表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/22

第二十一話 主従、人間のご飯を食べる



 ――人の気持ちになって考えなさい。


 母ちゃんに口酸っぱく言われて育ったけど、あまり好きな言葉ではなかった。

 向こうはそれほどこっちの気持ちになってくれないし、この言葉を武器のように振りかざす連中にも辟易した。

 でもその相手が家族なら? 友達なら?

 ケースバイケースなんだ。

 全員相手にはできないけど、好きな人相手ならできるし、やったらみんな笑顔になった。


「……お、怒らないんですか?」


 恐る恐る伺ってくるクラウディオさんは両手にナイフとフォークを持っている。

 ハンバーグを特に気に入ってくれたようだ。


「うん。わたしもクラウディオさんのあんな姿、もう見たくないよ」

 

 そういうわたしはチャーハン!

 スプーン大盛り、口に運んで味わっていると、クラウディオさんはほっとした様子で、ハンバーグをナイフで切り取った。

 わかるよ。

 あなたもわたしの泣いてるトコを見たくないんだよね。


「嫌がることはしない、パートナーじゃんか」

「……はい!」

 

 クラウディオさんが口いっぱいにお肉の塊を頬張った。

 口端にケチャップをつけて、細い目を糸のようにしながら咀嚼している。

 

 六畳間、みんなでテーブルを囲んだ、弟の誕生日が胸をよぎる。

 ヒカル、やっぱりデミよりケチャップの方が美味しいんだよ。

 白ワインでチャーハンの名残を喉に流し込むと、クラウディオさんもグラスを傾けて口に含んだ。


「クラウディオさん――今日は一緒に寝ようよ」

「――っ!? ゴホッ、ゴホッ!?」

「変な意味じゃないよ」

「はあ、はあ……はい? ああ、はい……怖かったですものね、勿論いいですよ!」


 ナプキンで口元を拭って、胸を撫で下ろしている。

 空になったグラスにワインを注いであげると、グイッと煽って、大きく息を吐いた。

 この人なんか勘違いしてない?

 ちゃんと言わないとわかんないか。


「美味しいですねえ」

「……エッチなことをしよう」

「――?」


 首を傾げる相棒にもう一度ワインを注ぐと、じっとグラスを見て、水を飲むように一気に煽った。

 なんだか混乱しているみたい。

 角で天井を掻き回しそうな勢いで、頭をぐるぐると回している。


「え、エッチな? なに? 変な……え?」

「なーんか変なこと考えてない? そういうんじゃなくて、ただのエッチなこと! もうっ、やめてよね」

「……うーん、うーん」

「淫魔の食事はエッチなことなんでしょ?

 じゃあいやらしいとかなんとか言ってらんないじゃん。

 やらなきゃいけないことなんだから」


 手で顔を覆うクラウディオさんを横目に、立ち上がって食器の片付けを始める。

 残りは明日食べればいいや。

 それにしても一階がキッチンなのは遠すぎるなあ。

 

 食器を重ねて通路に向かうと、クラウディオさんは頭を抱えて仕切りに唸り声を上げていた。

 飲みすぎたのかな? ちょっと奮発して水でも買ってこよう。


 広場で買った水を抱えて階段を登っていると、一人で降りてくるラウラさんと出くわした。

 鳩尾まで見えそうなほど胸元が開いたマーメイドドレスを着ている。

 ハリウッドスターみたいでかっこいい。


「押忍!」


 頭を下げると、すれ違いざまに肩を叩いてそのまま外に向かっていった。

 教えてもらったからには、師匠? でいいのかな。

 とにかく、わたしは人に恵まれている。

 ゆっくり階段を登っていき、自室の前で立ち止まる。

 大きく息を吐いて、金属板を押し当てた。

 

 押忍! よろしくお願いします!

 


読んでいただきありがとうございます。

もしよろしければ、ブクマ・評価いただけると励みになります!


土曜日定期更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ