どこ?」
って。
そしたら美名川さんがまさかの逆方向を指差した。
⁉︎
「じゃあ…なぜこっちに⁉︎」
「だって、小瓶飼育してもらうからだよ?」
と、イタズラに笑う美名川さん。
「はあ?非現実的すぎるでしょ」
「できるよ?だって昨日言ったよね?」
…
おそろしい人だ。
いや、そもそも人じゃない可能性大だ‼︎
執着心半端ないオバケやん…
「いや、ムリだってわかるよね?そもそも、まず捕獲してポケットに入れるつもりだったんだけど、ポケットに入らないよね。残念だなぁ」
と、わざと言ってみた。
すると…
⁉︎
「えっ⁉︎な、なにしてんのっ⁉︎」
美名川さんがぼくのポケットに手を入れた。
「ね?入れたよ?」
「とりあえず手、どけてよ」
二人で同じポケットに手を入れガサガサしていた。
手…ホッソ‼︎
…
「あらーぁ?ゆうちゃんじゃない?仲良くポケット手繋ぎして♡いいわねぇ♡」
と、まさかの母さんが両手ハートを手でつくり、ぼくたちを手のハート越しからみていた。
「母さん…なにしてんだよ…」
「お買い物ー♡お二人は、おうちデートね♡さ、うちここだから、どうぞどうぞ〜」
ニマァ
母さんが、めっちゃにやけていた。
「おじゃましまーす」
と、普通に入ってくる美名川さん。
…
この人…いや、この魔女ヌルっと侵入に成功していやがるぜ。
さすがだよ。
魔女さん。
まさか、母さんまで魔女じゃないよな⁉︎
目的は、なんなんだ…
…
とりあえずぼくの部屋に閉じ込めた。
母さんまで巻き込まれたら大変だ。
ぼくの部屋に入るなり、ぼくの本や小物をじろじろみてまわる美名川さん。
そして、ぼくの一番のお気に入りの置物を指差し、これわたしに似てない?なんて言ってきた。
…
「別に…。」
「そうかなぁ?似てると思うんだけどなぁ」
…
ジーッと置物をみる美名川さん。
やめてください。
ぼくの大切な置物に、念を閉じ込めるのやめてください。
そう、ぼくも無言で美名川さんに念をおくった。
お互い念をおくりあっていたら、母さんが乱入してきた。
ゆうちゃんの大好物シュークリームだよーってね。
「わぁ、ゆうちゃんはシュークリームが好物なんですね!おぼえておきます‼︎」
と、美名川さんがくらいついた。
ゆうちゃん呼びやめてほしい。
…
しかし、なぜだ…
なぜぼくの好物をおぼえる必要があるのだ?
まさか…
いつか好物に毒でも入れるつもりか⁉︎
…
母さんが立ち退いた後、ぼくは美名川さんに質問した。
「美名川さんの好きな食べ物はなに?」
と。
すると
「金平糖と…あと、わたしもシュークリームが好きだな」
って返してきた。
こ、これは…
仕返し毒盛りをするとき、相手に油断させてわたしも食べるから安心ですの罠じゃないか。
…
…
油断ならないな。
ところで、普通にぼくの部屋に潜入してきた美名川さんだが、目的はなんだ?
「あのさ、美名川さん?今日は、なぜぼくの部屋へ?」
美名川さんが最後のひとくちのシュークリームを頬張って、モグモグしだした。
モグモグもまたかわいい。
⁉︎
いやいや、危なっ‼︎
うっかりかわいいなんて、ぼくは…どうかしている。
モグモグタイムを終えた美名川さんは、なにやら自分のバッグをあさり出した。
そして、瓶を取り出した。
⁉︎
あの例の瓶…
これをどうしようと?
…
「ここでいい?」
⁉︎
なにがだよ⁉︎
「どういうこと?」
「わたしを小瓶で飼育するんでしょ?」
…
「あー、そこでいいよ。てかさ、もうぼくの部屋に監禁されてるね。自分から監禁されにくるなんてどうかしてるね」
「ほんとだね。じゃあ、今日はお泊まりかな?お泊まりセット持ってきてないなぁ。どうしよう」
…
いや、それは危険だ!
ぼくが魔女の餌食にされそうだ。
「いや、帰りなよ。」
「ふふ、じゃあ監禁じゃないじゃない」
…
「そうだね。じゃあ、送る」
「うん、ありがとう」
…
なにこの会話。
普通のカップルかよ⁉︎
意味がわからないが、とりあえず美名川さんを送ることにした。
なんだったんだよ…
続く。




