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家を追い出された貴族の庶子、名探偵として姉の死の真相を爆乳ムチムチオネエさんメイドと追う!  作者: 和泉 弘幸


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致命傷なき出血死 5





「今回のことは儂には判断できん。 だがデルン伯爵夫人は医師として知っておくべきだし、教会も知っておくべきだ。 なので説明して教会にどのように発表するかを任せてしまおう。 奴らの儲けを減らしたり、メンツを潰すと貴族より面倒だからな」


 父であるサウダーデ・アネモネー伯爵がそう決めたので、伯爵家の屋敷にデルン伯爵夫人、西の教会の司祭、南の教会の司祭とそれぞれの修道士を連れて来てもらった。


「皆さんお集まりいただき、ありがとうございます。 本日お呼びだてしたのは事件の全貌を把握できたからです」


「あら分かったのね。 もっと時間が掛かるかと思っていたけど、流石はアネモネーの希望。 そしてサラクタ・ヴィーゼ側妃に最も期待された子ね」


「過分な評価を頂き恐縮です」


 本当に過分な評価だ。

 前世というチートがあるから、小賢しく生きていられるだけなのだから。

 しかしこの記憶はきっと前世の行いが良かったのだろう。

 困った時は前世の行いにしておけばいいと太平記も言ってるからな。


 あと別にアネモネーの希望って実家は衰退どころかイケイケで勢力を増しているんだが?


「しかしレフ卿。 わざわざ回復魔法を得意とする者を、連れてきて欲しいとはどういうことでしょうか? いえ、事件の解決のためには協力は惜しみませんが気になってしまいまして」


「西の司祭殿。 これから行う事実の証明のために来て欲しかったのです。 教会ならばご存じかもしれませんが、やはり目に見える形にした方が納得しやすいでしょう」

「先に申し上げますと、今回の事件は法律家としては教会側の落ち度であり、告発されれば殺人か過失致死に当たる可能性もあると申し上げます」


 俺の言葉に教会関係者が強張り、次第に怒りを感じて拳を握り締める者もいるが、まずは話を聞こうという大人の態度を取ってくれている。


「まずは今回の事件のおさらいから始めましょう」


「また話すの?と思われちゃうかもしれないけど、様式美だから我慢してね♡」


 カレウスの言う通りだ。

 どのミステリーでも解決パートに入ると大体は事件を振り返って視聴者に分かりやすくしている。

 刑事役ばっかりやってる『必ずホシを挙げる!』という台詞が印象に残る俳優さんも、2時間ドラマの帝王も事件のおさらいですと言っているからな。


「事件の発覚は1人の老人が切り傷の出血が止まらないというものでした。 教会側の主張は呪いではない。 医師であるデルン伯爵夫人の主張は病気ではない。 意見が割れてしまったので私が呼ばれました」

「調査を進めていくと奇妙なことに西の教会では他に熱心な信徒でお金に余裕がある老人が老衰で3名亡くなっていることが分かりました。 回復魔法やポーションが普及していますが、それでも高度な治療を受けるには高額な費用になり、貴族階級以外が老衰で亡くなるのは市民だと結構珍しいものです」

「そしてもちろん老衰なので、徐々に身体が弱っていたそうなのですが、私がこの3名と今回のオーキナー氏の件を結びつけたのは彼らが85歳という年齢が同じであり、作為的なものを感じたからです。 どう考えてもおかしいでしょう」 


 素人目線でも明らかにおかしいのだ。

 教会は良くも悪くも死に慣れてしまっているから、気づかなかったのかもしれない。

 いや、そもそも亡くなった人を弔うことはするが、原因の追求などは教会の仕事では無いので気にしてないのかもしれないな。


 葬儀屋探偵に出てくる、その道35年の1級葬祭ディレクターとかじゃない限りは弔う遺体に違和感など見つけないのかもしれないしな。

 


「レフ卿。 確かに奇妙ですが、それくらいの年齢だと死亡時期が重なることもあると思います」


 南の司祭がもっともなことを言う。

 普通にしていたら、ただの偶然で片付けられることだろう。

 この3名については何の証拠もないし、遺体を見た訳でもないので本当は違うかもしれない。

 だが状況的に俺は間接的とはいえ、教会が死に至らしめてしまったと考えている。


「そうですね。 ある意味での寿命とも言えるでしょう。何故ならこの3名は教会のおかげで85歳というご高齢になるまで生きることができて、教会のせいで85歳で亡くなったと私は考えています。 そして本題の事件であるオーキナー氏もまた教会のせいで亡くなったのです!」


 本当に言いたくは無い。

 この件に関しては教会もそんなに悪くはないし、正直この世界で、この年齢まで生きるのは貴族以外では難しいし、病気に対して回復魔法が効かないこともある中で、彼らは本当に頑張っているのだ。


 あっこれもしかして貴族も下手したら殺してしまってるな。

 貴族どころか国のトップまで殺ってしまって――いや、考えるのはよそう。

 俺には関係ないことなのだ。


 大きく息を吸ってゆっくりと吐く。

 酸素を身体中に巡らせて、教会の過ちを暴くことにした。


「オーキナー氏が亡くなった原因は教会に行って、ほぼ毎日回復魔法による施術を受けていたことです!!!」


「「「「「「回復魔法だと!?」」」」」」


 俺の告発に教会関係者だけではなく、デルン伯爵夫人も驚愕し、目を見開いた。

 ここで説明をしても良いのだが、おそらく長くなる。

 まずは見て分かってもらい、理屈を話して理解してもらうのがいいだろう。

 ここが勝負所と判断をした俺はカレウスにあるものを持ってきてもらう。

 

「なぜ人を救うはずの、神に与えられた回復魔法が人を殺めることになったのか。 まずは今回起こったことを見ていただきましょう」

「こちらはデルン家から提供していただいた生後1ヶ月のネズミです。 それではすみませんが修道士の方はちょっと来てください」

「ありがとうございます。 これからネズミの致命傷にならない程度に傷つけていくので回復魔法をお願いします。 ではよろしくお願いします」


 俺はネズミの背に軽くだがナイフを刺し込む。

 うっ、、、生きてる生物を刺す感覚はどうも慣れないから嫌悪感が出てしまう。

 ナイフを抜くとすぐに回復魔法を掛けてくれる。

 ネズミに神聖な回復魔法を〜とか言われたらどうしようかと思ったが、怪訝な顔をしながらもやってくれている。

 伯爵家にくる人材だし、教会も自分が依頼を出したからか、かなり融通が効く人を選んでくれたようだ。


「それではまた傷つけるのでよろしくお願いします。 先に申しますとこれを数回繰り返したら、ネズミは回復魔法を掛けても出血が止まらず、オーキナー氏と同じ死に方をするはずです」


 俺の発言に関係者がザワつくがこれは間違いなかった。

 既に昨日の段階でポーションを使って試したが、やはり同じようにネズミはポーションが効かなくなり、出血が止まらず死亡した。

 回復魔法とポーションはアプローチの仕方こそ違うが、回復の理屈は同じなのだから。

 

 実験動物=モルモットというくらいには、ネズミは転生前の世界でも動物実験によく使われており、寿命もそんなに長くないので効果がわかりやすい。


 ちょっと罪悪感はあるのだが、亡くなればレリヴァの餌にするし、この世界ではネズミは前世とは比べ物にならないほど悪質な害獣だ。

 疫病はめちゃくちゃばら撒くし、何より主食である麦を食い散らかす迷惑ものだ。

 農業革命が起こっておらず、前世とは収穫量が大きく違う世界なので本当に許すことが出来ない生物なのだ。


 可哀想なネズミを傷つけては治すことを、何度か繰り返すと、ついにその時が訪れた。


「おぉ! 先程から効きが悪くなっていましたが、ついに治ることなく出血が続いていますね」


「馬鹿な! 主に与えられた奇跡にこんなことが!?」


 デルン伯爵夫人が強い関心を示して、西の司祭は信じられないといった風に驚く。


「これは回復魔法のせいではなく、生物である以上は当然の

摂理なのです」


「レフ卿。 これはどういうことなのか説明出来ますでしょうか?」


 血の凝固作用が無くなってしまったからと言えば楽なのだが、そんな知識はまだ俺以外は誰も持っていないだろうし、俺も聞いたことあるだけなので詳しい理屈や証明方法を知らない。

 だがここが大事なところだ。

 胸を張って堂々としなければならない。

 

「もちろんですデルン伯爵夫人。 簡単に言えば回復魔法の使い過ぎにより、本来人が持つ治癒力を使い切ってしまったのです。 回復魔法とは色んな説がありますが、治癒力の前借りや、体力と魔力を消費して治していると言われています」

「つまりオーキナー氏は毎日のように回復魔法を使うことにより、人が本来持つ治癒力を使い切ってしまい、傷が治らなくなってしまったのです」


「……言わんとしていることは理解できました。 それでは他の老衰で亡くなられた方々は何故ですか?」


 細胞が再生しなくなるとかそういう事だと思うのだが、多分まだ細胞という概念がないのでその説明ができない。

 どう説明したものか。


「歳をとるということは身体のあらゆる機能が衰えているということです。 髪の毛が抜けてもまた生えるように、人の身体には再生する機能があります。 お年を召すとこの機能が弱くなります。 回復魔法の使い過ぎで治癒力を使い切ってしまうと、こういう機能が衰えて、体内で問題が起きても治せなくなり、衰弱して眠るように亡くなってしまうのです」


 少し話についていけなさそうな父や、ショックで上手く理解できてない司祭の為に例を出して説明してみるか。

 

「つまりですね。 命という泉の水があるとします。 この水は生きていくうちに自然と無くなってしまうのですが、怪我をした際に徐々に水を使って治します。 回復魔法を使うと一度にたくさん無くなる代わりにすぐに治ります」

「そして人は生きているだけで必ず身体に不調をきたします。 腰痛などの節々の痛みは皆様もご存知でしょう。 そこは普通にしていれば治らずに付き合っていくしかないですが、回復魔法を使うことにより、泉から水を消費することで治すことができます。 しかしこの泉は水が湧き出ることはなく、使用すればするだけ無くなってしまうのです」

「オーキナー氏や他の方々も回復魔法を日常的に使っていなければもう少し長生き出来たかもしれませんし、何かの病気で亡くなってしまっていたのかもしれません。 個人的には十分な長寿ではあると思いますが、本当に体調の悪い時以外は回復魔法を控えていればこのような亡くなり方をしなかったのではないかと考えます。 少なくとも今回の事件の直接的な原因は間違いなく回復魔法を過剰に使ってしまったことだと私は結論づけました」


 以上、レフ・アネモヌンでした。と心の中で付け加える。

 今回の件で教会がどのような判断を下すかは分からない。

 だがこれを機に回復魔法の使用の見直しや、ポーションに対しても毎日使うのを控えるように通達して欲しいと思う。


 そしてデルン伯爵夫人もまた回復魔法だけに頼ってはいけないと、医学や薬学を進歩させて欲しいと思う。


「レフ卿。 事件の真相、確かに聞かせていただきました。 私にはどうするとは言えませんが、上層部に報告を上げて安易な回復魔法の利用は控えるように通達を出してもらうように働きかけましょう」


 南の司祭が険しい顔をしながらそう言ってくれた。

 長年人々のために修行して戦ったご老人は人命を第一に考えてくれたらしい。

 念の為、もう一押しだけしておくか。


「司祭様。 どうかお願い致します。 このことは間違いなくデルン家によって王家には伝わりますので、もしこれから先に似たようなことがあれば責任を追及されると思いますが、今なら初めて知ったなどで問題なく済むのです。 またオーキナー氏の件で怯える民をこれ以上、不安にさせないためにも、どうかよろしくお願い致します」


 名誉爵であるとはいえ貴族の当主である俺が頭を下げるのはそれなりに役に立つ。

 この国では聖職者には敬意を払うが、貴族の方が偉い。

 俺が頭を下げた以上は向こうも邪険に出来ないはずだ。


「レフ卿、頭を上げてください。 貴方の人々を想う心は確かに受け取りました。 必ずこの危険性を広めるように致します」


 南の司祭は俺の手を取り、そう言ってくれた。

 その後は西の司祭と少し話して、父であるサウダーデとデルン伯爵夫人らと話し合って帰ることになった。


「ではアタシがお送り致しますわ」


 カレウスが送ってくれるそうなので、その間に父から姉であるサラクタ・ヴィーゼ側妃暗殺事件の捜査資料を受け取ることにした。

 カレウスにも見せたいが事件関係者であり、王家に極秘資料に指定されているものを見せる訳にもいかないので仕方ない。

 俺に何かあればカレウスに引き継ぐことになっているので、余計なことを今知ってしまって俺と一緒に消されてしまう訳にはいかない。


 そんな理由もあり、俺は父から極秘で資料を受け取り、改めて心に誓う。

 


 姉上。 実母が亡くなり、辛い時期でも新しくできた俺を気にしてた心優しく、誰よりも国の発展を願っていたアネモネー家の至宝。

 貴女の墓前に必ず犯人の確保の報告をしましょう。



 

 








ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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