第十一話 冒険者への第一歩
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翌朝。
アルトは宿を出ると、真っ直ぐ冒険者ギルドへ向かった。
昨夜現れたメインクエスト。
『冒険者ランクEへ昇格せよ』
《真実の眼》が示した以上、避けては通れない。
「おはようございます!」
ギルドへ入ると、受付のエミリアが笑顔で迎えてくれた。
「おはよう、アルト君。昨日はちゃんと眠れた?」
「はい!」
本当はリリアとの会話が頭から離れず、あまり眠れなかった。
それでも、不思議と疲れは感じない。
「今日は見習い登録の説明をするわね。」
エミリアは一枚の羊皮紙を取り出した。
「冒険者にはランクがあるの。」
「Eから始まって、D、C、B、A……そしてS。」
「見習いは正式なランクではないけれど、一定の実績を積めばEランクへ昇格できるわ。」
アルトは真剣な表情で頷く。
《真実の眼》のクエストと一致している。
「じゃあ、今日から頑張ります!」
その時だった。
「おっ、新入りか?」
背後から元気な声が飛んできた。
振り返ると、茶色い髪を短く切った少年が立っていた。
年齢はアルトより一つか二つ上だろう。
木剣を背負い、日に焼けた笑顔を浮かべている。
「俺はカイン!」
「見習い冒険者だ!」
勢いよく右手を差し出してきた。
「アルトです。」
二人は握手を交わす。
「お前、噂のグレイウルフ倒した奴だろ!」
「いや……たまたまだよ。」
「ははっ! 謙遜するなって!」
カインは豪快に笑う。
馬鹿にする様子は一切ない。
それだけで、アルトは少し嬉しかった。
「せっかくだし、一緒に依頼を受けようぜ!」
カインが掲示板を指差す。
「俺一人じゃ受けられない依頼もあるし。」
アルトは頷いた。
二人で掲示板を見る。
薬草採取。
荷物運び。
角ウサギ討伐。
その中で、一枚の依頼に《真実の眼》が反応した。
推奨依頼
『薬草・月雫草の採取』
達成期待値:98%
副次報酬:あり
「これにしよう。」
「お、いいな!」
カインも賛成し、依頼を受けることになった。
町の外れに広がる草原。
月雫草は朝露を浴びると葉が青く輝く薬草だ。
「見つけた!」
カインが嬉しそうに駆け寄る。
しかし、その瞬間。
《真実の眼》が赤く点滅した。
警告。
採取しないでください。
「カイン!」
「え?」
「触るな!」
アルトが叫ぶ。
次の瞬間。
月雫草だと思っていた植物が、突然大きく口を開いた。
「ギシャアアッ!」
「うわっ!」
カインは慌てて飛び退く。
地面から現れたのは植物に擬態した魔物だった。
【マンイータープラント】
Lv.5
「擬態してたのか!」
カインが木剣を構える。
アルトも鉄の剣を抜く。
《真実の眼》が素早く攻略を表示した。
勝率:81%
攻略法
一、根を狙わない。
二、花弁の中心を攻撃。
「花の真ん中だ!」
「分かった!」
二人は同時に飛び出す。
カインが囮になり、魔物の注意を引く。
その隙にアルトが横へ回り込む。
「今だ!」
ザシュッ!
鉄の剣が花弁の中心を正確に貫いた。
魔物は悲鳴を上げ、その場へ崩れ落ちる。
「やった!」
カインが満面の笑みで拳を突き上げた。
アルトも思わず笑顔になる。
一人ではない。
誰かと力を合わせて勝つ。
それは初めて味わう達成感だった。
依頼を終え、ギルドへ戻る。
エミリアが二人を笑顔で迎えた。
「お帰りなさい。」
「依頼達成です!」
カインが元気よく報告する。
その様子を、ギルドの二階から一人の老人が静かに見つめていた。
白髪交じりの髪に、大きな傷跡。
歴戦の冒険者であることが一目で分かる。
「ギルドマスター。」
エミリアが小さく頭を下げる。
老人は頷きながら、アルトを見つめた。
「……あの子か。」
その瞬間。
《真実の眼》が、今までにない反応を示す。
対象から視認されています。
解析……
失敗。
「また……?」
アルトが思わず二階を見上げる。
しかし老人は既に部屋へ戻った後だった。
一方、二階では。
「面白い。」
ギルドマスターが小さく呟く。
「わしの勘が、あの子は普通じゃないと言っておる。」
机の上には、一枚の古びた羊皮紙。
そこには王都から届いたばかりの通達が記されていた。
『特殊な鑑定能力を持つ少年に注意せよ』
ギルドマスターはその文を静かに折り畳み、誰にも見えないよう引き出しへしまった。
「さて……教会より先に動くべきかの。」
その瞳は、静かにアルトの未来を見据えていた。
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