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家を追い出された貴族の庶子、名探偵として姉の死の真相を爆乳ムチムチオネエさんメイドと追う!  作者: 和泉 弘幸


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致命傷なき出血死 3



「こんにちはシスター。 レフ・アネモヌンと申します。 約束はしてないのですが、司祭様に取次をお願いします」


 俺は昨日来た教会に顔を出していた。

 ポーションを商業ギルドに卸して、その売上の一部を寄付をしにきた。 そのついでに司祭様とお話をするという口実だ。


 寄付しなくても問題はないが、タダで教会の時間を取らせると心証を損ねてしまう。

 生臭がよ!と思うが前世の記憶を持って転生した身としては、生まれも、能力もかなり恵まれているので誠意を示せるのならば示しておきたい。

 俺では手が届かない貧民層の民にも教会は手を差し伸べている。

 その事実は紛れもなく立派であり、多少着服されようが恵まれぬ人に届くなら構わない。

 


「おい貴様、錬金術か? しかも隣にいる奴はなんだ! なんとおぞましい姿をさせている!」


 司祭を待っていると後ろから怒鳴り声が聞こえた。

 面倒臭いのが来たなと思いながら振り返る。


「はい、錬金術をさせていただいております、レフと申します。 本日はポーションの販売利益の一部を主に納めに来ました」


「ふんっ創造主が創りし物質を人が作り替えるなど、なんという冒涜だ! それになんだ! 隣のそのおかしな格好の男は!」


 よし!殺すか!!

 いやダメだ。 ここで殺したら現行犯だ。

 今ここではまだ殺すべきではない!


「俺の生涯の友をバカにするとはいい度胸だ! 差別主義者は主のお言葉と意志をねじ曲げて己の都合のいい風に解釈するか!!! 神が禁じているのならば錬金術など存在するはずがないし、神は完璧で万能であらせられるので、妙な格好をしている奴がいても問題あるまい! それとも何か? 服が怪しいというのか? 服ぐらいア・ウンが作りし、主の像も着ておられるわ! それともなにか! 生まれた時に裸の人間は服を着るべきではないと申すか! 流石は原理派だ! なら今すぐ服を脱いで賛美歌でも唱えていろ!!!」


「な、なんだ貴様は!! 無礼であるぞ!」


「黙らっしゃい! 主が与えし、錬金術の力を否定するだけでなく、このレフ・アネモヌンの生涯の友であるカレウス・ベルフラワー卿にも礼を欠くとは何事だ!!! 修道士ならば世のために神を称えながら聖書でも書き写しておけ!」

 

「れ、レフ・アネモヌンだと! 貴様!! あのばっ――」


「その汚い口を閉じなさい」


 俺が拳を握った瞬間に、カレウスが右ストレートを放ち、意識を刈り取っていた。

 そして倒れた修道士を一瞥するとすぐに俺の方を見た。


「きゃーー怖かったわ♡」


「ふんっ!」


「もう! そんな照れなくてもいいじゃない♡」


 抱きつこうとするカレウスにひ弱な俺の顔面を狙った右ストレートが普通に受け止められてしまった。

 それはそれとして、そこで倒れている過激な原理派は司祭に引き渡したあとで、実家のアネモネー家から働きかけるか。

 どのくらいの地位にいるかは知らんが、ただの修道士が陛下の義弟であり、名誉爵位とはいえ、貴族をバカにしたなど許されることでは無い。


 「そんなことより、レフちゃん早口で捲し立てて、うやむやにするのも悪くないけど、ああいう手合いはさっさと潰した方がいいわよ? 特に過激派の連中なんてロクなもんじゃないわ」


「そうしたかったんだが、うっかり殺してしまいそうになって、早口で捲し立てて怒りを昇華したんだ」


「レフ卿! お待たせ致しました! って何事です……いえ何でもありません。 この者の処罰は正式な文書でくだされば必ずいたします」


司祭は一目見ただけで全てを察したようで、少し気まずそうにした後に処分を約束してくれた。

 俺としても手を出したのは良くないが、俺への侮辱だけではなく、姉への侮辱をしていたらコイツだけの処分では済まなくなったのでカレウスに感謝をしている。

 コイツらは過激な原理派であり、人間至上主義を掲げて、所謂、亜人と言われるエルフ、獣人、ドワーフなどを人として認めておらず、その地を征服すべきだなどと言う過激な思想の持ち主だ。


 姉は亜人との融合政策を押しており、武ではなく和と経済をもって王国の力を伸ばそうとしていたので、コイツらから見ると異教徒を招き入れようとする敵だったのだ。

 もっとも原理派では穏健派と過激派が分かれており、過激派は数が少ないが昔からの権力者が多いからややこしくなっている。

 

「お願いします。 もちろんこの方が特殊なだけで他の方々はそのような事はないと存じておりますので」


「お心遣いに感謝いたします。 して今日は何用ですか?」


「おぉそうでした! 実はオーキナー氏が亡くなる前辺りから、信仰が厚いご老人が老衰で相次いで亡くなったというのは本当ですか?」


「そういえば確かに短い間隔でお亡くなりになられた方々がいましたね。 それについては先程の者が詳しいので、そちらをお呼び致しましょう」

 

司祭はそういうと駆け足で離れて、先程司祭を呼んでくれたシスターを連れてきてくれた。


「あら? 貴方は先程の。 どうなさいましたか?」


「これはシスター。 実は司祭様と医師のデルン伯爵夫人に依頼を受けて謎の出血死されたオーキナー氏の調査をしておりまして、夫人からここで短い期間に敬虔な信徒のご老人が相次いで老衰で亡くなったと聞きまして、何か大事なことが隠れてないかとお話をお聞き出来ればと思い呼んでいただきました」


「分かりました。 最近老衰で亡くなったのは3名です。 その3名は全員富裕層であり、毎日熱心にお祈りをしておられる敬虔な信徒の方でした。 私が見た限りですとご遺体に不自然な点はなく、持病と言っても足腰の痛みなどの関節の節々などの年齢から来るものだけだったと思います」


「ありがとうございます。 皆さん健康だったんですね」


 老衰と思われたなら司法解剖などすることはない。

 そもそも司法解剖をすること自体が稀なのだ。

 貴族の遺体を切り刻むなど恐れ多いと言われているし、死者への冒涜という人もいる。

 余程のことがない限りは司法解剖はしていないのだ。


「えぇ。 不審な点はなかったと思います」


「分かりました。 どんな些細なことでも構いませんので、何か分かれば教えてください」


 ここで得られる情報はもう無さそうなので、面倒な連中が来る前に退散することにする。


「カレウス。 すまないが先ほど聞いた、老衰で亡くなられた3名について、ご遺族と周りの方から話を聞いてきてくれないか?」


「もちろん♡ そんなに遠くないし、夜までには戻るわ」


「ありがとう。 父にさっきの修道士のことを手紙に書いて、夕食の準備をして待ってる」


「あら旦那様の手料理なんて久しぶりね♡ なら頑張っちゃうわ」


 カレウスがそう言って遺族の方を回ってくれるので俺は先に家に帰ることにした。

 カレウスは少々個性的だが、その腕っ節とコミュニケーション能力から男女問わず人気が高い。

 教養があり、仲良くなるためにお土産を渡したりと気が利くし、身元もハッキリしている不審者なので、こういう時は貴族である俺よりも彼の方が適している。


 俺もコミュニケーション能力が低いと言うほどではないが、やはり貴族であり、富裕層を相手にしている法律家なので少々、市民の方は遠慮してしまい、小さなことを話せなくなってしまうのでカレウスに任せている。


 決して友人が少なかったり、市民に嫌われているわけではない。





「何かで世界一美味しいコーヒーは他人が淹れたコーヒーと言っていたが、たまには自分で淹れたコーヒーを1人で飲むのも悪くない」


 カレウスというか貴族は基本的に紅茶派なのだが、俺はコーヒーの方が好きなので少々値は張るが仕入れてもらっている。

 俺の記憶だとコーヒーは当初は貴族の飲み物だったが違うのなら、純粋に流行ってないのか何でもかんでも前の世界の歴史と同じような文化にはならないということなのだろう。


 もしかしたら人体や魔物にも俺の知識と違うものがあるかもしれない。

 誰かを告発する場合はその人を殺すことになるかもしれないのだから、慎重に慎重を重ねていこう。

 今回は本当に誰かの首が飛ぶことがあるかもしれないのだから。


「そもそも老衰って曖昧なんだよな。 確か自然死を老衰と呼ぶから持病もなく、死因が分からない老人などをそう呼ぶんだったな。 心不全が病名ではないように、心不全などを含む、よく分からないけど高齢者が機能の衰えで亡くなるのが老衰だ」


 これは間違ってはいないはず。

 医療ミステリーか掲示板みたいなところで見聞きした記憶がある。


「出血死。 これは文字通り出血死が原因となり亡くなる」


 これはさすがに世界共通だと思う。

 とりあえず発想を逆転させてみるか。


 出血死とは要するに傷が塞がらず、血が足りなくなり亡くなることだ。

 血といえば蚊、ヒル、あと吸血鬼だな。

 外傷はないからどれも違いそう、、、

 いや違う。 吸血鬼の噛み跡くらいポーションなどで治る。

 老人を狙い少しづつ血を吸ったのか?

 それなら徐々に衰弱するな。


 いや待てよ。

 確か蚊は血を吸う時に血を止まりにくくする抗凝固作用のあるものを刺して血を吸うはずだ。

 仮に吸血鬼なら同じようなことをするのも考えられる。


 しかし、本当にそうなのか?

 吸血鬼は家主に呼ばれないと入れないし、若い女性を狙うイメージがある。

 いやしかし人間の生活に順応している吸血鬼であればあるいは?


 こういう時のお決まりは教会の誰かに吸血鬼が扮している。

 証拠は何もない。 しかし仮説としてはなくは無い。

 

「とりあえずカレウスの話を聞いてみてからだな。 吸血鬼なら教会の管轄だし、俺はこの世界の吸血鬼について知識が少ない。 まだ判断するにはあまりに早いが、もし吸血鬼なら犠牲者が増える前に何とかしなければならないな」


 まだ可能性があるという段階だ。

 正直、未知の魔法で殺害したという可能性もあるし、吸血鬼の仕業というのであれば、吸血鬼がいるという証拠を掴まないと誰も納得しないからな。


 とりあえず俺は机の中から予備の手帳を取り出す。

 こちらは普段使いのものではなく、俺に何かあった際にそれまでの事件概要や、誰と会ったかを記している物だ。


 そして事件の概要と分かっていること、推測を書き出しておく。

 俺に何かあった際にカレウスが引き継いでくれるように。




 事件概要


 オーキナー氏が髭を剃っていたところ、誤って肌を切ってしまい、出血が止まらず出血死。

 治療時にポーションも回復魔法も試したが効果がなく死亡。

 彼は敬虔な信徒であり、毎日のように教会に通っていた。

 司祭の話では呪いでは無いらしい。

 医師の話では病気では無いらしい。

 

 また関係性は不明だが、同じ教会では3名の老人が相次いで老衰で亡くなったらしい。



 現在の仮説


 未知の病気による病死。

 教会も感知できない呪い。

 

 吸血鬼説……毎日血を吸って傷を治していたら可能かもしれない。 この場合、疑わしいのは教会関係者。

 

 

 今のところはこんなもんか。

 まだ情報が足りてないな。

 少なくとも吸血鬼の仮説を証明するには痕跡は必要だな。

 また教会に行くしかない。


「レフちゃ〜ん♡ 貴方の素敵な専属メイドのカレンちゃんが帰ったわよ♡」


 カレウスが帰ってきたので手帳を閉じて、自室から出て、夕食を完成させることにした。

 詳しい話は食後にでも聞くとしよう。 

 




ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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