第十八話 攻略法
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ドゴォォォン!!
地面を突き破って現れたアースリザードは、家畜小屋を尻尾の一撃で粉砕した。
木片が宙を舞い、農夫たちの悲鳴が響く。
「に、逃げろーっ!」
「子どもたちを連れて行け!」
農場は一瞬で混乱に包まれた。
一方、ガルドたち三人の冒険者は、突然現れた巨大な魔物を前に顔を青ざめさせていた。
「レベル十五だと……!?」
「Eランクの依頼じゃねえぞ!」
「くそっ、なんでこんな化け物が!」
アースリザードが低い唸り声を上げる。
黄色い瞳が、逃げ惑う農夫の親子を捉えた。
「まずい!」
ガルドが剣を抜くが、間に合わない。
その瞬間――。
対象:アースリザード
勝率
単独戦闘:0%
共同戦闘:12%
特殊条件を発見。
攻略法を表示します。
アルトの視界に、赤い文字が浮かび上がった。
【攻略条件】
一、首の後ろにある逆鱗を破壊する。
二、《鑑定士》による指示が必須。
三、攻撃可能時間、三秒。
「……え?」
アルトは思わず息を呑んだ。
《鑑定士》による指示が必須?
そんな条件、今まで見たことがない。
だが、考えている時間はない。
「ガルドさん!」
「あぁ!?」
「首の後ろを狙ってください!」
「はあ!? 何を言ってやがる!」
「いいから聞いてください!」
アルトは叫んだ。
「左に三歩!」
「そのまましゃがんで!」
「今です、尻尾が来ます!」
半信半疑のまま、ガルドは言われた通りに動く。
次の瞬間。
ブォンッ!!
巨大な尻尾が、さっきまでガルドの頭があった場所を薙ぎ払った。
「なっ……!?」
あと一瞬遅れていれば、間違いなく直撃していた。
「お、お前……どうして分かった!?」
「説明してる暇はありません!」
アルトは《真実の眼》を見つめる。
攻略まで残り二手。
「カイン!」
「おう!」
「右から石を投げて!」
「任せろ!」
カインが全力で石を投げつける。
石はアースリザードの目の前で砕け散った。
魔物の視線が一瞬だけ逸れる。
チャンス到来。
残り三秒。
「ガルドさん! 今です!」
「ちっ、信じるぞ!」
ガルドが地面を蹴る。
一歩。
二歩。
三歩。
アルトの指示通り、アースリザードの背後へ回り込む。
「そこだあああっ!!」
渾身の一撃。
ガキィィン!!
硬い鱗に剣が弾かれる。
「駄目だ! 硬すぎる!」
その時、《真実の眼》が最後の一文を表示した。
条件未達。
【鑑定士自身が弱点を指し示してください】
「僕が……?」
迷う暇はない。
アルトはアースリザードへ向かって駆け出した。
「アルト!?」
カインの叫びが聞こえる。
だが、止まれない。
アースリザードの首元へ飛び込み、逆鱗を指差して叫んだ。
「そこだ!!」
その瞬間。
逆鱗が青白く光った。
「なっ……!?」
ガルドが目を見開く。
「うおおおおおっ!!」
振り下ろされた剣が、光る逆鱗を真っ二つに切り裂いた。
ズガァァァン!!
断末魔の咆哮が響き渡る。
巨体が大きく揺れ、そのまま地面へ崩れ落ちた。
土煙が舞い上がる。
静寂。
誰も言葉を発せなかった。
レベル十五の魔物を。
Eランクですらない見習いの《鑑定士》が、倒したのだ。
「……助かったのか?」
農夫の一人が呟く。
「勝った……?」
やがて、誰かが歓声を上げた。
「やったぞー!!」
農場に歓声が広がる。
子どもたちが泣きながら親に抱きつく。
カインはアルトの肩を掴んだ。
「お前、すげえよ!」
しかし、その隣で。
ガルドだけは、黙ったままアースリザードを見つめていた。
「……なんでだ」
「なんで、お前みたいなガキが……」
アルトは息を切らしながら答える。
「僕は、鑑定士です」
「敵の弱点を見つけて、みんなに伝える。それが僕の役目です」
ガルドは何も言い返せなかった。
今まで散々「ハズレ職」だと笑ってきた。
だが、そのハズレ職に、自分たちは救われたのだから。
その時、《真実の眼》が静かに文字を映し出した。
クエスト進行。
【鑑定士はハズレではないと証明する】
進行率:0.01%→2.3%
たった二・三パーセント。
だが、アルトは初めて、自分が前に進めている気がした。
夕日に照らされながら、少年は静かに拳を握る。
いつか必ず、証明してみせる。
鑑定士は、決してハズレなんかじゃないと。
だが、その様子を、遠くの丘の上から見つめる白いローブの影があった。
「やはり、あの力は危険ですね」
男は不気味に微笑む。
「報告しましょう。教会の上層部へ」
アルトはまだ知らない。
今日の勝利が、さらなる運命の歯車を回し始めたことを。
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